コラム

被相続人死亡後のアパート退去と相続放棄

2023.03.20

被相続人死亡後のアパート退去と相続放棄

被相続人死亡後のアパート退去と相続放棄

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。

相続放棄に関わる相談で多い事例の一つに親、兄弟が死亡した後、その居住していたアパートの退去に関わる手続です。

それぞれの場面ごとで相続放棄の必要性が異なってきますので、本コラムでは被相続人死亡後の賃貸借の契約について改めて解説をいたします。

賃借人死亡後、賃貸借の契約は継続する?

賃借人死亡後、賃貸借の契約は継続する?

賃貸オーナーである被相続人が死亡した場合

例えば、両親など被相続人が死亡しても預金については銀行との預託契約が相続人に対しても効力が継続するので、自動的に解約されることなく相続に伴う払い戻しの手続きを経て初めて、銀行との関係が終了します。

不動産等を売却した後に無くなった場合も、相続人は買主への引渡義務が継続します。

また、アパートのオーナーが亡くなった場合にも入居者との賃貸借契約は継続して相続人が家賃収入を得ることになります

賃借人が亡くなった場合

賃借人が亡くなった場合

賃借人が亡くなったものの、親族は疎遠であり賃貸オーナーが初めて死亡を知ったという事例の場合、アパートのオーナーとの賃貸借契約は継続するでしょうか?

賃貸借も多くの契約と同様に賃貸借契約も法律上は、相続人に承継されることになり、自動的に契約が終了になることはありません

もっとも、賃借人が死亡した場合は、オーナーや管理会社から死亡した旨の通知および清算書の交付が相続人に対してなされ、相続人がこれに異議を唱えないことで、賃貸借契約は合意により終了したとみなされることが多いでしょう。

このような解釈を前提に、個別の場面について、これから解説していきます。

死亡後の賃料はどうなるか

賃借人が死亡した場合

賃借人が死亡しても自動的に賃貸借契約が終わらないため、オーナーが賃借人が死亡したことになかなか気づかないで、半年ほど経過してから、突如として未払い家賃を相続人に請求することがあるかもしれません。

オーナーとしても家賃を滞納し始めれば、最終的には所在調査で賃借人が死亡していることが分かる可能性が高く、最低限の調査も尽くさずに漫然と滞納家賃額が増えてしまった場合、これを相続人に請求することは権利乱用として否定される可能性が十分にあります。

オーナーが死亡した場合

オーナーが死亡した場合

また、オーナーは賃借人の死亡をすぐに把握したものの、甥や姪などの疎遠になりがちな親族が法定相続人となっている場合、相続人の把握に時間がかかり、結果として、死亡以降の賃料が増えてしまうこともあります。

ただ、相続人への連絡に時間がかかるほど、賃借人との関係が疎遠であれば、そもそも、相続人が賃貸借契約を継続する意思を見出すことが難しく、賃貸借契約を解約する黙示の合意が成立したと解釈することが十分に可能です。

そのため、賃借人死亡後の家賃を相続人へ請求できる場合は、賃借人と同居していた相続人以外では、ほとんどないと考えられます。

なお、賃借人の生前の滞納家賃については、当然に相続人が支払い義務を承継します。相続人が支払い義務を逃れるには相続放棄しかありません

敷金返還請求権

これは、相続財産になるため、相続人はオーナーに対して敷金の返還を請求できます。

もっとも、賃借人が生前に滞納していた家賃についてはオーナーはこれを相殺する権利がありますので、相殺後の敷金のみが返還されます。

現状回復費用を請求され、請求が正当なものであれば費用も控除されます。そのため、滞納家賃や現状回復費用が敷金の額を上回る場合には、他の遺産との兼ね合いで相続放棄をすることを検討すべきでしょう。

退去に伴う残置物の撤去・処分等

賃借人の死亡後、相続人が賃貸借契約の継続を望まなければ、賃貸借契約は終了して相続人は明け渡し義務を承継することになります。

相続人は実際には居住しておりませんが、賃借人が残した残置物を撤去・処分をして初めて明け渡しが完了することになるので、残置物の撤去・処分の義務があります。そのため、賃借人が突然死をして物が多い場合には、その処分費用が多額になるなら、やはり、相続放棄を検討することになります。

また、アパートから撤去した物は遺産になるため、複数の相続人がいる場合には、1人の相続人が単独で処分をすることには慎重な判断が必要です。

ゴミ類や極端に古くなった家具等は処分してもよいでしょうが、いくらかでも価値があるものについては各相続人が合意のうえで処分するのが望ましいでしょう。相続人の協力が望めないのなら、自分一人だけで処分費用を負担してしまう恐れもあるので、相続放棄を検討すべきでしょう。

賃借人死亡後の対応が相続人同士の協力関係が重要

賃借人が死亡しても、当然に賃貸借契約が終了するわけでないので、放置することで、滅多にないことですが、滞納が家賃が増えていく懸念があります。

特に残置物が放置されたままだと、賃借建物を利用する意思があるとみなされて、家賃が発生してしまうかもしれません。そのため、相続人同士が協力をして清算手続きに早期に着手をして、残置物を速やかに処分することが重要です。

相続放棄をするか否かは、オーナー側から滞納家賃額、現状回復費用について正確な情報を得てから判断しましょう。

金額に関係なく、こうした手続に関わりない場合には単独で相続放棄をすることもできます。
場面によって相続放棄の必要性も異なりますので、取り返しのつかない事態に陥らないためにも、法律のプロである弁護士になるべく早く相談してみてはいかがでしょうか。

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