コラム
知っておきたい!遺留分請求と計算方法
2023.05.19
知っておきたい!遺留分請求と計算方法
船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。
遺留分は、法定相続分の半分に対して遺産に対する最低限の権利として確保させる制度です。
遺言書によって共同相続人の一部が多くの遺産を取得し、その他の相続人が法定相続人の半分未満の財産しか取得できない場合、法定相続分の半分に達するまでの金額を法定相続人を超えて取得した相続人へ請求できる権利です。
今回は遺留分の請求と計算方法について解説します。
目次
兄弟姉妹には遺留分侵害額の請求はできない
遺留分を請求できるのは被相続人の子や孫、あるいは親になります。
兄弟姉妹には遺留分侵害額の請求はできません。
親子関係であれば、親の遺産に対して一定の期待を持つのが普通であるのに対し、兄弟姉妹についてはそれぞれの子が相続することが多く兄弟姉妹の遺産に対して期待することが想定できないからです。
遺留分の金額はどうやって決まるか
例えば、相続人がAとBの2人いて、遺言者である父がAに全ての財産を渡すとの遺言書を作成した場合。
Bは遺産全額に対して法定相続分の半分の4分の1に相当する金額を請求できます。
これは、もっとも分かりやすい事例です。
少し複雑な例は、父に借金があった場合などです。詳しく事例を交え解説いたします。
遺言者である父に借金があった場合
遺言書では「Aに全ての遺産を渡す」とだけ記載されていた場合、借金はAだけが引き継ぐのでなく相続人であるAとBが半分ずつ引き継ぎます。
そうすると遺産(預貯金・不動産の合計)が5,000万円で、不動産のローンが1,000万円だった場合、Aは5,000万円の財産とローンのうち500万円を引き継ぎ、Bはローンだけ500万円を引き継ぐことになります。
この場合のBは5,000万円に対する4分の1の1,250万円に債務500万円を足した1,750万円を遺留分としてAに請求できます。また、遺言書の内容が遺産全部ではなく、自宅の不動産だけをAに取得させるという場合もあります。
遺言書の内容が不動産だけを相続させる内容だった場合
遺産総額は預貯金と自宅不動産を含めて5,000万円で、自宅がそのうち4,000万円とします。預金1,000万円については遺言書の指示がないため、遺留分の請求をしなければ貯金1,000万円をAとBで500万円ずつ分け合うことになります。
分け合った予算の金額を不服に思った場合は、Bは遺留分侵害額請求をすることもできます。
遺産全体に対する4分の1が遺留分割合になるので、Bには1,250万円の遺留分の権利があります。そのうち500万円は通常の遺産分割で取得したため、残額の750万円をBはAに対して請求できます。
生前贈与などを受けていると遺留分侵害額請求ができないことも
遺留分の請求は遺言書の内容で割を食った相続人が必ず請求できるわけでなく、生前に被相続人から援助を受けていると遺留分を請求できない場合があります。
遺言者が生前3,000万円の出資をしていた場合
例えば遺言者である父が、生前Bが設立した会社に3,000万円の出資をしていた場合、遺言書でBには既に多額の援助をしたので残った財産は全てAに取得させると記載しました。
Aが残した遺産が5,000万円であれば、本来Bには1,250万円の遺留分の権利があるはずです。しかし、父の生前に3,000万円の会社の運転資金の援助受けていた場合は、援助が遺留分の金額を超えるため、BはAに対して遺留分の請求ができなくなります。
生前の援助には期限の制限がない
また、生前の援助には期限の制約がなく20年とか30年くらい前からの援助であっても、遺留分から相殺されることになります。
もっとも、ここでいう援助は民法でいう「特別受益」のことを言うので、単なる金銭の交付でなく、生活に必要な資金援助(家賃や食費、住宅購入資金の援助など)か、事業資金の援助に限られます。
遊興費は遺留分からの控除対象にはならない
遊ぶお金(遊興費)をいくら受け取っていても、それを受け取った相続人が遺産分割の時点まで経済的利益を確保したわけでないため、遺留分からの控除対象になりません。
遺留分から控除されるべき特別受益に該当することについては、遺留分請求を受ける側の相続人が立証しなければなりません。
そのため、生前に被相続人から援助を受けたことを理由に、遺留分請求権がなくなってしまうことは珍しいといえます。
遺留分侵害額の請求は比較的認められやすい
遺言書で特定の相続人だけに全部または大半の遺産を取得させることにすれば、受け取れなかった相続人が遺留分侵害額請求をできる可能性は高いでしょう。
寄与分や特別受益と異なり、遺産全体の評価額に対する4分の1や、8分の1などはっきりとした数字が出ているため、請求を実現しやすいと言えます。
これに対して特別受益や寄与分は貢献や遺産に対するマイナスの評価をするのは容易でなく、立証も容易でないため、認められないことも珍しくありません。
弁護士への相談はお早めに!遺留分の請求の手続きは1年以内に終わらせよう
遺言書が見つかり、一人の相続人だけが得をしていると感じた場合は、なるべく早い段階で法律事務所へ相談することをおすすめいたします。
遺留分侵害請求権は、遺言書を開示して実際に遺留分を侵害することを知ってから1年以内に手続を実施する必要があります。
そのため、弁護士への相談は早ければ早いほどよいでしょう。