コラム

相続放棄を妨げる?単純承認の判断基準

2024.03.27

相続放棄を妨げる?単純承認の判断基準

相続放棄申述の有無を確認する「照会」とは?手続き方法と注意点を解説

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。

相続放棄に関するご相談で最も多いのは、どのような行為が単純承認とみなされ、相続放棄が認められなくなるのか、という点です。

単純承認の判断基準については確立した基準や最高裁判所の判例でも明示的に示した解釈論はなく、多くの方が相談に来る要因となっています。しかし、注意することで、単純承認の可能性を減らすことができます。

本コラムでは、単純承認の可能性を減らすための注意点について解説いたします。

単純承認の定義

相続放棄の条件として、以下の2つがあります。

  • 被相続人が亡くなってから(または借金の存在を知ってから)3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をすること
  • 相続を承認しないこと

「相続を承認しないこと」については、明示的に承認をしなくても、遺産である不動産の相続登記をして自分名義に変更する、被相続人名義の預金を払い戻して自分の口座へ入金するといった相続人であることを前提とした行動をすると、承認したとみなされてしまいます。これを「単純承認」といいます。

単純承認の判断基準

被相続人の通帳やカード

単純承認の判断基準は確立しておらず、個別具体的なケースでの確定的な判断は困難です。しかし、以下の点に注意することで、単純承認の可能性を減らすことができます。

遺産を使って利益を得る行為は単純承認に該当する可能性が高い

民法では、相続人が遺産を処分すると、相続を承認したとみなされます。これは、遺産を使うことで自ら相続人として振る舞ったと評価され、後から相続放棄する矛盾した行為は許されないという考えに基づいています。

具体的には、以下の行為が単純承認に該当する可能性があります。

  • 被相続人名義の預金を払い戻して自分の預金に入れる
  • 相続登記をして遺産である不動産を自分(相続人)のものにする
  • 被相続人の貴金属類や持ち物を売却して代金を自分のものにする
  • 被相続人の賃貸借契約を承継する
  • 老人ホームの入居金の返還を受け取る

これらの行為は、遺産を自分のものとして扱っているため、相続人としての立場を明確に示していることになります。

相続人の知らない所での遺産の減少は単純承認にならない可能性が高い

被相続人の死後に遺産が減った場合でも、それが相続人の行為が原因でなければ、単純承認に該当しない可能性が高いです。

以下に、単純承認に該当しない可能性が高いケースと、該当する可能性があるケースを具体的に説明します。

単純承認に該当しない可能性が高いケース

  • 大家や管理会社からの死亡連絡遅延による光熱費支払い
  • 被相続人自身の病気療養費
  • 株価下落などの経済状況悪化
  • 天災地変による被害

被相続人の生前の医療費と単純承認

被相続人の死後に、生前の医療費が請求されることがあります。これを被相続人の財産から支払っても、それは生前の必要不可欠な行為の対価であるため、単純承認には該当しません。

保険外の差額ベット代金などは、必須の支出とは言い切れません。これを相続債務として遺産と共に引き継いで弁済した場合、単純承認に該当する恐れがあります。

葬儀費用と単純承認

葬儀費用は、相続放棄と単純承認を考える際に難しい問題の一つです。

法律上、葬儀は被相続人ではなく相続人が主催するものとされています。そのため、葬儀費用を遺産から支払うことは、相続人が遺産を自分のものとして消費しているとみなされ、単純承認に該当する可能性があります。

しかし、死者埋葬は法律上の義務であり、火葬までの遺体の保管費用は避けられません。

相続人が生活に余裕がない場合は、遺産から最低限の費用を支払うのはやむを得ないと判断される可能性がありますが、葬儀費用を遺産から支払うことについて不安な場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺留品の処分について

遺留品の処分は、相続手続きにおいて重要な問題の一つです。特に、以下の点について注意が必要です。

被相続人が賃借していたアパートの居室内の残置物

基本的には、ほとんど使えないものなので、大家側に委ねたり、相続人が自費で処分しても問題ありません。

ただし、残置物の処分費用を遺産から支払う場合は、単純承認とみなされる可能性があります。相続放棄をすれば、残置物処分の義務を負わないので、あえて遺産から処分費用を支払う必要はありません。

被相続人が使用していた自動車の廃車

被相続人が使用していた自動車を廃車にすることは、価値がない自動車を正規の手続で処分して相続人が利益を得ない場合は、単純承認に該当しません。自動車の名義変更をせずに放置すると、自動車税や軽自動車税の支払い義務が発生する可能性があるため、注意が必要です。

まとめ|単純承認の判断は難しい

単純承認の判断は、確立した最高裁判所の判例がなく、個々の状況によって異なるため、非常に難しい問題です。借金が多く相続放棄が避けられない場合でも、被相続人の遺留品にはなるべく手をつけず、速やかに相続放棄の手続に着手することが無難です。

葬儀費用や残置物処分費用は、周囲に迷惑をかけないための最小限の費用を遺産から拠出する必要があります。

借金の有無は、被相続人の自宅内を調べたり通帳記帳を見れば、消費者金融からの借入は容易に判明できます。借金がないのに安易に相続放棄をするのはもったいないので、十分に調べてから相続放棄の要否を検討しましょう。

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