コラム
相続放棄とペットの関係|全員相続放棄をしたら被相続人のペットはどうなる?
2021.09.10
相続放棄とペットの関係|全員相続放棄をしたら被相続人のペットはどうなる?
こんにちは。船橋・習志野台法律事務所です。
犬や猫などペットを飼っている人が亡くなった場合、ペットの世話を誰がするのか不安に思っている方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、相続人が誰も現れなかった場合のペットの扱いや飼い主が生前にできる行動など、相続放棄とペットとの関係を中心に解説します。ペットの将来が心配だという方は参考にしてみて下さい。
目次
ペットを引き取っても相続放棄が却下されるケースは少ない
日本の法律では犬や猫といったペットは物として扱われる事から、所有者の財産という位置づけとなっています。
基本的に人が亡くなった場合、その人が保有していた財産は、相続人が引き継ぐ事になります。ペットに関しても相続財産と見なされるため、引き継ぐのは相続人です。このような仕組みがある事から、仮に相続放棄をすると、相続人ではなくなるので、相続財産でもあるペットの相続は不可となり、引き取れなくなります。
相続放棄を検討している人にとって、最も大きな懸念と言えるのが単純承認です。単純承認とはマイナスの財産を含めた全ての財産を相続する事です。
相続財産を引き継いだ場合、その引き継いだ人は相続人という事になります。そのため、相続財産であるペットを引き取ってしまうと相続する意思があるという事になり、単純承認と判断されてしまう可能性があります。
ただ、家庭裁判所に必要な書類を提出する際、ペットが問題になるケースはほとんどありません。家庭裁判所としてはあくまで財産処分などを判断基準としている傾向があるからです。相続放棄した人がペットを引き取った事で、実際に相続放棄が却下されるというケースはほとんどないと言えるでしょう。
全員が相続放棄した場合、ペットはどうする?
ペットを引き取りたい人が誰もいない場合
相続人全員が相続放棄の意思を示し、ペットを引き取りたい人が誰もいない場合、ペットの保護団体又は動物病院に相談するのが良いでしょう。特にペットの保護活動を行っている団体は、地元の強いネットワークを活用しながら保護が必要なペットの情報を得ています。
また近年では動物病院でも飼い主がいなくなったペットの里親探しにも積極的に取り組んでいる傾向があります。ただ注意点しておくべき点が、自治体に直接、ペットの里親探しについて相談した場合、保健所に連れて行かれるケースが多いという事です。地域によって異なりますが、里親が一定期間見つからないと殺処分されてしまう可能性もあるので、役所への相談はなるべく避けるのが賢明と言えます。
相続放棄した人の中にペットを引き取りたい人がいた場合
一方、相続人が誰もいない場合、法律的には相続人不在という扱いになります。相続人が誰もいない相続財産は相続財産法人という呼称となり、家庭裁判所は相続財産管理人を選任します。相続財産管理人は亡くなった人の債務を清算した後、国庫へ財産を帰属させる役割を持っています。
この手続きの過程において相続人が現れた場合、ペットを含めた亡くなった人の財産をその相続人が引き継ぐ事は可能です。そのため、相続放棄していてもペットの引き取りを希望すれば法律上引き取る事はできます。
被相続人が生前中にできること
ペットは法律上は物として扱われてしまいますが、誰かがお世話をしなければ生きていくことができません。被相続人が亡くなった後もしっかり生きていけるようにしてあげるよう準備をしておくことも大切です。
ここでは被相続人が生前中にできる準備をご紹介します。
遺言書を作成しておく
生きている間にペットの飼い主となってくれる人を遺言書に記したとしても、自分が亡くなった後に本当に面倒を見てくれるのか確認する事はできません。自分にとって有益な財産のみを受け取ってペットの世話を放棄する可能性もあります。
このような事態に陥らないためにも飼い主は遺言執行者を利用するのが良いでしょう。遺言執行者は飼い主が亡くなった後、ペットの世話を任された人がきちんと面倒を見ているかをチェックする役割がります。
もし、遺言書の内容に反している事が確認された場合は、遺言執行者は相続人に履行を請求する事が可能です。
ペットを世話する施設を探しておく
近年は犬や猫の寿命が延びている事もあり、飼い主が亡くなった時にはペットも高齢化しているケースも少なくありません。そのような背景もあり、最近では高齢化したペットを世話をする施設が増えている傾向にあります。
また生前整理の一つとしてペット信託サービスを利用する飼い主も増えています。ペット信託サービスを利用するには、信託会社にペット飼育に必要な資産の管理を委託する信託契約を締結し、ペットに使う費用を信託会社に移転するやり方があります。そして信託会社から新しい里親に定期的にペット飼育に必要な資金を提供します。このように信託会社が資産管理に関わることで、飼い主がペットのために使うべき費用を無断で使い込むことを防止できます。
飼い主が亡くなった後は受益者である新しい里親がペットのの生活費として財産を引き継ぎます。財産を信託会社に移す事でトラブルのリスクがなく、安心してペットの生活を託せる点がペット信託サービスのメリットと言えます。
亡くなる前にペットにとってベストな選択を決めておきましょう!
飼い主にとってペットは家族であり、大切な財産でもあると言えるでしょう。そのため、自分が亡くなった後も、誰かに世話をしてもらいたいという思いもある事でしょう。
ただ、飼い主自身が負債を抱えていると誰も相続人に名乗りを上げず、最終的には保護施設に行かされて殺処分という結末になってしまう可能性があります。そうならないためにも、ペットにとって幸せな生活が送れるようベストな選択を決めておく事が大切です。