コラム

相続放棄をすると先祖のお墓は誰が管理をするか

2021.09.24

相続放棄をすると先祖のお墓は誰が管理をするか

相続放棄をすると先祖のお墓は誰が管理をするか

こんにちは。船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村亮です。

親である被相続人の借金が多くて、相続放棄をしたものの、先祖代々のお墓は大事にして行きたいということもあるかもしれません。そのような場合、お墓の管理だけは担うことができるのでしょうか?また、相続人の全員が相続放棄をしてしまった場合のお墓の管理はどうなるのでしょうか?

本コラムでは、相続放棄後のお墓の管理のあり方について説明いたします。

お墓の管理と財産の承継は民法では区別されている

お墓の管理と財産の承継は民法では区別されている

民法では、お墓(墓地、墓石)、仏壇、遺骨など死亡した被相続人を祭る祭祀承継に関わるものは、通常の相続財産とは区別して、法定相続分による共同相続のルールは適用されないとしています。具体的には、お墓、遺骨、仏壇その他、祭祀に関わる物は、当該一族や家系、地域ににおけるこれまでの慣習に従って、管理する人(祭祀承継者といいます)を決定します。

親族間で話し合いがまとまらず、かつ、慣習でも決められないのなら、家庭裁判所が審判という手続で決定することになります。家庭裁判所における判断基準は一概に言えませんが、被相続人との関係(血縁や生前の生活状況)や被相続人の意思が比較的重視され、その他、祭祀承継者になろうとする人が実際にお墓の維持、管理がどの程度できるのか、他の候補者との比較などが考慮要素になります。

そのため、祭祀承継者になるかどうかは、亡くなった人の相続人であるか否かの一点だけで決まるわけでなく、相続放棄をしたとしても、祭祀承継者になれる、あるいは、家庭裁判所に指定される可能性があります。

このように、一般的な財産の相続と祭祀承継を区別したのは、お墓、遺骨、仏壇などの管理は複数の相続人で分割したり平等に管理するのになじまないこと、死者を祀るという信仰、伝統、その他慣習や親族の思想と切り離せないため財産法による分配で決められないためです。したがって、お墓の管理は、その他の財産の遺産分割とは切り離して考える必要があります。

親の相続放棄をしてもお墓の管理はできるか

親の相続放棄をしてもお墓の管理はできるか

前章で述べたとおり、一般的な財産相続とは異なるので相続放棄したからといってお墓の管理ができなくなるわけではありません。ただ、他の相続人が親の借金を引き継いだうえでお墓の管理をしたいとの希望を持っている場合、誰がお墓の管理をするか で話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所が祭祀承継者を決定することになります。

その際に、相続放棄をした事実が被相続人と疎遠であると家庭裁判所に評価され親の借金を引き継いだ相続人が祭祀承継者に指定される可能性もあります。相続放棄しつつ、祭祀承継者に指定される場合とは、他の相続人が遠方に住んでいて物理的に管理が難しいとか、墓石の建立や墓地の選定に相続放棄をした(元)相続人が深く関わっていた、被相続人の遺言があるといったケースが考えられます。

もちろん、話し合いで他の相続人が分担して借金を引き継ぐ代わりに残った一人の相続人は相続放棄したうえで、お墓の管理の負担を受けるということも可能です。

甥、姪が相続放棄した場合に、兄弟のお墓の管理を押し付けられてしまうのか

甥、姪が相続放棄した場合に、兄弟のお墓の管理を押し付けられてしまうのか

被相続人の子全員が相続放棄をすると次の順位の相続人である被相続人の兄弟姉妹が 相続人となります。そうすると、兄弟姉妹が亡くなった際にその子らが全員相続放棄をすると相続人となり、被相続人のお墓の管理もしなければならないでしょうか?

これは、公立の霊園やお寺などの宗教法人からお墓の使用料(管理料)を請求される場面で問題となります。被相続人の生前の段階で発生している使用料については相続放棄をすることで支払い義務を免れます。兄弟姉妹も含めて相続放棄をすれば、霊園やお寺などは誰に対しても未払いの使用料を請求できなくなりますが、これは、一般的な債権の貸し倒れと同じことなのでやむを得ません。

では、被相続人の死後、祭祀承継者がなかなか決まらず、その間にお墓の使用料の未払いが続いた場合には、誰が負担すべきでしょうか?ここでは、親族が誰もお墓の承継を望まない場合には、誰も管理しないまま、霊園を管理する自治体や宗教法人などが無縁墓として改葬の許可を得て、お墓を撤去する可能性があります。

あるいは、霊園管理者の側で利害関係人として祭祀承継者指定の審判を家庭裁判所に申立て、相続放棄をした親族の誰かが祭祀承継者に指定される可能性もあり得ます。その場合には、被相続人の死亡後の未払いの管理料を祭祀承継者に指定された相続人が支払う必要があります。

霊園管理者から祭祀承継者の指定を申し立てることはほとんどないと思われます。ただ、被相続人の生前からお墓の管理に関わり他の親族の納骨なども行っていながら、使用権者である被相続人の死亡をきっかけに突如として管理から手を引こうとする場合には、このような申立がなされるかもしれません。

全員が相続放棄した場合のお墓の管理について

全員が相続放棄した場合のお墓の管理について

全員が相続放棄をしたとしても、合意または家庭裁判所の審判で祭祀承継者を定めてお墓の管理をすることができます。仮に誰もがお墓の管理を望まない場合でも、放棄をした相続人の一人からの申立により、家庭裁判所が他の管理が可能な相続人を祭祀承継者に指定する可能性もあります。また、祭祀承継者指定の申立がなされないまま、無縁墓になってしまう可能性も十分にあります。

まとめ

相続放棄とお墓の管理は別概念になりますので、相続放棄をしたとしても、家庭 裁判所から祭祀承継者に指定されれば、これを拒否することはできず、被相続人の死亡後のお墓の管理料などを負担する必要があります。逆にいえば、相続放棄をしつつ、お墓の管理をしたい場合には他の相続人が同意すればそれが可能となります。

いずれにしても、相続放棄でお墓の問題から解放されるわけではなく、親の借金とは別にお墓の管理については相続人同士で十分な話し合いをすることが望ましいでしょう。

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