コラム

複数の相続開始が重なる場合の相続放棄

2023.04.07

複数の相続開始が重なる場合の相続放棄

複数の相続開始が重なる場合の相続放棄

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。相続放棄は通常、親の借金がみつかってから実施するというパターンが多く、1回だけで相続放棄をすればよいことが多いです。

ただし、祖父母や曾祖父母の代の相続に対しても相続放棄が必要な場合もあります。

先祖の相続放棄だけすればよいのか、直近の親世代の相続放棄が必要なのか、とても複雑で分かりにくいです。

そこで本コラムでは、祖父母以前の世代からの相続における相続放棄の要否について解説します。また、養子が関係する相続放棄についても併せて解説いたします。

父母の相続を承認して祖父母以前の相続放棄をする

父母の相続を承認して祖父母以前の相続放棄をする

相続は曾祖父母⇒祖父母⇒父母と代々連なっていくものなので、父母の相続放棄はしないで、一世代飛ばして祖父母の相続放棄だけをするのはできないかのように思えます。

この章では事例を用いて世代間の遺産相続について解説いたします。

父が祖父の遺産相続について承認も放棄のしないまま死亡した場合

父が祖父の遺産相続について承認も放棄もしないまま死亡して父を相続した場合、祖父の相続に関する承認か放棄の選択権も承継することになります。

父の相続を承認すれば、祖父の相続についての承認・放棄の選択権を持つことになります。

そのため、父の相続を承認しながら祖父の相続だけ放棄することができます。

祖先名義の遺産の固定資産税が請求される場合も

珍しい事例として祖父母や曾祖父母の代の相続に対して相続放棄が必要な場合もあります。

特に不動産の名義が先祖のままで、固定資産税の請求が突然やってくる場合もあります。こうした事例では、直近の親世代も死亡しており、自身が相続人になっているため、市役所から相続人として固定資産税の請求がされるわけです。

この事例は祖父母の相続について相続放棄をしたか承認をしたか未確定のまま、二次相続が発生したことになります。

まとめると、A⇒B⇒Cと順番に相続が発生した場合、CはB名義の預貯金を払い戻してBからの相続を承認したと扱われても、A名義の不動産の固定資産税の請求を免れるために相続放棄ができることになります。

もちろん、Bからの相続を承認しつつ、Aからの相続も承認するという手段も取れます。

父母の相続について相続放棄をした場合の祖先の相続について

父母の相続について相続放棄をした場合の祖先の相続について

さきほどのA(祖父母)⇒B(父母)⇒C(本人)と順番に相続した場合に、CがAの相続について態度を決めないまま、先にBの相続を放棄するとCはAからの相続を承認することはできません。

なぜなら、Bが権利を持っていたAの相続についての承認または放棄の選択権について、Bからの相続を放棄することで、Cはこの選択権を引き継ぐことができなくなるからです。
B⇒Cの相続で放棄することで、相続の流れが途絶えるのでAだけでなく、A以前の祖先からの相続もできません。

逆にいうと、A名義の不動産の固定資産税について市役所からCへ請求が来ても、CはBの相続放棄受理通知書(または受理証明書)のコピーを市役所へ提出すれば、請求はされなくなります。

これに対して、BがAより先に死亡して、その後Aが死亡した場合は、CはAの代襲相続人となりBからの地位の承継を経由しないで、直接Cの相続人となります。

そうすると、先に死亡したBについてCが相続放棄をしても、その後死亡したAについてCは代襲相続人としての地位を持っているで、Aの相続を承認することも放棄することもできます。

しかし、代襲相続の場合はBの相続放棄したからといってA名義の不動産の固定資産税の支払い義務は相続放棄しなければ承継することになるので、注意が必要です。

このように、父母の相続を放棄する場合における祖父母の相続への対応は、父母(B)と祖父母(A)の死亡の順番で結論が変わることになります。

二重に相続の資格を有する場合

二重に相続の資格を有する場合

これまでは、A⇒B⇒Cと先代から次世代へ順番に相続が開始される事例について相続放棄のあり方を説明してきました。

これに対して、相続人が親以外の被相続人と養子縁組をしている場合、本来の関係(孫、兄弟姉妹)での相続と養子に伴う親子関係からの相続が同時に発生することになり、二重に相続の資格を持つことになります。

まず、祖父母(A)が孫(C)と養子縁組をした後、子(B)が死亡してその後、孫(C)が死亡したケースを考えてみましょう。

祖父母が孫と養子縁組後、子と孫が死亡した場合

Aには、Bの他にB2,B3と子が2人おり、Cを養子とした場合。Cを含め4人の子がいることになります。

そのため、CはAの養子としての法定相続分が4分の1を持つことになります。

さらに、CはBの代襲相続人としてBが取得するはずだった4分の1の法定相続分を持つことになります。つまり、Cは養子としての相続分、代襲相続人としての相続分を合計して2分の1の相続分を持つことになります。

そうすると、CがAからの相続を承認して遺産分割協議に参加すれば、当然2分の1の権利があることを前提に個々の遺産の取得を主張することになります。そのため、相続放棄をする場合も原則として、養子としての相続分と代襲相続人としての相続分を同時に放棄することになります

ただ、どちらが一方のみの相続分だけを放棄することを明示した場合に限っては、他方の相続分は承認することになります。

次に、ABCが兄弟姉妹の関係であり、かつ、AがBを養子にしたケースを考えてみましょう。

兄弟間で養子にするケース

AがBを養子にした後に死亡した場合、相続人は子どもであるBだけになります。
Cは次順位の相続人なので、Bが相続放棄をしない限り相続人になります。

そこで、Bが相続放棄をすると、本来、BはAの兄弟なので、改めて、Aの相続人がBCの2人になります。つまり、Bが相続放棄をしても養子としての相続放棄にとどまり、兄弟としての相続分が残ることになります。

養子としての相続、兄弟姉妹としての相続、を同時に放棄することを明示すれば、それは有効であり、Cのみが相続人となります。

つまり、兄弟姉妹と養子縁組をした事例では相続放棄をしたと思っても、元々の兄弟姉妹としての相続が残ってしまうので、借金を放棄するためには同時の放棄が必要となります。

まとめ

複数の相続開始が重なる場合は注意が必要です。A⇒B⇒Cと順次相続する事例(これを再転相続といいます)では、AとBの死亡する順番で、Aだけ相続放棄できる場合とそうでない場合と結論が異なります。

養子が絡んだ二重相続の事例では、兄弟姉妹と養子をした場合が要注意です。
相続関係が複雑であるため、3か月の起算点、必要な戸籍の範囲など、きちんと整理をする必要があります。

そのため、家系図を作ったうえで弁護士へ相談し、どの範囲で相続放棄をすべきか、あるいは相続放棄に漏れがないかなどを十分に確認することが必要です。

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