コラム
「相続土地国庫帰属法」のメリットとは?適用される条件や申請の注意点を解説!
2023.07.18
「相続土地国庫帰属法」のメリットとは?適用される条件や申請の注意点を解説!
2023年4月より「相続土地国庫帰属法」が施行されました。相続した土地を国家に帰属する、というのはどういうことなのでしょうか。
これは、所有者不明の土地を減らしたり、利用価値のない土地を相続して税金だけに苦しむ人を救う切り札になるかもしれない法律です。
ここでは、そのメリットはもちろんデメリットについても解説していきます。その時になって困らないよう、ぜひ参考にしてください。
目次
相続土地国庫帰属法とは
相続土地国庫帰属法は2021年4月に成立し、2023年4月から施行されている法律です。正式名称を「相続などにより取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」といいます。
文字通り相続や遺贈などで取得した土地の所有権を国庫に帰属する、つまり土地を国に引き取ってもらうことができるという法律です。
相続土地国庫帰属制度が創設された背景
親の逝去により実家の山林を相続したけれど使う予定はないし、かといって管理をしないとどんどん荒れ果ててしまう、といった悩みを持つ人も多いでしょう。
子供も地元に住んでその土地を活用するなら良いのですが、特に地方の場合若年層の都市部への流出が激しく、土地のニーズが大きく減っているという状況があります。
こうした土地は利用価値が低いとみなされるため、売ろうとしても買い手がつかず、ただ固定資産税だけがかかり続けるということになってしまいます。
このようなことを背景に、使わない土地を国が引き取って管理することで相続者の負担を減らし、将来的に何か公的な活用ができるようにしようという目的で制定されたのがこの法律です。
制度の対象となる土地の条件
対象となる土地には大きく3つの条件があります。一つ目は相続や遺贈で取得した土地であること、 生前贈与や自分で購入した土地は含まれません。
二つ目は土地が共有である場合、共有者全員が同意していること、そして三つ目は却下事由に該当しないことです。却下事由には建物が立っている、担保になっている、あるいは所有権をめぐって争いがある、といったものがあります。
また、崖下にあって土砂崩れの恐れがあったり、汚染されている土地なども認められません。
相続土地国庫帰属法の申請先
相続土地の国家帰属の申請は法務局、またはその土地を管轄する地方法務局で行います。
相続土地国庫帰属法のメリット
要らない土地を相続してしまった人にとって福音とも思える相続土地国庫帰属法ですが、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。
相続した特定の土地をピンポイントで手放すことができる
これまでは相続した財産のうち要らない土地だけを手放す、ということはできませんでした。相続放棄をすれば、その土地だけでなく他のすべての財産も相続できなくなってしまうので、仕方なく相続していたという人も多いでしょう。
この法律では要らない土地だけを国に引き取ってもらうことができるので、そうした悩みはなくなります。
引取り手を自分で探す必要がなく管理の手間を削減できる
要らない土地が多少でも利用価値のあるものなら、売却して管理の手間を省こうと思う人も多いでしょう。しかしその場合、自分で引き取り手を探さなくてはなりません。
不動産業者もなかなか手を出したがらないので、引取り手を見つけるのは大変です。国が引き取ってくれればこうした手間もかからずに済みます。
農地や山林も申請の対象となる
農地は農地法の適用を受けるため、売却先は原則として農家でなくてはなりません。山林は管理が大変で災害リスクも高いので、売却先を探すのは困難です。
このように特に売却の難しい農地や山林も対象となるのは、土地の相続者にとって大きなメリットになるでしょう。
相続土地国庫帰属法のデメリットと注意点
相続土地国庫帰属法には大きなメリットがある反面、いくつかのデメリットもあります。申請を検討する際には、デメリットについても知っておくことが必要です。
引き取りに費用がかかる
申請・引き取りは無料で行ってもらえるわけではありません。申請には手数料がかかりますし、引き取りには負担金が必要です。売却するのであれば当然お金が入ってきますが、引き取りでは逆に費用がかかる、というのは承知しておきたい点です。
審査に一定の時間がかかる
国に土地を引き取ってもらうに当たり、その土地が要件を満たしているかどうかの審査があります。最初に書類審査がありますが、場合によっては実地調査が行われることもあります。
申請書の作成・提出から審査、土地の引継ぎまでには様々な手続きがあって、時間も労力もかかるものであるというのも覚えておきましょう。
申請内容の虚偽・不正があった場合は賠償請求をされるリスクがある
申請内容にもし虚偽や不正があった場合は承認が取り消されることがあるほか、もしその土地を引き取ってしまって国に損害が生じた場合は損害賠償請求をされるリスクもあります。
相続登記も同時に義務化される
この法律の施行に伴い、相続登記が義務化されます(2024年4月以降)。それまで相続登記の義務はなかったため、所有者が亡くなった後誰が相続したのかわからない土地が多くあり、管理されないまま周囲に迷惑をかける等の問題が発生していました。
今後は相続登記が義務となったため、こうした問題はなくなっていきますが、義務化ということはペナルティも発生するので注意が必要です。
相続土地国庫帰属法はメリット・デメリットの両面をよく理解することが大切
要らない土地を相続した人はそれを手放すことができ、国にとっては所有者不明の土地や管理されない土地を減らせるということで、相続土地国庫帰属法は両者にとってメリットのある法律ということができます。
早速利用しようという人もいるかもしれませんが、ここで解説したように費用や手続きのデメリットもあることを忘れてはなりません。両方を理解したうえで相続国庫帰属法の申請手続きに進むことをおすすめします。