家賃滞納者への対応
質問事例
私は1棟アパートのオーナーです。現在、満室なんですが、そのうち一部屋で家賃滞納者がいます。管理会社を通じて何度か催促の手紙を送ったのですが、「いま仕事を探している途中でもう少し待ってくれ」と言うばかりで、滞納が半年分にもなっています。どうすれば、家賃を支払ってくれるでしょうか?
解 説
まず、家賃を半年も滞納していれば、その借り主の支払能力はなく、滞納金額の回収はほとんど不可能と思っていいでしょう。自分の住む場所を確保するための最も大事な支払いである家賃を滞納しているということは、他にも切り詰めるべき支出を切り詰めても、支払いができないということなので、家賃の滞納が3ヶ月も続けば、退去を視野に交渉するしかないでしょう。
もっとも、家賃を支払えないくらいにお金に困っている借り主ですから、転居費用も確保できず、退去するにもできない状況になっていることもありえます。そのような状況で大家さんがいくら手紙で催促しても借り主としては何もできず、居座ってしまうのです。
なので、こうした家賃滞納者の居座りに対しては早急に弁護士に依頼して、交渉をすべきです。弁護士が代理して退去を求める内容証明を出せば、明渡訴訟を提起されることが現実味を帯びてくるので、借主に心理的に退去を促す効果が強いです。借主自身にお金がなくても親族を頼ったり、実家へ戻るということもありえます。
しかし、弁護士が内容証明郵便で退去を求めても、借主に頼れる人がいなくて、訴訟を提起されるまで居座ってしまうこともあります。その場合はやむなく、訴訟を勧めて、和解により退去期限を定め、その期限までに退去してもらうことが一般的です。もちろん、単に退去期限を定めるのでなく、借主の転居を促すために、大家さん側の弁護士から福祉サービスの情報提供します。例えば、本当に収入がない借主には、生活保護の同行申請をして、かつ、生活保護受給者でも借りることができる物件を探すことも時と場合によりますが可能です。社会福祉協議会による臨時貸付により転居費用分を一時的に借り入れする方法もありえます。
もちろん、これらのサービスが当然に利用できるわけではありませんが、弁護士の側でこうしたサービスの知識がある場合は珍しくないので、退去交渉にあたって弁護士への依頼は効果的です。
最後に
大家さんからすれば、滞納する借主が悪いのに、自ら弁護士費用を負担して退去交渉をするのは、理不尽に思えるかもしれません。
しかし、退去交渉が難航すれば、その部屋から家賃収入を得る機会を喪失し続けることになり、弁護士費用の負担以上の経済的損失が生じます。しかも、滞納借主が居座っている間に、部屋の使用状況を悪化させて、ようやく、退去を実現しても原状回復の費用負担がかさむ懸念もあります。
滞納による居座りが長期化するほど、こうした損失が増大していきます。滞納が2,3ヶ月になった時点で早急に弁護士へ相談することをお勧めします。