コラム
相続放棄後でも生命保険金は受け取れる!税金の計算方法についても解説
2023.08.22
相続放棄後でも生命保険金は受け取れる!税金の計算方法についても解説
被相続人の遺産よりも負債の方が大きく、相続放棄をするというケースは少なくありません。しかし、放棄したことで生命保険まで受け取れなくなるのかは気になるところです。
こちらでは、相続放棄をした後で生命保険金を受け取ることができるのか、受け取った場合には税金や非課税枠がどうなるのかについて解説していきます。
目次
相続放棄をした後でも生命保険金を受け取ることができる
相続放棄後でも、生命保険金を受け取ることは可能です。しかし、無条件で受け取れるわけではありませんので、相続放棄をした場合と、していない場合の違いについて理解しておいた方がよいでしょう。
原則保険金の受取人は固有財産として保険金を受け取れる
生命保険金は、法律上は相続財産ではなく、受取人固有の財産として扱われます。つまり、受取人として相続放棄をした人を指定している場合や「相続人」と指定している場合には、原則相続放棄後も保険金の受け取りが可能です。
税制上「みなし相続財産」となり相続税の課税対象になる
一方で、税制上は生命保険金もみなし相続財産として扱われます。従って、保険金の受け取りが可能といっても、保険金を満額受け取ることができるとは限りません。
被相続人受取の契約の場合は保険金を受け取ることはできない
なお、生命保険金の中にも、相続放棄後に受け取ることができないものがあります。受取人が「相続人」となっている場合、法定相続人であれば相続割合に応じて分割で保険金を受け取ることが可能です。
しかし、受取人が「被相続人」になっている保険金に関しては、被相続人固有の財産とみなされ、相続財産として扱われます。相続放棄をした人は相続人ではなくなるため、このケースでは受け取ることができません。
生命保険金を受け取る際の税金と非課税枠
生命保険を受け取る際、相続税についても考えなければなりません。相続税は相続放棄をしたかどうかで計算方法が異なりますので、注意しましょう。
生命保険金は相続財産とともに相続税の課税対象となる
生命保険金は税制上はみなし相続財産の為、相続税の課税対象となります。たとえ、相続放棄をしていても、相続税の基礎控除は適用されますので、控除範囲内の金額であれば、保険金を満額受け取ることが可能です。
しかし、基礎控除額を超えている場合には、相続放棄後でも相続税の申告と納付を行わなければなりません。
受取人に相続放棄者がいても非課税枠は利用できる
生命保険金に関しては、基礎控除とは別に非課税枠が設けられています。これは500万円×法定相続人の数で算出されますが、相続放棄者がいる場合でも法定相続人としては数えられます。
例えば、法定相続人が3人、内1人が相続放棄をしている場合には、非課税枠は500万円×3人=1500万円です。
相続放棄者の受取額に非課税枠は適用できない
一方で、相続放棄者の受取額に対しては非課税枠が適用されず、生命保険の受取額の比率に応じて、放棄していない相続人が按分して適用することになります。
例えば、法定相続人が3人いてAが2000万円、Bが1000万円、Cが2000万円の生命保険を受け取り、かつCが相続放棄をしていたとします。この場合、非課税枠は500万円×3人=1500万円ですが、Cは相続放棄をしているので対象外です。
残ったAとBで1500万円の非課税枠を適用しますが、AとBで保険金の受取額が2:1となっているため、非課税枠も同じ比率でAに1000万円、Bに500万円適用されます。
相続放棄後に生命保険を受け取る際の注意点
相続放棄をした後に生命保険を受け取る場合は、いくつか気をつけておくべきポイントがあります。以下に、具体的に注意すべき点について見ていきましょう。
被保険者と契約者が違う場合などはかかる税金が変わる
被保険者と契約者が同一人物の場合は相続税が発生しますが、別人物の場合にはかかる税金が変わってきます。
まず、被保険者と契約者が異なり、契約者が受取人と同一人物の場合には、受取保険金は一時所得として所得税や住民税の課税対象になります。一方で、契約者、被保険者、受取人がそれぞれ異なる人物の場合には、税金は贈与税です。
それぞれに控除額や税率、計算方法が変わってきますので、保険の契約内容に目を通しておきましょう。
入院や手術に対する補償や還付金は受け取ることができない
同じ保険金でも、入院や手術に対する補償である医療保険金や還付金は、被相続人の財産になります。当然、相続財産になりますので、相続放棄をした場合には受け取ることができません。
保険金の受取人が誰になるのかをきちんと確認した上で相続放棄や保険金受取の手続きを進めなければ、保険金を受け取れなくなる可能性もあります。気をつけましょう。
相続放棄後の生命保険金に関する手続きは専門家に相談を
このように、相続放棄の後では、生命保険金の受取にも条件がありますし、税金面でも違いが見られます。
法律的な手続きや税金関係の計算を個人で行おうとしても、専門的な知識が必要ですし複雑な作業になりがちです。
まずは、弁護士など専門家に相談してからこれらの手続きを進めるようにした方が間違いもなく、安心できます。