コラム

不動産のある遺産分割協議(調停)への対応策

2022.11.25

不動産のある遺産分割協議(調停)への対応策

不動産のある遺産分割協議(調停)への対応策

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。幣事務所で扱う遺産分割の案件の中にも解決までに数年程度を要するものがあります。

長期化する要因は、遺産のほとんどが不動産で分け方が難しい、相続人同士の関係が被相続人の生前から悪化している場合、古くなった建物や公道に面していない土地などいわゆる負の遺産を抱えている場合などです。

遺産分割協議や調停が長期化すると、様々な問題が出てきます。今回のコラムでは、遺産分割協議の長期化に伴う問題とその対応策を解説します。

不動産管理の問題の対応策

不動産管理の問題の対応策

更地があった場合

例えば、遺産の中に更地があったとすると、遺産分割協議がまとまらず所有者が決まらない状態が長く続くと、雑草が生い茂り虫がたくさんでて近所に迷惑をかけたり、隣地に草が伸びたりといった事態が生じます。

特に相続人全員がその土地から遠方に居住しているとなおさら、誰が草を刈ったり、除草剤など蒔いたりするのかが問題となります。

基本的には、法定相続分にしたがって、草刈りなどを依頼する業者の費用を分担することになります。各相続人が自分の資産からの持ち出しを回避したいなら、遺産の中の銀行預金の一部払い戻しをして、費用を賄うこともできます。空き家になっている建物の修繕費用も同様です。

管理費用を捻出できない場合

では、相続人同士で話し合いができず、管理費用を捻出できない場合はどうすればよいでしょうか? もっとも簡単な方法は問題となる不動産を売却してしまうことです。

売却してしまえば、相続人は所有者でなくなり維持管理の責任から解放されるうえ、まとまった現金も入ってきます。ただ、相続人同士だけで共同で売却しようとする場合、まだ、遺産分割の協議が成立していないので、売却代金の分配方法が分からず売却代金の管理の仕方が問題となります。

そこで、弁護士へ依頼すれば、遺産分割協議がまとまるまで弁護士の預り金口座で保管することができます。

なかなか売れない場合

不便な土地であったり、古い建物でなかなか売れない場合で、かつ、維持管理費用の分担について相続人同士で話がまとまらない時は、どうすればよいでしょうか? 

正直、このような状態になってしまうと、なかなか妙案がありません。だからこそ、早く遺産分割協議をまとめる努力をすべきでしょう。

一般論として遺産分割の調停を申し立ててしまうと、その時点で数か月単位での早期解決は難しくなります。ただ、迷っていて動かない状態が半年や1年も続くくらいなら、早期に調停の申立をして、遺産分割の成立に向けて動くべきでしょう。

その他、不便な土地や建物については無償または格安で第三者に賃貸する方法もありますが、遺産分割協議成立後も賃貸が継続するのと、そもそも借りてくれる人がすぐに見つかるわけでもなく、やはり、これも妙案とはいえません。

不動産の家賃について

不動産の家賃について

被相続人が生前に賃貸していた不動産については、被相続人死亡後も賃貸は継続して家賃収入が発生します。そのため、その家賃を相続人の誰が管理するのかが問題となります。理論上、被相続人死亡後に発生する家賃は遺産ではないため、毎月の家賃収入が発生するたびに、法定相続分にしたがって分配することになります。

しかし、遺産分割協議が決まるまでの間、毎月、家賃を分配して各相続人の銀行口座へ送金するのはかなりの負担です。そのため、管理会社が入って賃貸経営をしている場合、家賃の分配が発生すると管理手数料が値上げされることが多いです。

また、遺産である他の不動産の維持管理費のために収益不動産の家賃収入を充当できれば、相続人の負担は軽減されますが、毎月ごとに分配してしまえば、それもできません。

そのため、家賃については誰かひとり、管理者を決めて、定期的に残高を他の相続人へ報告する仕組みを作るのが望ましいでしょう。この場面でも必要とあれば、弁護士の預かり金口座で管理することもできます。

相続開始後に不動産を賃貸に出すことはできるか

相続開始後に不動産を賃貸に出すことはできるか

相続開始後に遠方にある空き家や更地を賃貸に出すことはできるでしょうか?

賃貸に出すのは、相続人全員の同意があるか、相続分の過半数の同意によって可能です。賃貸後の家賃管理は、先に述べた通りで、法定相続分に沿って分配するか、誰か1人が管理をして、遺産分割成立時にまとめて清算することができます。

ただ、賃貸に出してしまうと、遺産分割成立後に当該不動産を取得した相続人は自らの意思だけで賃貸借を終わらせることはできません。なので、自分でその不動産を使いたいと思っている場合には、賃貸には出すべきではないでしょう。ただ、特別に期限を定める賃貸借ができる場合もあるので、その方法を活用する余地はあります。

相続税の納税について

相続税の納税について

遺産の総額が5000万円とか1億点以上の規模になる場合、相続税の納税が必要となる可能性が高いです。そして、相続税の納税は被相続人が亡くなってから10か月以内にすることが原則なので、その10か月を過ぎて納税ができないと、延滞税が発生します。

つまり、遺産分割協議や調停が長期化して、10か月を過ぎると延滞税が発生して、相続人の負担が増えてしまいます。

これを避けるためには、暫定的な遺産分割協議の案を作って、これに基づいて納税をすることです。税理士に相談をすれば、うまくやってくれるでしょう。そして、本当の遺産分割が成立した時点で各相続人が事前に納税した分と実際に成立した遺産分割に基づく納税分の差額を清算することになります。

遺産分割の長期化へは柔軟な姿勢が大事

これまで述べたきたように、遺産分割協議や調停の長期化は、相続人全員の負担が結果として増えてしまうことになります。それを避けるためには、遺産本体の話し合いでは譲れない部分があることは差し置いて、細かいところではいたずらな自己主張は避けて、柔軟な話し合いの姿勢が大事でしょう。

取得希望のない土地については、思い切って遺産分割成立前に売ってしまうことも選択肢として考えるべきですし、不便な土地はこの際、賃貸に出して、賃借人に管理を任せるというやり方もあります。

そうした工夫を凝らしても、不便な不動産の維持管理費の負担からは解放されないことがあります。そのような事態から少しでも早く解放されるためには、過去のトラブル等は水に流して遺産分割の解決に注力する姿勢が大事でしょう。弁護士へ相談することで事態が打開することも珍しくありません。

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