コラム
相続放棄が周りの人に与える影響とは
2022.09.16
相続放棄が周りの人に与える影響とは
身近な人が亡くなり相続権が発生したとき、残されたものが借金や田舎の不動産などしかないこともあります。
その場合、面倒を避けるために相続放棄をすることも選択肢の一つです。しかし、相続放棄をすることで、自分は楽になっても周りの人に思わぬ影響を与えることもあります。
今回の記事では、相続放棄をすることで影響を与えそうなことや対象となる人、迷惑をかけないための方法を紹介します。
目次
相続放棄をする事で起こる影響とは
新たな相続人が生まれる
配偶者を除く法定相続人は、相続の優先順位によって決まります。配偶者は常に法定相続人になるとして、第一順位は子どもです。
子どもがいなければ次の順位である両親に相続権が移り、両親もいなければその次の順位である祖父母が法定相続人となるのが法律で定められたルールです。
もし相続放棄の手続きをしたとき、なかったことになるのは相続そのものではなく、法定相続人であったことです。したがって、相続放棄をした人の次に優先順位が高い人が、新たな法定相続人となります。
相続財産が借金や田舎の土地など扱いに困るものであったとき、相続放棄をすることは新たな法定相続人に厄介事を押し付けることになります。
相続放棄は、親しい人と深刻なトラブルに発展する可能性も考えた上で、慎重に手続きをした方が良いでしょう。なお法定相続人になり得る人が全て相続放棄をしたとき、誰も引き取り手がない相続財産は国庫に帰属することになっています。
財産管理義務を負わなければならない場合がある
相続放棄は、手続きをすると一切の相続財産を相続できないというのが決まりです。しかし、相続財産の中には、不動産のように維持管理を必要とするものがあります。
法律では、相続放棄をしたとしても次の相続人が相続財産の管理をするまでは、相続放棄をした人が相続財産の管理をすることが義務付けられています。
管理義務を負っている間は、相続財産を自分の財産と同じように管理しなければいけません。もし、相続放棄したからと管理を怠れば、その責任を問われることになるでしょう。
例えば、空き家の管理をしていなくて倒壊したとなれば、次の法定相続人から損害賠償請求を受けることもありえます。次の法定相続人への影響を最小限に抑えるためにも、相続財産は適切に管理しましょう。
相続放棄をする事で影響を与える人
配偶者は常に相続人
民法において、故人の配偶者は常に相続人となることが決まっています。優先順位というのは配偶者には関係ありません。これが相続放棄でどういった意味を持つのかというと、相続放棄によって優先順位は変更されないということです。
例えば配偶者が自分に相続財産が不要だと、相続放棄の手続きを進めたとします。そのことで、子どもが持つ相続権も失われたと思うのは誤りです。
失ったのは配偶者である自分の相続権だけであり、子ども自身が相続放棄の手続きをしない限りは第一順位の法定相続人であることは変更されません。
第一順位は子供(子供がいない場合は孫)
配偶者を除く優先順位で第一順位になるのが子どもです。もし、配偶者が自分は相続財産は不要だと相続放棄の手続きを進めたとします。そうなると、子どもがすべての財産を相続することになるでしょう。
プラスになる相続財産であれば良いのですが、マイナスになる相続財産があった場合、子どもにとっては迷惑です。子どもが先に亡くなっている場合も考えなければいけません。
子どもがすでに結婚をしており、故人にとって孫にあたる人物がいるならば相続権は孫に受け継がれます。そのような相続のことを代襲相続と言います。代襲相続をする孫に迷惑をかけることも想定しなければいけません。
第二順位は両親
法定相続人の第二順位になるのが、故人の両親です。子どもがいない配偶者が相続放棄をした場合は、その影響を大きく受けることになります。離婚をして、他所に行ってしまった親も故人にとって親である事実は消えません。
両親はどちらも法定相続人になれます。相続放棄により、両親にマイナスになる相続財産を押し付けてしまうことになりそうであれば、事前に連絡をしておきましょう。
第三順位は兄弟姉妹(兄弟姉妹がいない場合は甥、姪)
故人の配偶者が相続放棄をして、すでに両親・祖父母もいないときには、第3順位の兄弟姉妹が法定相続人です。
その時点で兄弟姉妹も亡くなっている場合もありますが、そのときには兄弟姉妹の子ども(甥姪)がいれば代襲相続により法定相続になります。優先順位が低いので、自分まで相続権が回ってくるとは思っておらず相続放棄が不意打ちになる可能性もあります。
相続放棄の際に迷惑をかけないためには
相続放棄は、新たに法定相続人となる人たちに影響を与える行為です。借金の返済から逃れたいとか売却が難しい田舎の不動産はいらないなどの理由があったとしても、影響を与える人たちに無断で手続きをすれば迷惑をかけることになります。
その影響が大きければ、裁判で争うほどのトラブルに発展することもあるので、よく気をつけなければいけません。影響を与えそうな人たちには、事前に連絡をしておくことでトラブルを防ぐこともできます。例えば皆が相続放棄をしようと合意していれば、マイナスになる相続財産を誰も相続することはなくなるでしょう。
連絡をしたにも関わらず、トラブルが避けられない様子であれば、一人で悩むのではなく弁護士に相談をすることをおすすめします。
相続問題に詳しい弁護士が介入することで、トラブルを未然に防いだり影響を最小限に留めたりすることもできます。また、頼めば相続人調査もやってくれるので、影響がどこまで及ぶのかを知りたいときにも頼りになる存在です。
相続放棄は周りの影響を考えて手続きを進めよう
相続放棄をすることは、当人にとって良いことでも周りの人には迷惑となることもあります。自分さえ良ければいいという考えで、手続きをしてしまうと、大きなトラブルに発展することもあるでしょう。
身内同士が相続問題で争うことなど故人も望んでいないでしょう。相続放棄は、周りの影響を考えて事前の連絡や弁護士を介した話し合いをした上で手続きを進めましょう。
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