コラム

【要注意】相続放棄をしても葬式代は被相続人の財産から支払い可能!

2021.09.17

【要注意】相続放棄をしても葬式代は被相続人の財産から支払い可能!

こんにちは。船橋・習志野台法律事務所です。

相続放棄を検討している場合、基本的には被相続人(故人)の財産に手を付けてはなりません。なぜなら被相続人の財産に手を付けた時点で、「故人の財産を自分の手で扱う意思がある」と法的に示すこととなってしまうためです。しかし、葬式代の支払いについては例外的に、被相続人の財産から行っても、大丈夫なケースがあります。

本記事では相続放棄と葬式代金の支払いについて紹介していきます。

被相続人(故人)の財産から葬式代を出しても相続放棄は可能

被相続人(故人)の財産から葬式代を出しても相続放棄は可能

法定単純承認とは?

被相続人の財産に手を付けるなど、「行動をもって被相続人の財産を相続する意思を示すこと」を法定単純承認といいます。法定単純承認が認定されてしまうと、相続放棄することは実質的に不可能となってしまうため、相続放棄を検討している場合は、法定単純承認に認定されかねない行動をできるだけ慎む必要があります。

法定単純承認が認定される行動としては、代表的なものとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 相続放棄に関する諸手続きを、被相続人の死亡から3ヶ月以内に行わない。
  • 被相続人の預貯金を利用する。
  • 被相続人の財産(不動産や車など)の処分、換金を行う。

知らないうちに相続放棄を行えないという状況にならないように、以上の行動には気を付けましょう。

葬儀代に使用しても法定単純承認にはあたらない

それでは、葬式代の支払いを被相続人の財産から行うのは、法定単純承認にあたるのかというと基本的には該当しません。

法定単純承認の要件のひとつに「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき(民法921条1号)」というものが存在しますが、葬式代の支払いを被相続人の財産から行うことに関しては、相続人が相続財産を処分することとはみなされないのです。被相続人の葬式代について、どう捻出するか悩んでいるような場合は、まずは被相続人の財産を確認してみるのも良いかもしれません。

しかし、いくら葬式代の支払いは法定単純承認の対象外といっても、あまりにいい加減な支払いをしていると、その範疇に収まらなくなるケースがあります。

葬儀を行う上での注意点

葬儀を行う上での注意点

適切な規模の葬式を行う

先述した通り、葬式代の支払いを被相続人の財産から行うのは、基本的に法定単純承認には該当しません。しかし、被相続人の生前の職業や地位にそぐわない規模の豪華な葬式を行い、その結果、支出があまりに高額になってしまったような場合は、「適切な葬儀代との差額が相続財産の処分に当たる」として、法定単純承認が認められてしまう場合があります。

過去の判例では「身分相応の、当然営まれるべき程度の葬儀費用」と表現されており、その範囲に収める必要があるといえます。

親類なればこそ、できるだけ手厚く送って上げたいという気持ちはあるかもしれません。しかし、相続放棄を念頭に置き、さらには被相続人の財産を用いて葬式を挙げるような場合は、葬式の内容が被相続人の社会的地位、身分にふさわしい規模になるよう、よく注意して行うことが必要です。

領収書などを保管しておく

なお、法定単純承認にならない程度の規模の葬式については、実は法律等で明確な基準が定められているわけではありません。一般的な葬祭会社が提示する通常プランで行う分には、問題が起こる可能性は低いといえます。

葬儀代を遺産から出す場合、後から誰が見ても葬儀代であったという証拠を残すことが重要です。
そのため、領収書などはすべて保管しておきましょう。また、宗教により違いますが僧の方などへ渡す領収書が出ないお布施や心づけも、渡した相手、場所、日時、金額などをきちんとメモしておくことが必要です。

なお、被相続人の財産の中には、仮に受け取ったとしても、法定単純承認が認定されない種類のものも存在します。

財産を受け取っても相続放棄できるケース

財産を受け取っても相続放棄できるケース

仏壇や墓石の購入した場合

いわゆる葬式代には直接含まれない、仏壇や墓石の購入についてです。

被相続人の社会的地位、身分にふさわしい規模かつ必要不可欠な範囲でそれらを購入する場合は葬式代と同じく問題ない場合があります。被相続人の財産を用いて支払いを行っても、法定単純承認とはみなされない場合です。

ただしこれは、あくまで過去の裁判の判例に過ぎないため、過信するのは禁物です。

仏壇や墓石等の価格は、葬式代と比べると価格の上下幅が大きく、どの程度なら適切な支出なのか、明らかにしにくい部分があります。そのため相続放棄を検討しており、なおかつ被相続人の財産で仏壇や墓石等を購入するような場合は、適切な価格帯とはどの程度か、慎重に考えてから購入する必要があります。

なお、一旦購入し、法定単純承認が認定されなかった仏壇や墓石等については、祭祀財産(法要など祭祀にまつわる財産のこと。相続財産に含まれない)とみなされ、受け取っても相続放棄に差支えありません。もちろん、元から存在する仏壇や墓石についても祭祀財産であるため、法定単純承認の対象外となります。

死亡保険金を受け取った場合

他に、受け取っても相続放棄に影響を与えない財産として、死亡保険金が挙げられます。これは死亡保険金が、被相続人の所有する財産ではなく、保険金受取人の財産とみなされるためで、そもそも相続放棄する対象にはならないためです。

こうした死亡保険金については、税制上「みなし相続財産」として分類されます。みなし相続財産とは、被相続人が亡くなったことで発生する生命保険金などの財産のことを指します。みなし相続財産は、相続放棄をした人も受け取れる一方、相続税の対象ともなるため、その点注意が必要です。

また、被相続人の死後、国民健康保険や後期高齢者医療保険から喪主に対して支給される「葬祭費」についても、喪主の相続放棄の有無に関係なく受け取ることが可能です。

葬儀代の法定単純承認について不安な場合は、法律の専門家に相談しよう

被相続人の社会的地位、身分にふさわしい規模の葬式代であれば、被相続人の財産から支払っても、法定単純承認とみなされる可能性は非常に低いといえます。

ただし、適切な規模の葬儀が分からないような場合、仏壇や墓石等の購入も被相続人の財産から行うような場合は、慎重に行うことが非常に重要となります。

そうした際は、後のトラブルを招かないためにも、弁護士や司法書士など、法律の専門家と相談しながら行うと良いでしょう。

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