コラム
相続放棄をしても受け取れる年金の種類について
2022.07.27
相続放棄をしても受け取れる年金の種類について
こんにちは。船橋・習志野台法律事務所です。
相続放棄をすると、相続人は死亡した被相続人の遺産を受け取ることができません。被相続人の借金などを理由に、やむを得ず相続放棄を選択する人も多いことでしょう。
しかしながら、相続放棄をしても遺族年金や被相続人の未支給年金を受け取ることは可能です。
そこで本記事では、これらの年金について受給時の注意点を踏まえながら、詳しく解説していきます。
目次
相続放棄をしても受け取ることができる年金
相続放棄をしても受給可能な年金として、遺族年金と被相続人の未支給年金の2種類があります。
遺族年金
遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者(被相続人)が死亡した時に、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。
遺族年金は遺族固有の権利に基づいて受給され、被相続人の相続財産ではありません。したがって相続放棄をしても遺族年金を受け取れます。
遺族年金はさらに「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」に分かれています。それぞれ受給条件が異なり、条件を満たしさえすれば両方の受給が可能です。
遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、国民年金に加入している被保険者(被相続人)が死亡した時に遺族が受け取れる年金です。受給対象者は、被保険者によって「生計を維持」されていた「子」あるいは「子のいる配偶者」です。
「生計を維持」とは「生計の同一性」と「収入要件」を満たしている必要があります。「生計の同一性」とは被保険者との同居や、別居中でも仕送りをしていた、健康保険の扶養親族に記載があるなどが要件です。
「収入要件」とは、前年の収入が850万円未満、または所得が655万5千円未満です。「子」は18歳到達年度の末日(3月31日)までの婚姻していない子供(障害等級1級または2級の場合は20歳未満)を指します。
支給が開始されてから子供が18歳(障害等級1級または2級の場合は20歳)になる年度の末日を経過すると、遺族基礎年金の支給は終了します。
遺族厚生年金
遺族厚生年金とは、厚生年金に加入している被保険者(被相続人)が死亡した時に遺族が受け取れる年金です。
被保険者によって「生計を維持」されていた遺族が受給対象者となります。「生計を維持」については遺族基礎年金と同様の要件です。
受給可能な遺族には優先順位があり、
- 配偶者(夫は55歳以上、受給開始は60歳から)
- 子(18歳到達年度の末日(障害等級1級または2級の場合は20歳未満)を迎えていない、かつ婚姻していない)
- 父母(55歳以上、受給開始は60歳から)
- 孫(18歳到達年度の末日(障害等級1級または2級の場合は20歳未満)を迎えていない、かつ婚姻していない)
- 祖父母(55歳以上、受給開始は60歳から)
の順番です。
遺族厚生年金は原則一生涯受給できますが、30歳未満の子のいない妻は5年間、子と孫は18歳到達年度の末日(障害等級1級または2級の場合は20歳未満)を迎えるまでの期間に限られます。
未支給年金
未支給年金とは、死亡した年金受給者(被相続人)に支給されるはずの年金のことです。年金は通常偶数月に、前月と前々月の年金が支給されているためタイムラグが生じます。
例えば5月1日に年金受給者が死亡した場合、6月に支給されるはずだった5月と4月の年金が未支給年金となります。未支給年金もまた被相続人の相続財産に該当しないため、相続放棄をしても受給可能です。
未支給年金と相続放棄
未支給年金を受け取ることができる遺族
未支給年金を受け取ることができるのは、死亡した年金受給者によって「生計を維持」されていた遺族に限られます。
「生計を維持」については遺族基礎年金・遺族厚生年金と同様の要件です。受給可能な遺族には優先順位があり、配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹・3親等内の親族の順番です。
未支給年金の受給方法
未支給年金を受給するためには、自己の名前で書類を作成して申請する必要があります。
必要な書類は、
- 死亡した年金受給者の年金証書
- 死亡した年金受給者の続柄が確認できる書類(戸籍謄本など)
- 死亡した年金受給者との生計の同一性を証明する書類(住民票など)
- 受け取りを希望する金融機関の通帳
- 死亡した年金受給者と別世帯の場合は「生計同一についての別紙の様式」
です。
未支給年金の申請と同時に、死亡した年金受給者の「死亡の届出」を提出するのが一般的です。提出先は年金事務所・年金相談センターとなります。
未支給年金を受け取る際の注意点
まず未支給年金の請求期限は5年以内です。速やかに請求手続きを行いましょう。また死亡の届出が遅れたり、死亡した年金受給者の口座が解約されていなかったりすると、本来受け取る権利のない分の年金まで支給される可能性があります。
返還義務が生じるので気をつけてください。さらに未支給年金は受給者の一時所得に該当するため、場合によっては確定申告が必要になります。
【まとめ】困ったら弁護士などの専門家に相談を
以上のように、相続放棄をしても遺族基礎年金・遺族厚生年金・未支給年金の受給が可能です。ただし手続きが必要となります。
まずは年金事務所・年金相談センターを訪れましょう。またこのような年金の問題は法律用語が多く出てきます。自分が受給対象者か戸惑う人もいるかと思います。少しでも不安が生じたら、弁護士や司法書士などの専門家に相談してみましょう。