コラム

撤回できる?相続放棄の撤回と取り消しには要注意

2021.08.04

撤回できる?相続放棄の撤回と取り消しには要注意

こんにちは。船橋・習志野台法律事務所です。

相続放棄をすると、相続人と非相続人の間で相続関係がなかったとみなされます。そのため、相続によって負債を引き継いでしまう場合などに、相続放棄はよく用いられます。

しかし、相続放棄の手続きを一度決めてしまうと、それをなかったことにするのは容易ではありません。どのような条件のときに相続放棄の撤回や取り消しはできるのか、以下で解説します。

相続放棄の撤回は難しい

相続放棄の撤回は難しい

相続放棄の理由には「遺産分割手続きが面倒に感じた」「相続財産は負債の方が多いと思っていた」「財産がまったくないと判断した」などのケースが考えられます。後になってこれらの理由が当てはまらなかった場合には、相続放棄の取り消しや撤回をすればよいと考える人もいるかもしれません。しかし、原則的に相続放棄の撤回や取り消しはできません。

なぜ相続放棄の撤回や取り消しは認められないのでしょうか。それは、一度認められた相続放棄の撤回や取り消しを許してしまうと、相続関係を複雑にし、他の相続人の地位を不安定にしてしまうからです。また、財産の処理を待つ利益関係者に不測の損害を与えてしまうかもしれません。そのため、後になって「遺産分割手続きに参加したい」「利益のある財産だと気づく」「新しい財産がみつかる」などの事情変更があったとしても、一度認められた相続放棄をなかったことにはできません。しかし、取消事由が存在する場合などは、手続きが難しいものの、例外的に撤回や取り消しが認められる場合があります。

相続放棄の取り消しが認められるケース

相続放棄の取り消しが認められるケース

相続放棄は「相続放棄の申述受理前」であれば、相続放棄の取り下げができます。相続放棄の申述が受理された後は、取消事由にあたる場合、もしくは錯誤無効によって相続放棄が取り消される場合があります。

申述書の申請前

相続放棄の手続きは、裁判所に相続放棄の申述書を提出して行います。書類を提出した後、相続放棄の申述が受理される前であれば、申述書を取り下げ、相続放棄しなかったことにできます。あくまで裁判所が書類を受け取っただけで、相続放棄を正式に受理したわけではないからです。相続放棄の効果が及んでいないため、他の相続人や利害関係人の法的安定性を脅かしません。なんらかの事情変更があって相続放棄を取りやめたいときは、すぐに裁判所に取下書を提出するようにしましょう。

相続放棄が詐欺または強迫でなされた

詐欺によって相続放棄を決定したなら、相続放棄の取消事由として認められることがあります。例えば、財産を独占しようとした相続人が他の相続人をだまして相続放棄させたケースや、財産を相続すると大きな負債を抱えると欺罔したケースで、詐欺を理由とした相続放棄の取り消しが認められています。また、脅迫による意思表示も取消事由です。相続放棄しなければ家に火を付けると脅された場合などがこのケースにあたります。

未成年者による法定代理人の同意を得ない相続放棄

未成年者の法律行為には法定代理人の同意が必要です。そして、同意のない法律行為は取り消しができ、相続放棄にも効果が及びます。未成年者が法定代理人の同意を得ずに、自分だけで相続放棄をした場合には、取り消しができます。ただし、未成年者が相続放棄の手続きをする際には、必ず法定代理人の確認が行われるため、実際には起こりにくいケースです。

成年被後見人による相続放棄

成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあって、家庭裁判所による後見開始の審判を受けた者のことを指します。法律では成年被後見人の法律行為は取り消しできると規定しています。これは、法律行為をする判断能力が不十分であるため、成年被後見人を保護するための制度です。そのため、相続放棄についても取り消しうるとされています。なお、成年被後見人が相続放棄する場合には、成年後見人が法定代理人として行います。

後見監督人の同意がない相続放棄

成年後見制度では、後見人の事務を監督するために、後見監督人を選べます。後見監督人が選定されている場合には、後見人が特定の法律行為をする場合や、被後見人にその法律行為をする同意をあたえる場合に、後見監督人の同意が必要です。後見監督人の同意を得ない相続放棄は、取消事由にあたります。なお、成年後見人制度では上記の他にも「保佐人の同意を得ない相続放棄」「補助人の同意が必要と定めた場合の、同意がない相続放棄」も取消事由です。

錯誤による取り消し

意思表示に錯誤があった場合、民法の定めによって取り消しができます。ただし、錯誤といっても、単純に勘違いしただけでは取消事由とはなりません。錯誤による取り消しを主張するには「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」がある、もしくは「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」であることが必要です。また、錯誤を主張するにはそのように判断したことについて、重過失がないことが求められます。

相続放棄撤回手続きを進める上での注意点

相続放棄撤回手続きを進める上での注意点

相続放棄の撤回手続きをするには、相続放棄の申述をした相続人、もしくはその代理人が家庭裁判所に申立をする必要があります。申立先は被相続人の住所がある家庭裁判所です。申述をした相続人の住所ではないので注意しましょう。

申立の起算点は、相続放棄の追認ができるときから6カ月以内、相続放棄から10年以内です。なお、利害関係者や他の相続人の法的地位を守るために、裁判所では相続放棄の撤回や取り消しをする理由が問われます。そのため、理由を満たすだけの証拠を用意しなければなりません。場合に寄っては事情聴取が必要とされることもあります。何か証拠となるものが残っている場合には、全て提出するようにしましょう。

【まとめ】相続放棄を決める前に専門家に相談しよう

相続放棄ができるのは、相続人が被相続人の死亡を知ってから3カ月以内です。相続人はその間に財産を調べ、相続するのか放棄するのかを選択しなければなりません。また、相続放棄が受理されると、その撤回や取り消しはとても大変です。

そのため、相続放棄を考える際には、安易に「取り消せばよい」などと考えずに、必ず法律の専門家に相談するようにしましょう。

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