質問事例
父が亡くなり、私を含む兄弟3人であり、遺産は3人で等分にすることで3人とも納得しています。ただ、父の遺産は預金が中心でなく、自宅や農家などの多くの土地に加え、株式やゴルフ会員権などももっています。
こうした土地や株式など現金でないため、単純に数字を3で割ることができなく困っています。このような現預金以外の財産はどのようにして金銭的な評価をすればいいのでしょうか?
解説
この質問では、相続財産の評価の仕方をどうすればいいのかが問題となっています。相続財産の評価には、評価の基準をいつの時点にするのか、又は、評価の基準そのもののあり方と2つの問題を含んでいます。
前者の基準の時点については、相続開始時点(質問事例ではお父様が亡くなった時)とする考え方と、遺産分割の協議又は審判が成立した時点とする考え方の2パターンがあります。一般的に遺産分割の協議や審判が成立したらその効力は相続開始時点に遡ることが民法に規定されているので、相続財産の評価の基準時は相続開始時点とすることが一般的です。
もっとも、相続開始から遺産分割の協議まで3年やら5年と長期間が経過してしまう場合に、相続開始時を基準時とすることに不都合が生じることもあります。例えば、父の自宅の土地建物を兄一人が取得して、弟2人は自宅の土地建物の評価額の3分の2をそれぞれ代償金で取得することにした場合、相続開始後に近隣で新駅開発等の価格が急騰すると、遺産分割成立後の価格が代償金よりも遥かに高額になれば、兄は土地を売って不動産価格急騰の利益を一人占めできてしまいます。
校舎の相続財産そのものの評価方法です。これは、共同相続人間で合意ができれば、どのような評価方法でも構いません。例えば、不動産の評価は、簡単に済ませようと思えば市役所で取り寄せられる固定資産評価証明書の記載額や国土交通省が発表している路線価を基準にしても構いません。
ただ、評価方法で共同相続人同士で合意が得られない場合、最も信頼できる評価基準を用います。不動産であれば、不動産鑑定士による鑑定が最も信頼できる基準となります。株式であれば、上場企業なら証券取引所の株価と分かりやすいですが、非上場株式の場合だと、公認会計士等の専門家による鑑定が必要になります。ゴルフの会員権、ましてや、著名な絵画なども非常に鑑定が困難な場合があります。
当然、鑑定を専門家に依頼すれば相応の費用がかかります。なので、よほど大きな差がでない限り、何らかの簡易な基準で評価することで、相続人全員が納得することの方が通常でしょう。
お父様が予め遺言で遺産の分配方法を決めていれば、よほど、極端な分配方法でない限り、評価方法に関係なく、遺言書のとおりに、遺産の分割の方法を決定できます。