コラム
音信不通になっていた親族から突然の相続!どうすればいい?
2022.09.23
音信不通になっていた親族から突然の相続!どうすればいい?
船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。
音信不通になった親族が死亡し、突如、相続人なので未払いの家賃・医療費・消費者金融などの借金の返済を求める書面が届いて、どうしたらよいか、といった相談が寄せられます。
確かに、まったく身に覚えがない請求書が届けば気が動転してしまうのも無理はありません。
ですが、請求書が届いたからといって、必ず支払う必要はありません。また、いきなり裁判を起こされて財産を差し押さえられることもありません。基本的には相続放棄により、支払い義務を回避できます。
本記事では音信不通になっていた親族が亡くなり、突然請求書がきた場合の対処法について説明していきます。
目次
請求がきてから3ヶ月以内に相続放棄をすれば支払い義務を免れることができる
身に覚えのない請求書が届いたとしても、もともとご自身が背負っている借金ではないので、相続放棄をすることで支払い義務を免れることができます。
また、相続放棄は一般的には該当する方が死亡してから3か月以内に手続きをしなければならないのが原則ですが、このような音信不通のパターンでは、請求書が届いてから3か月以内に相続放棄の手続きをすれば、これが認められます。
音信不通だった場合には、請求書が届いて初めて亡くなったことを知るので、この時点から3か月以内に相続放棄の手続きをすればよいのです。
請求書を見逃して3か月が過ぎてしまった場合には
身に覚えのない請求書が封筒で届いても、不信に思ってなかなか開封をしないということもあると思います。そうすると、請求書が届いた日(請求書に記載された日付)から3か月が過ぎてしまいます。
このような場合は、古い請求書は開封せず新しい請求書が届くのを待ちましょう。
相続放棄の申立を審査する家庭裁判所は書類審査が原則ですから、請求書の日付から3か月を過ぎてから申立をしても、相続放棄が受理されない可能性があります。
ただ、この手の支払い催促の請求書はたびたび、郵送されます。なので、古いものは開封しないで、一番新しいものを開封すれば、その請求書の日付が3か月の起算点となります。
このような請求書が届いたならば、早急に開封して相続放棄の準備をするのが一番よいです。ただ、開封しないで放置していた場合には、新しい催促の郵便が届くのを待つのが賢明でしょう。
相続放棄以外に支払いを免れる方法はあるのか
相続放棄以外に、亡くなった人の借金を免れる方法はあるのでしょうか?そもそも、音信不通であっても親や配偶者が亡くなれば、その遺産を相続できます。
なので、遺産を相続して遺産の中から借金を返済すれば、自分の負担はありません。
音信不通の親族の遺産を調べるのは難しい
しかし、音信不通の親族の遺産を調査するのは容易ではありません。とりあえず、自宅が戸建てであればそれを所有しているかどうかは簡単に分かりますが、それ以外の銀行預金等は、亡くなった後に自宅を訪問して確認する以外にありません。
ですので、亡くなってから何年も経過してから、亡くなったことを知ったようなケースでは、自宅だった場所も立ち退き作業が完了して何も資料が残っていません。そのため、遺産相続に期待するのは現実的ではないでしょう。
時効もうまく活用しよう
その他に、消滅時効の援用という方法があります。これは、借金については返済がなされないまま5年が経過すると支払い義務が消滅するという制度です。
お金を貸している側からすると損をする制度ですが、それは裁判手続などできちんと請求をすれば時効にかかって借金が消えることはないので、貸し手が裁判手続を怠ることで消滅時効を主張するチャンスが出てきます。
特に亡くなってから5年以上経過してからの請求の場合は、消滅時効の対象となる可能性が高いので、親族がいつ亡くなったかを調べることも重要です。
親族の借金についての督促が来ても慌てず
これまで述べてきたように、親族がした借金については基本的には相続放棄で対応できます。3か月の期間制限についても、請求書の日付を基準にするなど柔軟に対応できます。その他にも時効援用で借金自体を消滅させることもできます。
なので、切羽詰まって焦る必要はありません。分からないことがあれば、弁護士へ相談してみましょう。