コラム
アパートを解約してしまったら相続放棄できない?
2023.11.15
アパートを解約してしまったら相続放棄できない?
亡くなった人がアパートを賃借して居住していた場合、大家や管理会社から処分するよう言われたり、家賃が発生するため、「早く解約してしまいたい」と思うことがあるでしょう。
ただし、アパートを勝手に解約してしまうと相続財産を単純承認したとみなされ、負債があった場合でもすべて相続しなければならなくなる可能性があるので注意が必要です。
この記事では、被相続人がアパートに居住していた場合の対処法について解説します。
目次
アパートを解約してしまうと相続放棄できない?
被相続人がアパートを賃借していた場合があります。「賃料が発生するので解約したい」と考えるかもしれませんが、アパートの契約を勝手に解除すると相続を単純承認したとみなされ、相続放棄できなくなる可能性があります。
単純承認とは、資産も負債もすべての財産を相続することです。相続財産の中に莫大な負債があった場合でも、単純承認してしまうと相続放棄できなくなります。
相続放棄をする前はもちろん、相続放棄をした後もアパートを相続した人が対処をするので、勝手にアパートを解約しないようにしましょう。
アパートを解約しても問題ないとされるケース
アパートを勝手に解約すると単純承認とみなされる可能性がありますが、以下のケースであればアパートを解約しても問題ないとされています。
- 被相続人の資産の減少を防ぐための行為
- アパートの価値(返還される敷金がない又は少ない)が低い場合
ただし、必ずしも問題ないとされるかどうかはわからないため、弁護士に相談することをおすすめします。
被相続人の資産の減少を防ぐための行為
アパートの賃料が、被相続人の預貯金など相続財産のなかから支払われている場合、アパートを解約しても問題ないとされています。
相続財産の減少を防ぐための保存行為としてアパートを解約したとみなされれば、単純承認とはならない可能性があります。
アパートの価値が低い場合
アパートの価値が低い場合も、解約しても問題ない場合があります。
アパートの賃料が低い場合、アパートそのものに価値がないと判断され、単純承認とみなされない可能性があります。
アパート賃貸借の処理の注意点
アパートの賃貸借で単純承認を避けるために以下の点に注意しましょう。
- 合意の上での解約は避ける
- 電気・ガス・水道は解約しても問題ない
- 遺品の処分も単純相続とみなされる可能性がある
- 未納分の家賃は支払わなくても問題ない
- 相続財産管理人を選任する
- 弁護士に相談する
合意の上での解約は避ける
アパートをどうしても解約したい場合、大家や管理会社と合意の上で解約すると単純承認したとみなされる可能性があります。
しかし、大家や管理会社から一方的に契約を解除するという形であれば、単純承認とみなされない場合もあるため慎重に対処しましょう。
電気・ガス・水道は解約しても問題ない
アパートの電気やガス、水道は解約しても遺産の処分とはみなされず、単純承認したことにはならないので解約しても問題ないとされています。
遺品の処分も単純承認とみなされる可能性がある
アパートの中の家具や遺品も、勝手に処分してしまわないようにしましょう。
大家や管理会社から、アパート内に残された遺品や家財道具を処分するよう求められる場合があります。ただし勝手に処分してしまうと単純承認したとみなされるので、遺品には手をつけないでおくことが望ましいです。
未納分の家賃は支払わなくても問題ない
アパートの家賃に未納分がある場合、家賃を支払っても単純承認とはみなされないとされています。逆に、未納分の家賃を支払わなくても問題にはならないので、支払う必要はありません。
ただし、アパート賃貸借の連帯保証人になっている場合は、相続放棄をしたとしても賃料を支払う必要があります。
相続財産管理人を選任する
自分以外の相続人全員が相続放棄をしたり、相続人が自分1人しかいなかったりする場合は、アパートを相続放棄することができません。
その場合でもアパートを相続放棄したい場合は、相続財産管理人を選任するという方法があります。
相続財産管理人は、裁判所に必要書類を提出して選任の申立てをします。
もっとも、相続財産管理人に遺産の処分を依頼するためには、相続財産の金額にもよりますが20万円〜100万円程度の依頼費用が必要であり、通常はこの手段は取らないでしょう。
弁護士に相談する
アパートの相続や処分について、場合によっては単純承認とみなされる可能性があります。解約しても問題ないとされているケースでも、アパートの価値や解約方法によっては単純承認とみなされてしまうこともあります。
自己判断せず、弁護士に相談して対処を決めるのがおすすめです。
まとめ
相続財産にアパートが含まれている場合は、勝手に解約したり、アパートの中の家財道具や遺品を処分したりすると単純承認とみなされる可能性があります。
アパートの価値が低い場合は解約しても問題ないとされる可能性もありますが、確実ではありません。