親権について
私と夫は共働きですが、お互い生活リズムが違っていて、合わせる方が疲れるように感じたので、離婚することにしました。私達には、2歳と6歳の子どもがいるが、お互いに親権をゆずろうとしません。
どうすれば、私は親権者になれるでしょうか?
解説
一般に子どもが小さいうちは、「母親が親権者になりやすい」と言われます。しかし、この表現はやや不正確です。実際には、父母の同居中に監護を担っていた親が親権者になりやすい、ということです。
ここでいう、監護とは、いわゆる育児のことで、オムツ替え、入浴、寝かしつけ、トイレトレーニング、食事の世話、保育園や幼稚園の送り迎え、小学校以降は習い事などの送り迎え、父母のどちらが担っていたかが乳幼児から小学校低学年くらいまでのお子さんの親権者の指定にとって最も重要な要素となります。時々ある、相談では「自分も休日は毎週、子どもと一緒に遊んでいる」と主張される方がいますが、遊び相手になっているだけで、上記に列挙した監護事項を担っていなければ、親権者の指定にとっては考慮されることはほとんどありません。
その次に重要なのは、離婚後の環境です。例えば、離婚後、自分の実家に戻って、両親が監護の補助を担ってくれるのであれば、有利な事情になります。ただ、同居期間中、専業主婦(夫)が子の監護を担っている場合に、子を監護していない就労している方の配偶者が実家にもどって主に両親が世話をする環境を整えても、やはり、親自身が監護をする環境の方が優先されやすいです。両親による監護の補助は、同居中の子どもの育児への関わりに優劣がつけがたい場合に、初めて、重要な考慮要素となります。
事例の場合は、共働きなので、裁判で親権が争われたら、どちらが主たる監護者であったかとが重要な争点となり、代理人弁護士は同居中の主たる監護者の認定を得るための立証活動に注力する必要があります。
具体的には夫婦双方の就労時間に差があれば、短い方が自宅にいる時間が長く子どもの監護をしていることになりそうです。また、上記の監護の項目について具体的に主張したうえで、可能な範囲で裏付け資料を収集して、主たる監護者と認定されれば、親権者に指定されやすいでしょう。
夫婦ともにフルタイムで就労しているなら、離婚後の監護環境で父母、どちらがよいかが、重要になってきます。やはり、実家の協力を得るのがもっとも効果的です。その他に、居住環境や学校に行きやすいか、経済的事情、親権者とならなかった親との面会交流の意欲など、様々な事項が考慮されます。
ありがちな誤解は、夫婦の離婚問題で他方配偶者の言動が原因と考えて、それを非難することで、親権者になろうとする当事者が散見されます。しかし、親権者の指定で考慮されるのは、子どもの利益のみであり、離婚原因が夫婦のどちらにあるかは考慮されません。
例えば、夫婦の一方が不貞行為を働いていても、同居中の子どもの監護に全く問題がなく、不貞の相手方が子どもに対して不当な影響力を持つような事情がなければ、不貞行為があること自体は親権者の指定で不利になりません。
なので、事例の場合も子どもの利益の観点から、自身による監護を離婚後も継続することが望ましいと主張することが、親権の獲得にとって一番重要です。