質問事例
40年前に亡くなった祖父が持っていた土地を管理しきれず、売却することになりました。しかし、登記の名義人が死亡している祖父のままでは登記名義の変更の手続きが取れません。
そこで、相続人全員の同意を得て私の単独名義に変更したいのですが、祖父には子が多く時間も大分経っているため、誰が相続人かが、分かりません。どうすればよいでしょうか?
解説
まず、相続人の範囲の基本としては、亡くなった人の配偶者とその子になります。質問のケースでは、お祖父様が既に40年前に亡くなっているなら妻も既に亡くなっているでしょう。なので、おじいい様の子だけが相続人になります。(ただ、お祖父様が亡くなった時点で妻が存命で、その後妻が再婚して再婚相手の子を設けていると、妻の相続分を再婚相手の子が相続することになります。)
そして、現時点で子も亡くなっていると更にその子(孫)が相続人になります。例えば、お祖父様に子が5人いて、そのうち2人が存命で3人が死亡しており、その死亡した3人にそれぞれ2人の子(孫)がいれば、相続人は合計8人になります。
質問事例の当事者はこの8人のうちの一人になるでしょうが、当然、会ったことがない人も少なくないでしょう。この所在を把握するには、お祖父様の戸籍を生まれたときから辿っていくしかありません。お祖父様の戸籍から子が何人いるかが判明します
そして、子の戸籍を取り寄せると、子が死亡しているかどうか、孫がいるかどうかも分かります。こうして、戸籍の取り寄せを繰返していけば、現時点んで生きている最も上の世代の人が共同相続人として確定します。共同相続人が誰なのかを確定すれば、各相続人の戸籍の附票を取り寄せれば、現時点での住民票の住所地が分かります。ここで、初めて、相続人全員に対して手紙を送って、お祖父様の土地の登記名義の変更への協力を求めることになります。
戸籍や住民票の取り寄せは、本籍地や住所地の市役所の市民課や戸籍課等に郵送で行うことができます。その際、身分証のコピーと手数料相当額の郵便為替(郵便局で購入できます)と返信用封筒を同封します。
戸籍や住民票の交付申請書やほとんどの市役所のHPでPDFでのダウンロードができるようになっています。
もっとも、これらのやり取りは慣れていないと時間がかかってしまいます。場合によっては1ヶ月以上を要することもあるでしょう。弁護士であれば、その職務に戸籍や住民票の交付請求も含まれていますので、遺産分割協議のご依頼とともに戸籍や住民票の取り寄せも一緒に頼むことができます。
遺産分割の協議が結果的に紛争案件になれば、そのまま交渉を依頼できますので、弁護士への相談することは効果的な手段です。
また、代替わりが繰り返されて相続人の数が多くなり過ぎると、
登記名義の変更のための同意を個々の相続人から取り付けるのが困難なことも想定されます。その場合には、あえて、移転登記手続請求の訴訟を提起することも考えられます。
訴訟を起こせば、一つの裁判所で相続人全員を巻き込んで手続を進められます。なにより、土地に全く関心がない相続人は欠席する可能性が高いので、欠席裁判で登記移転を認める判決を得やすくなります。
もっとも、唐突に訴訟に巻き込まれた相続人からずれば、不信感が強まり予想外の紛争に発展するリスクは否定できません。こうした手続選択の判断には、やはり、専門家たる弁護士への相談が重要でしょう。
たかが、田舎の土地一つでと遠慮することなく、弁護士へ相談して頂ければ幸いです。