コラム

遺産分割協議における弁護士、司法書士の違い

2021.09.03

遺産分割協議における弁護士、司法書士の違い

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。

さて、相続の場面で出てくる職業では、私たち弁護士の他に、司法書士という専門職もあります。法律の専門家という点では弁護士も司法書士も共通します。では、どのような違いがあるでしょうか?

今回のコラムでは、遺産分割協議における弁護士と司法書士の役割の違いについて説明いたします。

弁護士と司法書士の違い

弁護士と司法書士の違い

弁護士も司法書士も法律の専門家なので、どちらも民法で定められている相続に関するルールには精通しております。そのため、民法に違反しない形で遺言書の作成についてアドバイスすることもできるし、相続人同士で話し合いがまとまった場合にそのまとまった内容を書面にする遺産分割協議書の作成も、弁護士、司法書士いずれもが担当できます。これらに共通するのは、相続に関する書類の作成やそのためのアドバイスといった事務処理であって、誰かを代理しての交渉ではないということです。

そして、特定の相続人から依頼を受けて他の相続人と遺産分割に関して交渉をすることは、弁護士にしかできないことで、司法書士は担当することはできません。そのため、相続について、弁護士に相談するか、司法書士に相談するかは、遺産のうちどの財産をどの相続人に取得させるかという遺産の分配方法が決まっているか否かで、区別できます。

例えば、相続人ABCがいて、3名父親Xが亡くなりX名義の自宅をAに相続させることが決まっていれば、司法書士に相談して相続登記や遺産分割協議の作成を依頼することになります。

逆に、ABCのだれもが自分がXの自宅を取得したいと考えていて遺産分割協議について結論が出ていない場合には司法書士に相談しても解決しません。この場合は、弁護士へ相談をして、他の相続人との交渉を依頼するかどうかを検討することになります。

被相続人が亡くなったばかりで、まだ、話し合いの機会を設けていない場合はどうか

被相続人が亡くなったばかりで、まだ、話し合いの機会を設けていない場合はどうか

相続人が多人数でどのように話し合いを進めていいかわからない場合

この場合は、弁護士へ相談すべきでしょう。

先ほど述べた弁護士と司法書士の違いによれば、このケースは遺産分割協議について結論が出ていない段階なので、司法書士は相続人の誰かを代理して交渉に参加できない以上、弁護士が遺産分割の交渉を進めるか、相続人自らが進めるかのどちらかになります。

典型例は、子供のいない夫婦の一方がなくなり、配偶者と亡くなった人の兄弟姉妹(やその子供たち)が相続人になる場合です。配偶者とすれば自分がほとんどの遺産を取得できると考えているので、トラブルなどなく、相続登記を始めとする名義変更の手続について自分でやるか、司法書士に相談して書類を作ってもらえばよいと感じるかもしれません。

しかし、兄弟姉妹(やその子ら)にも法定相続分がある以上、遺産の一部が欲しいと権利主張する可能性があります。その場合に司法書士に依頼をして、名義変更に必要な遺産分割協議書を作成し、他の相続人に署名押印するように働きかけた場合、その働きかけ自体が交渉になってしまい、弁護士にしかできない業務となるので、これを司法書士が担当することは違法になってしまいます。

弁護士であれば、配偶者が単独で遺産を取得できる旨の遺産分割協議書を作成したうえで、他の相続人に署名押印を求めることができます。その他にも、他の相続人の意向を確認することもでき、話し合いの場を設けることもできます。したがって、自分が遺産を取得するのが当然だと思っても、他の相続人の意向が分からないうちは、弁護士へ相談すべきでしょう。

相続人の一部と連絡が取れない、そもそも誰が相続人だか分からない

このケースも弁護士へ相談すべきでしょう。

連絡が取れない相続人に対して書面などで遺産分割協議に応じるように働きかけること自体が交渉になり、弁護士にしかできません。そして、働きかけても返事がない場合には、遺産分割の調停を申立ないと、遺産分割の手続きを進めることはできません。遺産分割の調停は弁護士にしかできないので、この点からも弁護士に相談すべきといえます。

また、誰が相続人か分からないケースでも、弁護士へ相談するの方が最終的な解決に適しています。誰かが相続人であるかという調査自体は弁護士も司法書士もできます。

ただ、調査の結果、判明した相続人に対して遺産分割協議に応じるように働きかけることは交渉になるので、これは弁護士にしかできません。司法書士に相続人の調査を依頼しても、「誰が相続人であるかが分かる」だけで、その後の話し合いは、司法書士に依頼できず、自分でやるしかありません。

ただ調査によって判明した顔も知らない他の相続人と自分だけで話し合いができるかというと、かなり難しいでしょう。したがって、誰が相続人であるかが、分からないケースにおいても、弁護士へ相談する方がよいでしょう。

法定相続分より多くの遺産取得を主張する場合

被相続人の残した銀行預金を兄弟3人で分配する場面で、そのうち一人が預金全体の半分を取得したいとします。本来は3等分になりますが、あえて、半分の取得を主張する場合、弁護士と司法書士のどちらに相談すべきでしょうか?

これは、兄弟の中で話し合いがまとまっておらず、自分で主張している段階であれば、弁護士へ相談すべきです。弁護士に相談してどうやったら、半分の預金を取得できるか、アドバイスをもらいあるいはそのような交渉を依頼することになります。

これに対して、他の2人の兄弟も納得しているなら、そのまま銀行へ行って、払い戻しの手続をすればよいことになります。そうすると、法定相続分とは異なる預金の分配について相談する場合も弁護士の方が適していることになります。

【まとめ】話し合いのサポートは弁護士へ、書類作成や登記は司法書士へ

 相続において、弁護士と司法書士、どちらへ相談・依頼すべきかは、話し合いの結論が決まっているかどうかがもっとも重要です。分かりやすく言えば、相続人全員が同行して、遺産の分配方法について一致した結論を伝えられる状況であれば、司法書士事務所に連絡をしてその後の手続きを相談するのがよいと思います。

結論が決まっていない、言い換えれば、相続人全員の同席した形での相談ができないのであれば、法律事務所で相談の予約をした方がよいといえます。

 また、相続の登記については、法律上、弁護士も代理申請できることにになっていますが、現実は、ほとんどの弁護士は相続登記を扱っていません。なので、遺産となる不動産について、誰が相続するか決まっている時は司法書士に相談した方がいいでしょう。

 このように、弁護士と司法書士は同じ法律の専門家ですが、相手との話し合いを本人に代わって行えるのが弁護士で、それができないのが司法書士という大きな違いがあります。これを意識して、相談すべき専門職を決めましょう。

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