事例
夫と離婚することになり、5歳の長男、3歳の長女の親権は私が取り、養育費は20歳になるまで一人5万円ずつと決まりました。また、夫名義で住宅ローンで購入した自宅には、私と子どもたちが住んで夫が家を出ていくとになりました。
ローンは夫が払い続けるので、財産分与は互いに請求しないこととしました。これで夫婦お互いに納得したので、あとは、離婚届にサインして市役所に提出するだけでいいでしょうか?
解説
離婚協議の際に未成年のお子さんがいる場合、その養育費と居住を将来に渡って確保していく必要があります。そのため、口約束だけして離婚届けにサインしても、あとから養育費を止められたり、自宅を明け渡すよう請求される可能性もあります。
そうした事態を防ぐために離婚協議書を作成する必要があります。離婚協議書には夫婦だけで作る通常の協議書と、公証役場で公証人立会のもとで作成する公正証書の2種類があります。公正証書の特徴は、養育費や財産分与・慰謝料の支払いといった金銭の給付について裁判を起こさないでも強制執行が可能になることです。
特に養育費の取り決めは子どもが成人するまでの長い間の継続的な給付を定めるもので、強制執行が可能な公正証書の作成が必要といえます。
また、今回の事例だと、夫名義の自宅に夫がローンを支払いながら、妻と子2人が住む内容になっています。これが口約束だけだと、ある日突然、夫がローンと養育費の二重払いができないと言って、ローンの支払いを止められ、金融機関から競売を申し立てられる恐れもあります。特に夫が再婚したり転職したりといった生活状況に変化が生じたときにこのような要求を突きつけられることは珍しくありません。
そこで、離婚協議書で子どもが高校、あるいは、大学を卒業するまで今の自宅に居住しローンの支払いも夫の義務であることを明記すべきです。また、妻は財産分与を放棄する代わりに夫がローン支払いを肩代わりするのですから、その旨も離婚協議書に明記すべきでしょう。そうすることで、自宅での居住は夫からの恩恵でなく、居住が妻の権利性を持ち、万が一、夫から明渡しの裁判を起こされても追い出されない法的根拠を主張しやすくなります。
このように、離婚に伴って将来に渡る給付を約束する場合は、離婚協議書を作成すべきといえます。