Column
コラム
遺産分割の調停を申立をすべきどうかの基準
【事例】
先日、父が亡くなり、四十九日まで終えたところで、父と同居している兄から、相続についての話し合いの提案がなされました。 兄は、自分が住んでいる父名義の家とその敷地を相続して、残った預金は私と弟で分ければよいと主張しています。
しかし、敷地が都内の便利な場所にあり預金全額よりはるかに価値が高そうなので、この提案では兄が余計に遺産を取得することになりそうです。そのため、弟はこの自宅を売却して、山分けすることを主張しています。
このまま話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所へ遺産分割の調停を申し立ててもいいのかもしれません。ただ、調停になれば、1ヶ月に1回くらいしか期日が開かれないと聞いており、かえって時間がかかりそうです。どうすればいいでしょうか?
【解説】
このまま兄弟同士だけで話し合いを続けた方が早く決着がつくか、調停を申し立てた方がよいかは、悩ましい問題です。1つの判断基準としては分けにくい遺産がありその帰属めぐる対立が大きいかどうか、という点がポイントです。
この事例でいえば、お兄さんは転居先が見つからない限りは、自宅の敷地と建物を譲れないでしょうから、お兄さんに転居の可能性を打診し、かつ、具体的な転居先を提案してみては、いかがでしょうか? それでも、お兄さんが考えを変えないのであれば、自宅を売りたい弟さんとの対立は任意の話し合いでは解決しないでしょう。そうであれば、調停を申し立ててしまった方が遠回りに見えても1年か2年という目処で解決に向かうでしょう。
調停と自主的な話し合いの最大の違いは、いったん、調停が始まれば、相続人同士の合意が成立しないと審判手続きに移行して、裁判官が個々の遺産をどの相続人に帰属させるかを決めてくれることです。自主的な話し合いで時間を稼がれてしまえば、本件でいえばお兄さんの自宅の現状理由を重視されるので、弟さんやあなたの立場からすれば、お兄さんの譲歩の見込みがないと思えば、早めに調停を申し立てるべきでしょう。
お兄さんが家を売ってよいと、考えを改めれば、あとは、預金を含めたお金を分けるだけなので、調停に頼らずとも話し合いでまとまる可能性が高いです。