コラム
保佐人は相続で何ができる?ケース別に解説
2022.12.09
保佐人は相続で何ができる?ケース別に解説
保佐人や被保佐人という言葉をご存じでしょうか。認知症などの原因により、判断能力が著しく不十分であると家庭裁判所で判断された人を被保佐人と呼びます。
被保佐人をサポートする立場にあるのが保佐人です。保佐人は、被保佐人が遺産分割などを行う際に、同意権や取消権を持っています。
ここでは、相続において保佐人ができることについて解説していきます。
目次
相続人に被保佐人がいる場合
保佐人にできること
保佐人は、被保佐人が行う一定の法律行為に対して同意権と取消権を持ちます。さらに、申し立てにより代理権が付与される場合もあります。
保佐人の同意が必要となることを同意権、保佐人の同意なしにされた行為について取り消しができることを取消権といいます。
「一定の法律行為」については民法第13条1項に定められており、ここに相続の承認、相続放棄、遺産分割も含まれます。
保佐人の同意が必要
相続人に被保佐人がいる場合、相続に関する行為には保佐人の同意が必要となります。被保佐人が不当に相続放棄を求められる・認知症のために遺産分割協議が進められないなどといったケースにおいて、被保佐人が不利益を被らないよう保佐人は配慮しなければなりません。
基本的には、法定相続分を被保佐人が確保できるように協議するといった形になります。また、家庭裁判所の審判によって被保佐人に代理権が付与されている場合、保佐人は被保佐人のために遺産分割を代理で行うことができます。
相続人に被保佐人が居る場合の必要書類
被保佐人の遺産分割や相続放棄にあたっては、
- 遺産分割協議書
- 後見登記事項証明書
- 遺産目録
- 不動産の全部事項証明書
- 預貯金通帳のコピー
などが必要となります。
遺産分割協議書に被保佐人が署名押印した後、保佐人本人が同意の旨を記載し署名押印するか、別で同意書を作成する形になります。
保佐人も相続人である場合
利益相反行為となり同意を与えられない
被相続人の配偶者が被保佐人・子供が保佐人となっているケースなど、保佐人と被保佐人の両人が相続人となった場合、保佐人は被保佐人の相続に関して同意権を行使することができません。
また、遺産分割の代理権が保佐人に付与されている場合でも、被保佐人に代わって遺産分割協議を行うことはできません。
こういったケースでは、保佐人と被保佐人は一方の利益が片方の不利益になりうる「利益相反」の関係になります。
保佐人が自分の相続分を多くし、被保佐人の相続分を減らしたり、自分は相続放棄をしないのに被保佐人にだけ相続放棄をさせたりというようなことがあってはいけないため、保佐人としての権利が制限されるのです。
臨時保佐人の任命が必要
保佐人と被保佐人の双方が相続人となる遺産分割については、保佐人が臨時保佐人の選任申し立てを行う必要があります。
臨時保佐人は家庭裁判所で選任された第三者として、保佐人に代わって被保佐人の遺産分割に対する同意を与えたり、遺産分割協議を行ったりすることになります。
ただし、保佐監督人が選任されている場合においては臨時保佐人の選任が不要です。保佐人の仕事が適正に行われているかどうかを確認する人のことを保佐監督人といい、保佐監督人は保佐人に代わって被保佐人が行った遺産分割に対して同意を与えることができます。
相続手続きの代理権がない場合
代理権付与が必要
保佐人には被保佐人に対する一定範囲内の同意権と取消権が与えられていますが、法律行為を被保佐人に代わって行うことのできる代理権については、原則として行使できないことになっています。
相続に関しては被保佐人本人が遺産分割協議に参加し、その決定内容に対して保佐人が同意を与える形になります。
ただし、民法876条の4第1項において定められている通り、代理権付与の申し立てによって審判で認められた場合、保佐人は特定の行為において代理権を行使することができます。
保佐人に相続手続きの代理権がなく、代理権を必要とする場合、裁判所に申し立てを行います。代理権の付与には、具体的に行為を特定することや、被保佐人の同意があることが条件とされています。「本人の不動産、動産等に関する管理・処分」といったような、包括的な代理行為は認められていません。
代理権の申し立て方法
代理権の申し立てには、申立書と代理行為目録という書類を使用します。
申立書には申立人(保佐人)の署名押印とあわせて、同意書部分に被保佐人の署名押印が必要となります。代理行為目録には法律行為が一覧としてまとめられており、被保佐人に代わって行う必要のある項目にチェックを入れて提出します。
代理権の申し立てについては、保佐開始の申立てと同時に行うことも可能ですが、保佐が開始された後に行うことも可能です。
相続における保佐人の役割について知っておきましょう
被保佐人が相続人になると、基本的に保佐人は同意権を行使する必要があります。しかし、保佐人も相続人となった場合にはその権利自体が無効となることがわかりました。また、代理権の申し立てが必要となる場合もあります。
それぞれのケースについて把握し、いざというときに困らないよう事前に備えておきましょう。代理権の申請など不明点があれば弁護士に相談するのもおすすめです。