コラム

借金で子供に迷惑をかけたくない|子供の相続放棄を回避する方法

2022.06.24

借金で子供に迷惑をかけたくない|子供の相続放棄を回避する方法

借金で子供に迷惑をかけたくない|子供の相続放棄を回避する方法

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。

今回のコラムは、被相続人の立場から相続放棄について解説します。相続人(主に子)からすると、相続放棄は親の借金を引き継がないためにするもので、そのために、遺産を全て放棄することとなってしまいます。

親の立場からすれば、生前に借金を清算すれば、子どもに相続放棄をさせずに遺産を引き継がせることができたはずなのに、うっかり、借金を残したために、子どもに不憫な思いをさせてしまうことになります。

このような状況で子供に遺産を残すことはできるのでしょうか。
本コラムでは、借金を抱えたままの状況で相続放棄を回避する手段について解説していきます。

生前に借金をなくす方法

生前に借金をなくす方法

自己破産により借金をチャラにする

被相続人が生前に自己破産をすれば、借金はなくなり、自己破産以降に貯蓄をして、財産が残れば、相続放棄をしないですみます。

財産が少ない場合は自己破産するメリットは少ない

もっとも、自己破産するくらいなら、そもそも、収入もほとんどなく、自己破産以降もほとんど貯金ができないことが想定されます。そのため、自己破産後も国民年金しか収入がないので、借金が帳消しになっても生活状況がそれほど好転しないのであれば、少ない財産から無理して破産の費用を負担するメリットは小さいでしょう。

一定の収入はあるが多額の借金がある場合はメリットが大きい

そうすると、遺産を残す観点から自己破産に意味があるのは、安定した収入はあるものの、それを遥かに上回る多額の借金がある場合です。多額の事業資金を借り入れて起業したものの頓挫した場合や株式投資等で失敗した場合などが、あてはまると思います。

このように一定の経済力があるものの返済できないほどの借金がある場合には、早期に自己破産を決断することで、相続人に迷惑をかけることを回避できます。早期に破産をして、生活再建が早くなるほど、相続開始時点での貯蓄が増えるからです。

また、高齢になると、判断能力がなくなった場合自らの意思で自己破産ができなくなることも懸念されます。さらには、自己破産しないまま、亡くなると借金の元本だけでなく遅延損害金も膨れ上がってきます。

そのため、数千万円から1億円以上の借金がありつつも、月額30万円から40万円程度を稼げる経済力があるならば、早期に破産をすることで、将来の相続の際に残された子どもたちに迷惑をかけずに済みます。

自己破産は、不名誉に感じることもあるかもしれませんが、返済できないことが明白であれば、迷っている時間の分だけ損をするので、思い切った決断が必要になります。 

消滅時効の主張をする

消滅時効の主張をする

借金をしたのが昔である場合、消滅時効の主張により借金が消滅することがあります。

消滅時効とは、5年以上、1円も返済しておらず、かつ、裁判で返還請求をされていない借金について、返済義務を消滅させるものです。長期間放置された貸金債権について、時間が経ってから裁判で請求されても、証拠が残っていないことが多く、また、長期間放置していた権利者にも責任があることから、この際、消滅させてしまうのが合理的だからです。

消滅時効であれば、自身が持っている財産を手放す必要はないし、手続も内容証明郵便で消滅時効の意思表示をするだけなので、借金の負担をなくす有力な手段です。

そのため、消費者金融や保証会社などの債権者は、毎月5000円でも1万円でもいいから返済を続けて欲しいと要望をすることがあります。数千万円があれば一生かかっても完済できませんが、債権者側は消滅時効を防ぎたいのでこのような要望をしてきます。そうすれば、借金が残ったまま相続が始まってしまい、残された相続人は相続放棄を余儀なくされてしまいます。

なので、債権者からそのような少額の返済を続けることを提案された場合には、消滅時効の主張を検討しましょう。 

不動産などの財産を譲渡する

不動産などの財産を譲渡する

借金の負担を回避しつつ遺産を子どもたちに残す手っ取り早い方法としては、生前に不動産や預金などの一部を贈与することが考えられます。ただ、借金があるのにほとんどの財産を子どもたちへ贈与してしまうと、本来、債権者の返済に充てるべき財産が贈与に回ってしまうことになります。

そのため、債権者から贈与の取り消しを主張されるリスクがあります。そのため、約束された返済を続けつつ、かつ、贈与する財産は限定する必要があります。

また、自宅を借金返済に充てられるのを回避するためには、離婚をして財産分与により、配偶者に自宅を譲渡する方法があります。財産分与においては債務の分担は考慮されないので、自宅に抵当権が設定されていなければ、離婚による財産分与は自宅を守る有効な方法となります。

もっとも、形だけ離婚をして同居を続ける場合には、債権者から離婚は仮装されたものと主張され裁判で財産分与が無効と判断されることもあり得ます。そのため、離婚による財産分与は、自身が独り身になっても家族に財産を残したいという覚悟が必要となります。 

【まとめ】返済できない借金については早めの対応を

多額の借金があっても工夫を凝らして遺産を残せる努力をしましょう

借金を抱えたまま、何もしなければ、残された子どもたちは相続放棄をして親の財産を受け取れなくなります。
しかし、これまで述べたように、

  • 借金をなくす
  • 相続開始前に財産を譲渡するといった方法

で、資産を子どもたちに残すことができます。

借金が多額になったからといって諦める必要はありません。
子どもたちのためにも、多額の借金があっても工夫を凝らして遺産を残す努力をしましょう。

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