コラム

子なし夫婦の相続人|知らないと損する特徴や対策を紹介

2021.07.08

子なし夫婦の相続人|知らないと損する特徴や対策を紹介

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。

時々、子どもがいない夫婦の一方の方が亡くなられた場合の相続の相談を受けることがあります。子どもがいない夫婦で、例えば、夫が先に亡くなりかつ夫の両親もすでに他界している場合、相続人は妻と夫の兄弟姉妹かその兄弟姉妹の子どもになります。

つまり、配偶者の親族が相続における話し相手になります。配偶者の親族は直接の血の繋がりがなく、普段は交流がないことが珍しくありません。

そのため、相続の話し合い(遺産分割協議)を進めるのが難しくなることがあります。本コラムでは、配偶者と配偶者の両親が子どものいない夫婦の遺産分割協議の特徴について、説明します。 

本記事のシミュレーション条件

・夫が他界した
・子供はいない
・夫の両親祖父母もすでに他界している

【特徴1】相続人が多人数になり手続きが複雑になりやすい

【特徴1】相続人が多人数になり手続きが複雑になりやすい

子どもがいない夫婦の相続の場合、先も述べたように、配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹に、また、兄弟姉妹が亡くなっているとその子どもたちが相続人になります。

例えば、亡くなった方が5人兄弟で3人が存命で残り2人が亡くなっていたとして、その2人にそれぞれ3人ずつ子どもがいたらその全員が相続人になります。つまり、合計10人が相続人になり、残された配偶者は9人もの血の繋がりがない相続人を相手に遺産分割の話し合いをする必要があります。

また、相続人であることを証明するための戸籍謄本、除籍謄本の収集が膨大になります。というのも、子どもがいない場合の相続人全員を確定させるためには、被相続人の兄弟姉妹全員を戸籍上で明らかにする必要があり、そのためには亡くなられた方(被相続人)の両親の出生から死亡までの全ての戸籍謄本、除籍謄本を入手する必要があります。

つまり、被相続人の先代に遡って戸籍を集める必要があり、20通から30通近くに及ぶこともあります。このように、そもそも、相続人が誰かを確定させる段階で、かなりの手間がかかります。

【特徴2】多人数の相続人相手の話し合いが困難を極めることも

【特徴2】多人数の相続人相手の話し合いが困難を極めることも

残された配偶者の視点からは、結婚していから親族になったそれほど親しくない相続人を一度に多人数を相手にして遺産分割の話し合いが必要となります。しかも、住所や電話番号すら分からない相続人がいることもあります。ただ、連絡ができないからといって、勝手に相続人から除外して遺産分割協議を進めることはできません。

また、相手となる相続人同士も、兄弟姉妹というのは結婚して独立後、疎遠になることもあるし、兄弟姉妹の子ども同士(いとこ)の関係も千差万別で交流がない場合もあり得ます。そのため、多人数の相続人相手について特定の数名を窓口にすることができなく、配偶者がそれぞれの相続人に対して個別に交渉をしなければならない場合も想定されます。

【特徴3】自宅の相続が困難になる場合も

【特徴3】自宅の相続が困難になる場合も

夫婦で夫名義の自宅に居住していたが、夫が亡くなって、妻と夫の兄弟姉妹(やその 子どもたち)が相続人となる場合に、自宅の取得が困難になる場合もあります。預貯金がほとんどなく、自宅の敷地の評価額が高額になる場合、形式的には、残された配偶者が自宅を単独で相続する場合には、自宅の評価の4分の1に相当する価額を兄弟姉妹に支払う必要があります。

それぞれの場合の法定相続分は以下のとおりになるからです。

配偶者と親が相続人配偶者:3分の2、親:3分の1
配偶者と兄弟姉妹が相続人配偶者:4分の3、兄弟姉妹:4分の1

今回の場合、兄弟姉妹が相続人なので4分の1となり、自宅評価額の4分の1を支払う必要があることになります。

例えば、亡くなった夫の預貯金が50万円ほどしかないが、自宅の土地の価値が4000万円ほどあると、妻は兄弟姉妹(やその子どもたち)に4分の1の1000万円の代償金を支払う必要があります。預金が50万円ほどしかないと妻は自身の資産から1000万円を拠出する必要が生じます。その資金を工面できない場合は、兄弟姉妹らが代償金を求める意向が強いと遺産分割の話し合いが難航しやすくなります。

このような時のために、最近の民法改正で配偶者居住権が規定されました。これは、亡くなられた方の配偶者が、他の相続人に対して代償金を支払わなくても、自宅に居住し続けられる権利のことで、自宅の所有そのものを認めるものではありません。配偶者居住権の新設により、配偶者が突然、他の相続人から自宅を追い出されることはなくなり、一定期間の居住の権利は確保されています。

もっとも、配偶者居住権は自動的に取得できるものではないし、まして、所有権そのものではない以上、「自宅にいつまで住み続けられるのか?」という不安を完全に解消することはできません。

子なし夫婦の相続対策

子なし夫婦の相続対策

トラブルをなるべく減らすためにも対策をしておきましょう。

遺言書を作成する

遺言書を作成しておくことでトラブルを未然に防ぐことも可能です。

例えば、前章の配偶者と兄弟姉妹が相続人というケースにおいては非常に有効になります。なぜなら兄弟姉妹は遺留分を請求することができないからです。

生命保険の受取人を配偶者にしておく

生命保険は生命保険受取人に指定された人のものになることが通常で、遺産には計算されません。

そのため、配偶者に確実に現金を残したいといった場合には生命保険を利用するとよいでしょう。

生前贈与を利用する

生前贈与を利用し、あらかじめ遺産分から住居などを取り除いておくことです。

贈与税には注意しなくてはなりませんが、配偶者の名義にしておくことで、確実に住み続けることが可能です。

【まとめ】子どもがいない夫婦の相続は専門家の助力が重要です

【まとめ】子どもがいない夫婦の相続は専門家の助力が重要です

以上のように、子どもがいない夫婦の相続において、残された配偶者が遺産分割の話し合いで困難を極める可能性が高いです。

対策としては、生前、遺言書を作成して全ての遺産を配偶者に相続させる旨を記載すれば、兄弟姉妹(やその子ども)は全く相続ができなくなり、遺産分割の話し合いが不要となります。なぜなら、兄弟姉妹には遺留分がなく、遺言によって兄弟姉妹の取り分をなくすことが法律上、認められるからです。

遺言書がないまま亡くなられた場合は、遺産分割において、もっとも、弁護士などの専門家の助力が求められるケースといってよいでしょう。特に弁護士へ依頼すれば、他の多数の相続人との話し合いを全て任せられるだけでなく、連絡先を把握していない相続人の住所を調査して、遺産分割の話し合いを始めることができます。

お困りの際はぜひお近くの弁護士にご相談ください。

初回相談1時間無料/オンライン相談可能
  1. 相続問題
  2. 相続放棄
  3. 遺言書作成
  4. 遺産整理
相続に関するお問い合わせ・相談予約は
24時間受け付けております
お問い合わせフォームはこちら
船橋習志野台法律事務所|初回60分無料 土日祝日・夜間20:30まで ご相談のお問い合わせはこちら