コラム

【相続放棄と単純承認②】遺産に該当しない財産と老人ホーム

2023.08.22

【相続放棄と単純承認②】遺産に該当しない財産と老人ホーム

【相続放棄と単純承認②】相続放棄しても受け取れるものって?

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村亮です。

前回は相続の単純承認とみなされ、相続放棄が出来なくなってしまう問題について特集いたしました。

後半は、遺産に該当しないため自由に処分・受領できる財産についての説明や、相続放棄と老人ホームの関連性について解説をいたします。ただ、同じ金銭であっても遺産とみなされるものもあるので、その区別についても併せて説明いたします。

遺産に該当しない財産

もともと遺産に該当しない財産は、被相続人の債権者が債権回収の当てにできない財産であるため、これを受領しながら相続放棄をすることが両立します。

遺産に該当するかどうかの区別は、被相続人が仮に生きていれば取得していたはずの財産であったかどうかが基準になります。

このような区別を意識できると、効果的な相続放棄を選択することができるでしょう。

1.不動産の家賃

1.不動産の家賃

被相続人がアパートを所有していて家賃収入がある場合、死後の家賃については、遺産に含まれません。家賃は遺産となる不動産とは独立して発生する債権となるので、各相続人へ法定相続分にしたがって自動的に分配される扱いになります。

例えば、アパートの家賃収入が1か月20万円あったとして、被相続人の死後3か月が経過していると死後の合計家賃60万円は相続人が3名いれば1名20万円ずつが自動的に分配される形になります。なので、家賃収入で得た金銭を使っても、遺産の処分に該当しません。

もっとも、相続放棄をするとアパートの所有権を相続できないので、受領した家賃は、アパートを相続した他の相続人に返還する必要があります。

2.年金

2.年金

被相続人の死亡により、その配偶者が遺族年金を受給することになれば、遺族年金は相続人である配偶者に固有の受給権があるので、遺産に該当しません。そのため、配偶者は受給した遺族年金を自由に使いながら、相続放棄をすることができます。

これに対して、被相続人自身が受給していた国民年金や厚生年金が支給の時期のずれで死後に相続人が受給できる場合があります。

いわゆる未払い年金というもので、これは遺産に含まれるのでこの未払い年金の受領の手続きをすると遺産の処分に該当することになります。なので、相続放棄をしたい場合には、未払い年金は受け取られないようにしましょう。

3.生命保険金、死亡退職金

3.生命保険金、死亡退職金

被相続人が契約していた生命保険が死亡により相続人が受領することになった場合、この生命保険金は遺産からでなく保険会社からの支払いになるので、遺産とはみなされません。

そのため、生命保険金を受領しても相続放棄ができます。

同様に会社等に在職中に死亡した際に相続人に支給される死亡退職金も、相続人の固有財産となり、遺産との扱いはうけません。なので、相続放棄をしても死亡退職金が受け取れる可能性が高いです。

4.お墓

5.お墓

市営霊園やお寺などで被相続人に利用権があるお墓について、相続人が承継の手続をすることがあります。お墓は被相続人の財産ですが、民法では祭祀承継については、財産承継とは区別する扱いをしているため、お墓を引き継いでも遺産の処分には該当しません。

お墓は普通の財産と異なり複数の相続人で平等に分配することが困難であるため、財産の相続とは区別された取り扱いが必要だからです。

そのため、相続放棄をしても、引き続き、お墓の管理を被相続人から引き継ぐことができます。

老人ホームの入居金について

4.老人ホームの入居金

被相続人が老人ホームへ入居後亡くなった場合、老人ホームの入居金は、その後の遺族や相続人による遺産分割の対象となります。

そのため、相続人が入居金の返還手続きを実施すれば、その時点で遺産を処分したとみなされ、相続放棄ができなくなります。入居金の返還手続き後、金銭を保管していたとしても、返還手続きを行うこと自体が相続人としての振舞いとみなされ相続放棄ができなくなる可能性が高いので注意が必要です。

相続放棄と単純承認の選択肢と影響

相続放棄と単純承認それぞれの選択肢の影響は各個人の状況や、相続財産の性質によって異なります。それぞれのメリットデメリットをしっかりと知ったうえで慎重に検討しましょう

相続放棄が老人ホーム入居金に与える影響

  • 相続財産や負債を受け継がずに放棄できるため、老人ホームの入居金の支払い義務も放棄できる
  • 遺産分割において、相続人の割合や分け前が変動する可能性がある
  • 相続人としての法的地位を放棄するため、将来的な遺産の分配に影響が出る場合がある

単純承認が老人ホーム入居金に与える影響

  • 相続財産や負債をそのまま受け継ぐため、老人ホームの入居金の支払い義務も受け継がれる
  • 入居金が高額な場合、相続財産全体に対して入居金の支払いが占める割合が大きくなることがある
  • 相続財産の価値が減少し、他の遺産分割に影響を与える可能性がある
  • 入居金の額や支払いの義務に対する家族間の意見の相違が生じる可能性がある

相続放棄、老人ホーム入居金、単純承認などに関する情報を総合的に理解し、選択肢を検討する際には、専門家のアドバイスを受けることが大切です。

専門家にアドバイスやサポートを依頼する

専門家に相談することで、相続放棄や老人ホーム入居金、単純承認などに関して法的な観点から適切なアドバイスを受けられるため、法的リスクを最小限に抑えることが可能となります。

弁護士は各個人の状況に応じて、最適な選択肢を提案いたします。

まとめ

今回は、遺産に該当しないため自由に処分・受領できる財産についての説明や、相続放棄と老人ホームの関連性について解説をいたしました。

遺産に該当しない財産の扱いや、老人ホーム入居金や相続放棄の選択は、将来の暮らしや家族の状況に大きな影響を及ぼす重要な決定です。法的な専門家のアドバイスを受けることで、適切な判断を行うことができます。

個々の状況や法的な側面を慎重に考慮し、必要ならば弁護士の専門知識を頼りにすることが賢明でしょう。

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