コラム

成年後見人と特別代理人との違いとは?

2023.02.10

成年後見人と特別代理人との違いとは?

成年後見人と特別代理人との違いとは?

成年後見人と特別代理人は、いずれも知的障害や精神障害、認知症などのために判断能力が十分ではない人を支援するために家庭裁判所によって選任されるものですが、両者の違いについて詳しく理解しているという方は少ないのではないでしょうか。

この記事では、「成年後見人」と「特別代理人」2つの制度の違いに加えて特別代理人が必要になるケースやその選任の流れについても説明しますので、ぜひ参考にしてください。

成年後見人と特別代理人の違いとは

成年後見人と特別代理人の違いとは

まずはじめに、成年後見人と特別代理人の違いとどういったものなのかを併せてご説明します。

成年後見人

成年後見人とは、認知症や精神障害といった精神上の疾患によって判断能力が著しく低下してしまっている人の財産を守るために家庭裁判所が選任する制度です。

保護すべき対象者(「成年被後見人」と呼ばれます)のために財産の保護や保全を行ったり、身上監護を行ったりするのが、成年後見人の主な役割となります。

なお、成人後見人が選定されたからといって成年被後見人が自分の意思で何もできなくなるというわけではありません。スーパーでの買い物のような日常生活に必要な範囲での行為は、本人の判断で行うことができるのです。

特別代理人

特別代理人とは、代理人が代理権を行使できなかったり、何らかの事情で行使することが適切ではないような場合に、法令に基づいて裁判所に申立てを行って特別に選任してもらう代理人です。

民法のほかに、民事訴訟法や民事執行法、刑事訴訟法などに基づいて申し立てることができるようになっています。

利益相反がカギとなる

成年後見人と特別代理人は、本人に代わって代理権を行使するという点だけに限れば同じように見えるかもしれませんが、そもそも成年後見人等の本来の代理人が代理権を行使するのが不適切な場合に選定されるのが特別代理人なので、両者は厳密には異なるものです。

では、代理権を行使するのが不適切な場合とはどのようなケースでしょうか。

この点について該当し得るケースはいくつかありますが、その中でも特によく発生するのが本人と代理人との間に利益相反があるような場面です。

利益相反があると代理人は本人よりも自らの利益を優先して判断しがちになるので、そういった場合には代理人に代えて特別代理人を選定する必要があるのです。

特別代理人が必要なケースとは

特別代理人が必要なケースとは

次に特別代理人が必要になるケースをいくつかのパターンに分けて見ていきます。

成年被後見人と成年後見人ともに相続権を得ているケース

両親のどちらか一方が亡くなった場合には、もう一人の親と子供がいずれも相続権者となります。

このようなケースで、子供が生存している親の成年後見人となっている場合には、子供が自分の相続分を多くするために親に不利な判断をすることになりかねません。そういった利益相反が生じるおそれを回避するために、このようなケースでは特別代理人の選定が認められています。

未成年者とその親がともに相続権を得ているケース

親と未成年者である子供がともに相続権を得るようなケースにおいても特別代理人の選任が認められます。

親は親権者として一定の範囲で未成年の子供の代わりに判断することができるのですが、例えば父親が亡くなって母親と子供が相続する場合に母親が子供に代理できるとなると適切な判断が行われない可能性があります。

そこで親以外の者を特別代理人として選任して、子供の権利保護を図ることができるようになっているのです。

同じ親権者をもつ未成年者が複数相続人になるケース

未成年の子供が複数いる場合において、その親の一方が亡くなってしまった時には、残るもう一人の親が子供たちの親権者として相続に係る判断を行うことになります。

しかし、このようなケースでは、親の判断によって特定の子供が有利になったり、不利になったりする恐れがあります。

そこで法律では未成年の子供の間の利益相反を避けるために、特別代理人の選任を認めているのです。

特別代理人を選任する

特別代理人を選任する

最後に、特別代理人を選任する際の手続きなどについて説明しておきます。

特別代理人を選任する流れ

特別代理人を選任するためには、はじめに本人の住所地を管轄する家庭裁判所への申し立てが必要になります。

申し立てができるのは親権者と利害関係人に限られており、誰でもできるわけではありません。申し立てが受理されると、続いて家裁において審理が開始されます。

審理において特別代理人の選任が問題ないと判断されれば、正式に選任されてその旨を記した特別代理人選任審判書が発行されるのです。

申し立てに当たって必要なもの

特別代理人の選任を申し立てる際には下記が必要です。

  • 特別代理人選任申立書
  • 本人の戸籍謄本
  • 親権者や後見人がいる場合はその戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票か戸籍の附票
  • 利益相反に関する資料

不足している書類がないか確認をして臨みましょう。

特別代理人を選任する際の注意点

特別代理人の選任には申し立てから少なくとも1ヶ月程度の期間が必要になります。

すぐに選任してもらおうとしても認められませんので、申し立てはスケジュールに余裕をもって行うようにしましょう。

また、審理においては特別代理人の適格性が厳しく精査されますので、本人の権利を守るのに相応しい者を候補者にするようにしなければなりません。

成年後見人と特別代理人の違いを理解しておこう

成年後見人と特別代理人は、いずれも本人の権利を保護するための存在ですが、実際には両者は似て非なるものです。

相続などで成年後見人と成年被後見人との間に利益相反が生じるような場合に家庭裁判所によって特別に選任されるのが特別代理人ですので、くれぐれも両者を混同しないようにしましょう。

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