事例
子どもができてから夫に愛情がなくなり、子育てが一段落するまでは、離婚しないでお互い割り切って生活してきました。そして、来年の3月に子どもが高校を卒業するので、そのタイミングで離婚することで夫も納得してくれました。
ただ、離婚すること以外は何も決まっていません。今の家にどちらが住むのか、子どもは誰と住むのか、生活費はどうするのか、財産分与の仕方もわかりません。どのようにすれば、夫とスムーズに話を進められるでしょうか?
解説
離婚をすること自体に夫婦で合意できていれば、方法を間違えなければスムーズに離婚できます。大事なことは、決まっていないことについて夫婦の一方の判断だけで勝手に動かないことです。この事例でいうと、離婚が決まっているはずの3月より前に妻が子ども連れて別居してしまったり、夫名義の通帳を勝手に持っていったりすることです。
話し合いで決まっていないことを、一方的に実行すると、された方は被害者意識が芽生え、相手に報復しようと、『相手の思い通りにさせないこと』を中心に行動を取るようになります。そうすると、こちらからいくら建設的な提案をしても拒否され、離婚協議が長引くことになります。
また、経済的な面では、『取れるだけお金を取ってやろう』と相手に思われないことが重要です。養育費を求める場合には、遅くても大学卒業の22歳まで区切り、浪人した場合は延長させるなど不確定な期限を提示しないことが早期の協議成立のポイントです。財産分与について住宅ローンの残高を踏まえた提案をすることが望ましいです。ローンを無視して預貯金の2分の1を求めても、相手(夫)からすれば、老後資金が取られるという意識が強くなり、自分を守るために、こちらの提案に対する拒否反応が強くなります。財産分与では、夫婦双方の名義の資産を全て明らかにしたうえで、具体的でかつ高額すぎない金額を提示することが大事です。
離婚協議で正当な権利を主張することは、当然の前提です。ただ、協議が長引くことによる心労もあり得ることで、早期の合意成立との関係でバランスのとれた主張をすることが大事です。
これまでの解説は離婚自体に双方の合意があり、話し合いが可能であることが前提です。暴力やモラハラが激しいなど話し合い自体が困難であれば、自分の判断だけで、子どもを連れて別居することも一つの方法かもしれません。
もちろん、事前に合意のない別居は最終手段ですので、話し合いの余地が本当にないのか、慎重な判断が求められます。