コラム

借地上の土地と相続の関係性、注意点も解説!

2023.10.17

借地上の土地と相続の関係性、注意点も解説!

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。

相続の対象となる典型的な財産は不動産ですが、土地も建物も被相続人が所有していれば、通常の相続手続きや遺産分割の協議で対応できます。

ただ、土地と建物のいずれかが被相続人以外の第三者の所有である場合、借地権が発生し、対応が複雑になります。特に建物が古く空き家になっている場合は、今後、解体するのか、使用するのか、判断が難しくなります。

今回のコラムでは遺産に借地が絡む場合の問題点を整理して、対処の方法を解説します。

被相続人が他人の土地に建物を所有する場合

被相続人が他人の土地に建物を所有する場合

被相続人が他人の所有する土地上に建物を所有して居住していた場合、その土地に借地権が設定され、被相続人は土地所有者に地代を払っていたことになります。

そのため、相続開始により、相続人は被相続人名義の建物を存続させる根拠となる借地権を相続することになります。

そのため、被相続人名義の建物が存続する限り、土地所有者に対して、地代を払い続ける必要があります。この点、建物を借りて居住していた被相続人が死亡した際には解約の手続で家賃の支払いを免れるのと異なります。

何もしないと地代を払い続ける可能性がある

建物を壊さない限り、地代を支払い続けなければならないのでしょうか?そもそも、借地権がいつまでも存続するかが一番の問題です。

土地と建物の所有者が異なり、借地権が設定されるケースは、ここ最近はそれほど多くなく、地価が上昇し続けた時代に地主が所有権を手放したくなくて借地権を設定し、借地人の側としても土地購入価格を抑えて建物を所有できることにメリットがあった昭和以前の時代に盛んでした。

そのため、今の時代になって借地権を相続する時には建物は築4、50年以上になっていることが多く、借地権を設定する契約書がないことが普通です。

そうすると借地借家法という法律に従って、期間の定めをしなかった借地権とみなされ、設定当初は30年とされ、その後は自動更新により10年ごとに更新されます。ゆえに何もしなければ、この更新のタイミングまで、地代が発生し続けることになってしまいます。

借地権の相続人ができること

借地権の相続人ができること

では、借地権を相続した人は、成すすべなく、借地借家法上の更新時期まで、地代を払い続けなければならないのでしょうか?

自ら建物を解体する

これを避けるためにまず、できることは、自ら建物を解体することです。借地権は建物を土地上に存続させる権利なので、建物を解体すれば自動的に借地権は消滅して、地代の支払い義務も消滅します。

しかし、建物を解体するには150万円から200万円、建物内の残置物の状況次第では、300万円以上もかかることがあります。これくらいの費用の水準になると、地代数年分以上になり、解体は経済的に不合理な手段といえそうです。

土地所有者から土地を購入する

そこで、遺産に預貯金が豊富にあったり相続人の自己資金に余裕があれば、土地所有者から土地を購入する方法があります。もともと、借地権を所有しているので、土地所有者は建物をどかすことができず土地所有者が把握する経済的価値は土地の本来の価格の4割程度しかないことが普通です。

言い換えると、借地権者は、所有する建物の敷地を通常の更地価格の4割程度で購入することができます。そして、敷地を購入すれば、本来の更地価格から建物の解体費用分を控除した価格で第三者へ売却できるので、最終的に利益を確保できます。

 逆に土地価格が高額などの理由で購入資金がない場合には、土地所有者に建物を買い取ってもらうか、無償で引き受けてもらうという方法もあります。借地借家法では、借地権の更新時期にならなければ、土地所有者に対する建物買取請求権が発生しません。

ですが、土地所有者からすれば、建物を安価、または、無償で取得すれば、土地と建物を一体として第三者へ売却して利益を確保できるので、買取請求に応じることは珍しくありません。

土地所有者が土地の譲渡や買取を拒否した場合

では、土地所有者が土地の譲渡(売却)や建物の買い取り、いずれも拒否する場合はどうすればいいでしょうか? 

この場合には建物を第三者に賃貸して地代を稼ぐ方法がありますが、築年数が古いとリノベーションなどをしないと貸すこと自体が困難となりそうです。

そうすると、借地権付き建物の扱いが得意な不動産業者に安く買い取ってもらうか無償で引き受けてもらうなどして、地代の支払いから解放される方法があります。さらに、最終手段として相続放棄がありうるかもしれません。

被相続人が他人の建物の敷地を所有している場合

この場合、さきほどまで述べてきた事例とは逆なので、建物所有者から引き続き地代をもらうことができます。

借地権を相続する場合は、所有する建物に居住していた被相続人が死亡して空き家になっていることが多いですが、被相続人が土地所有者の場合は、借地権者は引き続き建物に居住していることが多く、地代を貰い続けられることの方が多いです。

ただ、借地権者の側にも相続が発生すると建物が空き家となってしまい、地代の支払いが滞ることがあります。その場合は、借地権を相続する場合とは逆の立場になりますが、自ら建物の買い取りを申し出るか、あるいは、借地権者への土地売却を申し出ることができます。

借地権者がいずれも拒否する場合には、地代を請求しつつ、地代の滞納が続く場合には、借地権設定契約を解除して、建物収去を求める裁判を提訴することができます。

どちらかと言えば、借地権を相続する方が選択肢が多い

どちらかと言えば、借地権を相続する方が選択肢が多い

借地権を相続する場合、土地所有者に対して建物を買い取ってもらう(又は無償で引き取ってもらう)か、あるいは、自ら敷地を購入するかの選択権があります。

法律上、土地所有者はいずれも拒否して地代を貰い続けることができるものの、その場合、借地権者には相続放棄、または、地代支払いをいったん停止するという対抗手段を取れます。

土地所有者は、借地権者に相続放棄されると自ら解体できない建物が乗っかった土地を所有しつづけ、かつ地代ももらえないため、不経済な土地の所有を強いられてしまいます。

後者の地代支払いの停止に対しては訴訟提起で回収する余地がありますがその費用をかけるくらいなら、安価で建物を買い取る法が合理的でしょう。

これに対して、借地権の負担のある土地を相続した場合、借地権者が地代を払い続ける限りは、土地所有者は何も手だしができません。

したがって、借地権の方が敷地よりも遺産としての価値が高いです。不動産を相続する際は、建物も相続できるのか、建物だけなのか(借地権)、土地だけなのか、をきちんと確認しましょう。

まとめ

ここまで土地と建物のいずれかが第三者の所有になっている借地権と相続の関係について解説してきました。

対応策として、建物の解体、土地の購入などもありますが、所有者に拒否される可能性もあります。

そのような時に最終手段として相続放棄もできますが、いずれにしても複雑な対応となりますので弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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