コラム

相続放棄の具体事例|相続放棄を望む人のよくある動機・目的を紹介

2021.08.05

相続放棄の具体事例|相続放棄を望む人のよくある動機・目的を紹介

こんにちは。船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村亮です。

高齢社会の到来に伴い、相続が発生する件数が増えるとともに、相続放棄のご相談を受ける機会も増えております。本コラムでは、どのような目的で相続放棄を望む人が多いのか紹介します。

相続放棄を検討している方にとって、参考にしていただければ幸いです。 

【目的1】被相続人の借金が多いことが明白だから

【目的1】被相続人の借金が多いことが明白だから

相続放棄のご相談で一番多いのが、親の借金が多額で残された遺産より多いことが明らかな場合です。

ここからはよくあるケースを具体的例を出しながら紹介していきます。

(ケース1)親が破産申請せずに亡くなった

親が借金を抱えたまま亡くなるのは、事業に失敗して借金が残ったもののその段階で高齢で身動きが取れず破産などの清算手続が取れなかったり、親族、友人の連帯保証人になってしまい自分から破産することを望まなかったケースが典型的です。

こうしたケースでは親の持ち家が競売にかけられたり、自宅に多数の催告書が来ることが多いので、相続人となる子どもから見ても借金が多いことが明白です。

なので、相続放棄をするという選択に迷うことはほとんどありません。ただ、家庭裁判所という日常生活で馴染みのない期間での手続であり、亡くなってから3か月という期間制限があることから、専門家である弁護士へ依頼する方が少しづつ増えています。

(ケース2)離婚で生き別れた親が借金を抱えていた

あとは、両親の離婚で生き別れた親が借金を抱えていた場合です。このような離婚で子どもと別れた側の親は就労状況が不安定であることが多く厚生年金に加入していないことが多いため、高齢で働けなくなるタイミングで借金に頼って長く生活していることがよくあります。そのため、突如、消費者金融などから相続人であるこ子ども宛てに、催促のハガキなどが送られることがあります。このパターンだと、そもそも財産を持っている可能性がほとんどないので、早めに相続放棄を決断した方がいいでしょう。

(ケース3)第1順位の相続人が全員相続放棄をした

最後に、これらの親の借金を回避するために子ども全員が相続放棄をすると、第2順位の相続人である兄弟姉妹(やその子)が相続人となります。このパターンだと、まさに寝耳に水で突如、債権者から相続人であるという理由で借金支払いの催促が来ます。

亡くなった兄弟姉妹に財産があれば子(甥、姪)らは相続放棄をしないでしょうから、相続放棄して相続の順位が回ってきた以上は、借金が多いと思ってほぼ間違いありません。ですから他の親族の相続放棄で出番が来た相続についても、まずは、相続放棄をすることが選択肢に入ってきます。 

【目的2】親族間、特に兄弟間の争いに巻き込まれたくないから

【目的2】親族間、特に兄弟間の争いに巻き込まれたくないから

亡くなった親などに十分な遺産があっても、親の生前から兄弟姉妹間の関係が悪く、相続をきっかけとした遺産の分配をめぐる話し合い(や争い)に関わりたくない場合に相続放棄をしたいというご相談もあります。

というのも、親の遺産が欲しくない場合でも、親名義の預金の払い戻し、親名義の不動産や株式などの名義変更など、ほとんど全ての相続関係の手続について、相続人全員の実印と印鑑登録証明書が必要となります。そのため、遺産が欲しい他の相続人から、「実印を押してください」「印鑑証明書をください」といった催促が来るのを避けることができません。このような煩わしい事態を避けるために、相続放棄の手続を取るこことができます。相続放棄の手続が完了すれば、家庭裁判所から発行される相続放棄受理証明書を他の相続人へ渡せば、実印などの催促は来なくなります。

そのため、相続の話し合いに関わりたくない場合には、単に「1円もいらない」と宣言するよりも相続放棄の手続を取ることが望ましいでしょう。

【目的3】親の遺産の詳細が分からないから

【目的3】親の遺産の詳細が分からないから

親と同居していない場合、あるいは、親と同居していても亡くなる直前まで判断力がしっかりしていると、子どものとしては親の遺産の詳細が分からないことがままあります。親自身も特に借金の存在を積極的に子に知らせることはそれほど多くありません。

そのため、親が亡くなった後に、見知らぬ消費者金融等からハガキが届くと、子どもの立場では、どれくらい借金があるのか不安になります。そこで、相続放棄を検討するのですが、遺産の方が多い場合には相続放棄をすると親の財産を放棄したことになり、もったいないです。この場合の対応策としては、相続の限定承認をするか、相続放棄の判断期間を3か月からさらに延長するか、2つの方法があります。

相続の限定承認は、相続後に親の借金が判明しても親から受け継いだ遺産の範囲で借金を返済すればよく、相続人が自分の財産から返済する義務はなくなります。この方法であれば、遺産の方が借金より多くなっても損はしません。ただ、この方法は、手続に時間がかかる上、他の相続人も含めて子ら全員で同時に手続をする必要があります。

後者の相続放棄の判断期間を延長する方法は、本来であれば、親が亡くなった日から3か月以内に相続放棄をしないと相続放棄ができなくなってしまうところ、家庭裁判所にその期間を延長してもらうことができます。期間を延長することで、親の遺産を調べる時間を作れ借金の有無も調査できます。親にどれくらいの借金があるかは、信用情報機関に開示請求することでほとんどの借金が判明します。

親の遺産の状況が分からない場合に、各相続人同士で協力がスムーズにできる場合には相続の限定承認が第一の選択肢となるでしょう。逆に相続人同士での協力が難しそうであれば相続人一人で、できる相続放棄や放棄の3か月の期間の延長を優先的に検討することになります。

まとめ

このように、相続放棄を検討するパターンは大きくわけてこれらの3つに分類できます。大事なことは、相続放棄は1回してしまうと原則撤回できず遺産を取得できなくなること、及び、相続放棄をするか否かは原則として亡くなったことを知ってから3か月以内に結論を出す必要があることです。

つまり、後戻りできない決断について、肉親が亡くなるという人生で何度もない体験からわずか3か月しか検討する時間がないのです。なので、予め、相続放棄に適した上記アからウのパターンを頭に入れておいて、いざという時に、早めに決断できるようにしましょう。

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