コラム
種類ごとに解説!現金、預金、不動産以外の遺産分割について
2023.02.17
種類ごとに解説!現金、預金、不動産以外の遺産分割について
船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。
相続において遺産分割の対象となる財産の典型は、現金、預金、不動産です。
これらの財産は現金、預金は現時点での残額、不動産については合意して評価額、または、鑑定によって得られた価額をもとに、法定相続分か、特別受益・寄与分により修正された相続分にしたがって各相続人に分配されます。
特別受益、寄与分については過去のコラムをご参照ください
では、それ以外の財産も遺産分割の対象になるのでしょうか。
今回は現金、貯金、不動産以外の遺産分割について財産の種類ごとに解説していきます。
株式、社債券、国債、ゴルフ会員権
株式、社債券、国債、ゴルフ会員権などの財産は、現金や預金と違ってはっきりした数字が出ない財産ですが、売却して換金することが容易な財産です。
そのため、各相続人で売却することで合意をしてれば換金して分配することが可能です。
ただ、現状のまま遺産分割となるとなんらかの形でその評価額を定める必要があります。
株式の遺産分割
株式については、上場会社の株式は日々証券市場で時価が出ているため、遺産分割時(になるべく近い時期)の時価を基準に株式数を掛けた金額が評価額になります。
上場されていない会社の株式については、市場価額がありません。
そのため、株式の算定業務を行う投資情報会社等に簡易査定を依頼したうえでそれをベースに合意をする、もしくは公認会計士に依頼をして正式に算定する方法があり得ます。
一族が創業した会社の株式
難しいのは自らの一族で創業した会社の株式の場合です。基本的には当該会社を承継した相続人が株式も被相続人から譲り受けることになりますが、中小零細企業ゆえに株式の算定が難しいです。
当該会社の資産や収益をもとに公認会計士や顧問税理士が算定する方法もあり得ますが、評価額が大きくなると後継した相続人が単独で全株式を持つのが難しくなり、事業承継が円滑に進まない可能性があります。
被相続人の生前から長く事業に携わってきた相続人が後継者になる場合には、寄与分の主張をしやすく全株式を維持が容易となります。そのため、生前から少しずつ株式を後継者に贈与するやり方もあります。
死後に初めて、相続人が事業にかかわる場合は寄与分の主張が難しいため、他の相続人の協力が得られなければ株式全部の単独取得ができなくなることもあります。
その場合は後継者は最低限、特別多数の3分の2の株式を確保できるように代償金や他の遺産を他の相続人へ交付し、適宜、配当を交付するやり方もあります。
社債券、国債、ゴルフ会員権の分割相続
社債券、国債、会員権は通常は取引相場があるので、それに沿って評価額を算出できます。
また、遺産分割が決まるまでは各相続人が全員で共有の状態になります。
遺産分割未了のうちに配当金や利息が発生する場合、これらは被相続人の死後に発生しているので、遺産ではなく法定相続分に沿って当然に各相続人に帰属します。
貴金属、骨とう品、絵画
これらの高級品は、財産的価値があるので、遺産分割の対象になります。
誰も取得を希望する者がいない場合であれば、売却できるまで待って換金して分配することになります。
取得を希望する相続人がいるが、相続人間で合意が得られなければ専門家による鑑定が必要になります。
同一の物品について、複数の相続人が取得を希望してお互いに譲らない場合には、裁判官が審判手続で決定することになります。
まず、取得希望の品物の評価(鑑定)額が相続分以内かこれを超過しても代償金を支払えるかが重要なポイントになります。
希望する相続人にいずれも相続分や代償金支払いに支障がなければ、遺産分割時点で誰がその物品を管理しているかが最も重要になります。
誰も管理しておらず、被相続人宅の倉庫なり外部業者で管理している場合には、どの相続人が貴重品としての価値を失わせずに管理することが可能かという視点が重要になってくるでしょう。
これらの貴重品が日本で保管されていれば、当然海外在住の相続人よりは日本在住の相続人の方が取得に有利です。
ペット
被相続人が飼育していたペットについて、複数の相続人が取得を希望した場合どのようにして決まるのでしょうか?
ペットは様々あり、中には血統書付であったりブリーダーであるなど、価値の高いものもあります。
ただ、これまで説明してきた財産と異なり、換金する余地がほとんどなく、金額に評価し直すことができないものです。
また、被相続人の死後もペットが生きている前提であれば、誰かが飼育をしている場合であるため、遺産分割の審判によって飼育をしていない相続人への引き渡しを命じることは不適切といえます。
そのため、ペットについてはどの相続人が取得して飼育するかということを家庭裁判所が決めることはできないと思われます。
お墓、遺骨、仏壇等
お墓、遺骨、仏壇等は、法律用語で祭祀財産といいます。
遺産分割とは別の枠組みで、祭祀承継者指定により、管理をする人を家庭裁判所が決めることができます。
各相続人で合意ができない場合には、祭祀財産は、相続人の誰か1人が一括して管理することになります。
【まとめ】家庭裁判所が帰属を決められる財産はお金に換えられる財産
これまで説明してきたように、売却等で換金できたり、専門家等の鑑定で客観的に評価額が定められる財産については、誰が取得するかで争いが生じても遺産分割の審判で決定することができます。
ただ、事業承継に関わる株式や骨とう品などは各相続人がバラバラに取得をすると、その後の支障が大きいため合意により解決することが望ましいです。
困ったときは自力で解決しようとせず、弁護士などの専門家に頼るようにしましょう。