事例
私には、2歳と4歳の子どもがいますが、夫が高圧的であるのに加えて夫の両親も私の家柄が悪いとか人格攻撃するので、耐え られなくなり、離婚を申し出ました。夫は、離婚には同意しましたが、2人の子の親権者には自分がなると言い出しました。
私は「子育てをやっていないあなたには無理」といいましたが、夫は「専業主婦で経済的な不安定なお前より、収入が安定しているし実家で両親と共に育児ができる自分
が親権者になる方が子どもが幸せ」と言って納得しません。
確かに、私は結婚して退職したので収入がないし、私の両親は実家が遠くサポートを
得るのが難しいです。こういう場合でも親権者になれるでしょうか?
解説
事例のように乳幼児の子どもの親権者の指定にとって、最も重要なのは、夫婦の同居中に子の監護を担っていたかどうかです。監護を担うとは、具体的にはいうと、授乳、 着替え、入浴、寝かしつけ、おむつ交換、食事の世話、トイレトレーニング、歯磨きの練習など、子の成長に不可欠な要素を夫婦のどちらが担っていたか、さらに、保育園・幼稚園の送迎、病院への付き添い、子と一緒に絵本読むなどの遊び相手になっていたか遊んだあとの玩具の片付けその他のしつけなどの育児の周辺項目も検討対象になります。
これらの監護の項目のほとんど全てを夫婦の一方だけが担っていたとすれば、基本的には、その監護を担っていた親(主たる監護者)が親権者に指定されやすくなります。
なぜなら、乳幼児期の子どもは独自に対人関係を作ることができず、主たる監護者に対する信頼を基礎にして、幼児期後半から就学後にかけて少しづつ主たる監護者から自立して他人に対する信頼関係を作っていくからです。
そのため、経済的理由などを根拠に全く監護を担っていなかった親を親権者に指定して、子を主たる監護者と切り離してしまうと、子どもは他人に対する信頼関係を作る基本となる主たる監護者との信頼関係が崩れてしまい、将来的な対人関係の形成に大きな悪影響を与えるからです。
今回の事例では、専業主婦である妻が子の監護を全面的に担っていたのであれば、夫が主張する「経済的理由」や「実家の両親のサポート」があったとしても、妻が親権者に指定されやすいでしょう。経済的理由は夫からの養育費の支給などである程度、担保できるし、妻側に両親のサポートが得られなくても、保育所や職場の育児休業など、両親でなくても代わりが効く項目ですが、主たる監護者との信頼関係は、このような代わりが利かない重要な要素だからです。
ただ、夫からの養育費だけで生活できない場合に、離婚後の妻の就労時間が長いのであれば、就労中の育児のサポート体制(保育所への入所、病気の時だけは両親や親族等の援助がある、病児保育の利用、その他福祉サービスの利用など)について全く無計画であれば、同居中に妻が主たる監護者であったとしても、実家で子育てを両親に手伝ってもらえる夫が親権者に指定されるかもしれません。