コラム

【相続放棄と単純承認①】相続放棄ができず問題になりやすい事例を紹介

2023.07.19

【相続放棄と単純承認①】相続放棄ができず問題になりやすい事例を紹介

【相続放棄と単純承認①】相続放棄ができないケースとは?問題となりやすい事例を紹介

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村亮です。

今回のコラムは相続放棄関連で最もご質問が多い、相続の単純承認とみなされて相続放棄ができなくなってしまう問題についてご説明します。

相続の単純承認とは、故人の遺産全てを受け入れ相続することです。故人の遺産を相続する気がなかったとしても、被相続人の遺産を使用、処分などをしたことにより単純承認したとみなされ、相続放棄ができなくなることがあります。

前半のこの記事では単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなりやすい事例を説明します。

後半記事:https://kitanaralaw.com/souzoku/column/souzokuhoki-tanzyunsyonin-2/

【相続放棄と単純承認②】相続放棄しても受け取れるものって?

単純承認と相続放棄とは

相続方法には、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つがあります。

「単純承認」とはプラス・マイナスすべての財産を相続すること、「限定承認」はプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐこと、「相続放棄」はプラス・マイナス全ての相続を放棄することです。

「単純承認」は特別な手続きが不要で、故人の死亡を知ってから3ヶ月の間に何も手続きなどをしなければ自動的に全ての遺産を承認し引き継いだとみなされます。しかし、「限定承認」や「相続放棄」は故人の死を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述書を提出する必要があるのです。

申述書を提出すれば相続放棄が全て認められるわけではなく、その3ヶ月以内の相続人の行動によっては単純承認したとみなされ相続放棄ができなくなってしまう場合があります。

次章で具体的な事例を見ていきましょう。

相続の単純承認となり相続放棄ができなくなる事例

【事例1】被相続人の預金の払い戻しや不動産の売却

【事例1】被相続人の預金の払い戻しや不動産の売却

以下は相続財産の処分に該当する典型例です。

  • 被相続人(亡くなった人)名義の預金を払い戻しした場合
  • 被相続人名義の不動産について自らに名義変更をして売却したり、賃貸に出したり、あるいは、自身で居住するなどした場合

このような行動は単純承認とみなされ、こうした遺産の処分をした後は、相続放棄ができなくなります。

【事例2】被相続人のブランド物の遺品処分

【事例2】被相続人のブランド物の遺品処分

被相続人が一人暮らしのアパートに居住したまま亡くなり、大家から相続人に対して遺品となる残置物の引き取りを求められることがあります。この場合、売却して換金することができない価値のないものを引き取ったとしても、相続財産の処分に該当しません。

相続人が遺産を取得しながら相続放棄をしてしまうと債権者は、本来遺産からの債権回収ができたはずなのに相続人が負の財産だけ免れてしまうという不当な状況になります。そのため債権回収を実現できるような経済的価値がないアパートの残置物を処分しても、相続放棄は認められます。

ただ、残置物・遺品の中にブランド物の衣類やバッグなど質屋やリサイクルショップなどで容易に売却できるものはたとえ捨ててしまったとしても遺産の処分に該当して、相続放棄ができなくなる可能性があります

特に戸建てや区分所有マンションなど持ち家にお住まいの方の遺品整理は多岐にわたるため、相続放棄を検討している場合は、安易に遺品を処分しないようにしましょう。

【事例3】被相続人の葬儀費用の支払い

【事例3】被相続人の葬儀費用の支払い

遺産から葬儀費用を支払った場合も遺産に該当する現金を処分したことになってしまうのでしょうか? 

葬儀費用の中で火葬に必要な最低限の費用を支払う場合には、火葬は必ず実施しなければならないので、この場合は遺産の処分に該当せず単純承認したとはみなされないでしょう。

ただ、葬儀業者に依頼をしたり、お寺の住職のお布施を払うなど多額の費用を支払う場合には遺産の処分に該当してしまいます。最低限の火葬を超えた社会常識としての葬儀を実施する場合、葬儀費用は被相続人が支払うべき債務でなく葬儀を注文した相続人が支払うべき債務となるので、遺産の処分に該当します。

そのため、相続放棄をしたい場合には、葬儀の実施も見送り、最低限必要な火葬だけ行うことをお勧めします。

【事例4】被相続人の生前の医療費の支払い

【事例4】被相続人の生前の医療費の支払い

被相続人が死亡直前に入院していた場合など、生前の医療費の支払いは本来、被相続人が支払うべきものなので、遺産から医療費の支払いに当てても遺産の処分に該当しないことが多いです。

ただ、遺産から医療費を支払うことは、被相続人の他の債権に優先して、医療機関が優先的に債権回収ができることになるので、常識を超えた多額の支払いを遺産からするべきではありません。

例えば、保険適用外の治療費や入院時の個室料金(いわゆる差額ベッド代)を遺産から支出すると、遺産の処分に該当する可能性があります。

また、被相続人の入院時に相続人が連帯保証人になった場合には、医療費の支払いは相続人自身の債務も免れないことになるので、遺産から医療費を支払うと、遺産の処分に該当する可能性があります。

ただ、連帯保証人になった経緯が被相続人死亡後の連絡先の確保が主な目的であるなど、相続人の資力を当てにして被相続人の入院を認めたわけでなければ、遺産の処分に該当しない可能性の方が高いです。

【事例5】被相続人の自動車の下取り

【事例5】被相続人の自動車の下取り

被相続人が使用していた自動車を相続人の誰もが欲しがらないために、廃車の手続が必要になる場合があります。この場合、廃車によって相続人が利益を得るわけではないですし、廃車の手続きをしないで放置をしておくことはかえって社会にとって負担となるので、遺産の処分に該当しません。

しかし、下取りにより金銭を取得してしまうと、遺産の処分に該当します。

まとめ

被相続人が亡くなった後の遺産の取り扱いは、死後処理のために社会的に必要な行為であって、かつ、相続人が具体的な利益を得ない場合には、単純承認とみなされないことが多いです。

もっとも、預金の払い戻しなど形式的に遺産を取得する手続きをすると、たとえ、現金のまま保管していたとしても遺産の処分に該当する可能性が高くなります。

遺産の処分については、判断が難しいところもありますので弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

すでに遺産に手をつけてしまって「バレたらどうしよう」と悩んでいる方も何か解決策があるかもしれないので一度ご相談ください。

  1. 相続放棄できるか不安
  2. 手続きするのが面倒
船橋・習志野台法律事務所なら 相続放棄は来所不要です
  1. メールでのやり取りのみ
    でOK
  2. 支払いは着手金のみ
  3. 困難事例も対応可
まずは専用フォームより相談内容を教えてください
相続放棄相談専用フォームはこちら
船橋習志野台法律事務所|初回60分無料 土日祝日・夜間20:30まで ご相談のお問い合わせはこちら