コラム

相続放棄は1人だけでもできるもの?知っておいてほしいポイントも紹介

2023.06.16

相続放棄は1人だけでもできるもの?知っておいてほしいポイントも紹介

こんにちは。船橋・習志野台法律事務所の弁護士の中村亮です。

兄弟が複数人いる場合など、他にも相続人がいる状態で一人だけ相続放棄をすることはできるのでしょうか。

本記事では、一人だけ相続放棄する場合の注意点や知っておいて欲しいポイントについて解説します。

相続放棄は一人の相続人の自由意思で行うことができる

相続放棄は一人の相続人の自由意思で行うことができる

遺産の相続というのは、亡くなった方が持つ財産についての所有権などの財産権を引き継いで自らが権利者になるというものです。相続に関わらず所有権を放棄することは民法でも認められており(但し、不法投棄など公益を害する場合や不当に責任を免れるための所有権放棄は認められません)、財産を承継する場合にもこれを素直に引き継ぐか、放棄するかの自由が相続人に認められます。

そのため、兄弟が多いなどで相続人が複数いる場合(共同相続)でも、一人の相続人だけが相続放棄をして、残りの相続人は遺産を引き継ぐこともできます。仮に、亡くなった方に借金があったとしても一人だけが相続放棄をして他の相続人が相続放棄をしなければ、残った相続人だけで借金を返済する必要があります。この場合には、亡くなった方の債権者に不利益が生じるようにも思えます。

しかし、もともと債権者は亡くなった方が持つ財産をあてにして、お金を貸しているので、相続放棄により相続人の人数が減っても遺産総額は変わらないので、不利益は発生しないのです。

したがって、相続人が複数人いる場合でも、各相続人は他の相続人の意向に関わらず、自分一人だけで相続放棄をすることができます。

一人だけ相続放棄した時に知っておいてほしいポイント

一人だけ相続放棄した時に知っておいてほしいポイント

3か月の期間制限の起算点は個々の相続人ごとに判断する

相続放棄は一人だけでもその手続きを進めることができます。そうすると、相続放棄ができる期間の相続開始を知ってから3か月の制限以内か否かも個々の相続人ごとに個別に判断することになります。

3兄弟で相続をした場合、そのうちの長男の一人だけが疎遠で葬式に参加しなかったとすると、次男、三男は親の死亡時が3か月の期間制限の起算点となるが、長男は必ずしもそうではありません。

葬式に参加せずいつ亡くなったからも分からないので、長男の相続放棄の期間制限は進行しないことになります。このパターンであれば、次男か三男が父の死亡を知らせた時点になることが多いです。

一人だけ相続放棄をしても相続税の基礎控除額は変わらない

相続税には基礎控除があり、3000万円+600万円×法定相続人の人数の金額が予め遺産から控除され残った金額に対してのみ相続税が課税されます。その場合一人だけ、相続放棄をすると法定相続人の人数が減ったことになり基礎控除される額が減ることになるのでしょうか?

これについては、法定相続人というのは予め民法で定められた相続人のことで、実際に相続する人とは異なる概念なので、相続放棄が一人であっても法定相続人の人数に変更はなく、基礎控除の金額も変わらないことになります。そのため、一人だけの相続放棄があっても、残された相続人が負担する相続税は相続放棄する人がいない場合と変わらないことになります。

ある相続人による相続放棄をするかどうかは、他の相続人の意思に関わらずに決められてしまうので、他人の意思決定により相続税が増減する事態を避けるため、相続税の場面においては相続放棄の影響を受けないこととしています。

相続人は他の相続人の相続放棄を知ることができる

共同相続のケースで一人だけなど一部の相続人だけが相続放棄をするのは、相続放棄をした人が亡くなった方やその親族と疎遠であることが多いです。なので、ほとんど連絡が取れず相続放棄をしたことを他の相続人に知らせないこともあり得ます。

そのように、ある相続人と連絡が取れなくなった場合には、その相続人が実際に相続放棄をしたかどうか知ることができます。それが相続放棄の照会の手続きです。

他の共同相続人は利害関係人という立場で家庭裁判所へ相続放棄をしたかどうかの照会を求めることができます。ただ、全国どこの家庭裁判所でもいいのではなく、亡くなられた方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ照会する必要があります。

この照会の手続きをすれば、3週間程度で照会結果を記載した書面が家庭裁判所から送られてきます。これをもとに相続放棄をしたことが分かれば、残された相続人は、相続放棄をした相続人の相続放棄受理証明書の交付申請をすることができ、この相続放棄受理証明書を入手すれば遺産分割の手続を進めることができます。

相続放棄の手続きと費用

相続放棄の手続きと費用

相続放棄の手続き

相続放棄を行う際はまず以下のことを行い、その後家庭裁判所に申述を行います。

  • 費用の確認と用意
  • 必要書類の用意

提出された必要書類を基に家庭裁判所で審査が行われ、相続放棄を申述した本人に向かって「相続放棄の照会書」が送られてきます。これには「回答書」というものを書いて返送する必要があります。

これらの過程で問題ないと判断されれば相続放棄の申述は受理されます。家庭裁判所から受理の通知書が送られてきたら相続放棄の手続きが完了となります。

相続放棄にかかる費用

自分で行う場合

相続放棄を自分で行う場合、合計で約3,000円しかかかりません。主に収入印紙代や戸籍謄本など必要書類を集めるための費用です。

しかし、相続放棄は一度却下されると二度とできなくなってしまいます。ミスをしてしまう可能性や手続きの手間を考えると弁護士や司法書士などの専門家に任せた方が安心できるでしょう。

弁護士・司法書士に依頼する場合

弁護士に依頼する際は一般的に約5万円、司法書士に依頼する際は約3万円と言われています。これだけ見ると司法書士の方が安いから司法書士にお願いしようとなると思いますが、司法書士には代理権がないため押印や書類の作成などを代理で行うことができません。

時間にゆとりのある方は問題ないかもしれませんが、費用を払って手続きにかかる時間を削減し、より正確な書類を作成したいと考える方は弁護士に依頼することをお勧めします。

【まとめ】相続放棄は他の相続人の意向を気にしなくてよい

本記事で見てきたように、兄弟など複数の相続人のうち一人だけ相続放棄をすることは可能です。

また、相続放棄をしたことを他の相続人に知らせなくても、残された相続人は遺産分割の手続きを進めることができます。

しかし、トラブルを避けるためにはなるべく相続放棄をした旨を知らせ、今後のやり取りについてコミュニケーションを取ることをお勧めします。

相続放棄の手続きを弁護士に依頼する場合は、他の相続人とのやり取りなどについてもご相談に乗りますのでぜひご検討ください。

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