コラム

子に遺産を残したくない!遺留分を減らす方法を解説

2021.04.02

子に遺産を残したくない!遺留分を減らす方法を解説

子に遺産を残したくない!遺留分を減らす方法を解説

こんにちは。船橋・習志野台法律事務所の中村亮です。

子に親不孝があったとか、疎遠になった、すでに多額の支援をしてきたなどの理由で子に遺産を渡したくない、あるいは、親孝行をしてきた子だけに遺産を渡したいとなった場合には、親として何かできることがあるでしょうか?

本記事では子に遺産を相続さないことはできるのか、そして子の遺産の取り分を減らす方法について説明していきます。

自分の子に遺産を相続させないことは簡単にはできない

自分の子に遺産を相続させないことは簡単にはできない

単純に遺言書を作成して、子ABCといるうち親不幸をしたAの取り分を0にして、BCで等分に分配するという内容にすればいいように思えます。

しかし、子には親の遺産に対して遺留分という権利を持っています。遺留分とは、本来の法定相続分に対して半分の限度で遺産を確保できる権利のことであり、上記のように遺言書で取り分をなしとしても、AはBCに対して遺留分を侵害された分に相当する金額の請求ができます。

親からすれば、自分の財産は誰にどのように分配するかは自由に決められるべきと思うかもしれません。ただ、親子の関係は子の出生以来、概ね50年以上の長期に継続している事が多く、子が親の遺産に対してある程度期待するのはやむを得ないとして、民法ではその期待を保護しているのです。

また、親の作成する遺言書は遺言書作成直前の数年程度の短期間で世話をしてくれた子らを優遇する傾向が強くそのような遺言書がそのまま効力を有すると、たまたま、遺言書作成時期に疎遠だった子が損をしてしまう不公平が生じてしまいます。

要するに遺留分には親の気まぐれで遺産の取り分に極端な格差が生じるのを防ぐ効果があるのです。なので、遺留分を超えて子の取り分を減少させる遺言書を作成しても、死後にこれが覆される可能性が高いです。

ただ、遺留分は親の気まぐれによる子の間での格差を防止することなので、そのような格差が親の気まぐれでないといえる場合には遺留分を侵害する形での遺産の分配が可能になることもあります。

遺留分を侵害して特定の子の取り分を減らす方法

遺留分を侵害して特定の子の取り分を減らす方法

「廃除」の審判

家庭裁判所に廃除の審判を求めるという手続きがあります。これは被相続人となる子が、親に対して虐待、重大な侮辱、著しい非行をしていたことを理由に、予め相続人の地位を失わせる効果が生じます。廃除の審判が家庭裁判所に認められれば、その子は最初から相続人でないことになるので、当然、その子の取り分を0にできます。

もっとも、廃除の審判が認められることは稀であり、単に疎遠になっただけ、親不幸があったというだけでは認められません。

実際に虐待を受け続けるとか、殺人や強盗などの重大犯罪で有罪判決が確定するなど、極端な事情がないと廃除の審判は認められません。長年の親子関係を考慮しても、なお、遺産取得に対する期待が保護に値しないといえる場合でなければ廃除は認められないということになります。

特別受益や寄与分により遺留分を減少させる方法

子がABCとて、Aだけが大学に進学して学費を1000万円ほど援助した場合とか、Aだけが住宅ローンの頭金を援助してもらった場合、仮に相続が始まれば、Aは特別受益を受けたといえます。

特別受益とは被相続人の財産から生活に必要なまとまった金銭的援助を受けたことで、実質的に遺産を生前に受け取ったと評価できる場合のことをいいます。この場合、援助を受けた分だけ法定相続分から控除されることになります。

つまり、特別受益の金額が大きく法定相続分を上回れば生前に既に法定相続分を受領したことになるため、遺留分で保護される金額もなくなります。そのことを遺言書に記載して特別受益の内容、援助の経緯、具体的な金額を明らかにすれば、遺留分を超えてAの取り分を減らすことができます。

逆に子がABCといて、BCは親の介護を献身的に担ったが、遠方に住むAは全く介護を手伝っていなかった場合、BCの寄与分を計算してAの法定相続分を減らすことができます。寄与分は親の遺産の維持、形成に貢献した相続人についてその貢献した分だけ遺産の取り分が増やせるというものです。BCの寄与分が多くなることでAの法定相続分が減少したり0になれば、遺留分を超えてAの取り分を減らすことができます。これも特別受益の場合と同様に、寄与分の内容、経緯、それを金額に評価する方法を遺言書に具体的に記載します。

特別受益も寄与分は被相続人(親)の死後の遺産分割協議の段階になるとこれが認められるのは容易ではありませんが、被相続人の生前のうちに具体的な根拠と内容をもって遺言書に記載すれば認められやすくなります。100%ではありませんが、遺留分を超えて、特定の子の遺産の取り分を減らせる手段となります。 

養子縁組をする方法

遺留分は法定相続分に対する半分の限度で認められます。そうすると養子縁組をして、法定相続人を増やせば、遺産を渡したくない子の法定相続分を減らすことができます。

子がABCといてAに遺産を渡したくない場合、BCの配偶者とそれぞれ養子縁組をするとAの法定相続分は3分1から5分の1に減少します。そうすると遺留分も10分の1にまで減少します。それに上記の特別受益や寄与分も組み合わせることができればAが遺留分で確保できる金額をかなり小さくできます。

ただ、養子縁組をする以上は、それなりの関係性が必要です。比較的良好な関係にある子とその配偶者とも良好な関係を作っていれば養子縁組は有効な手段といえるでしょう。 

【まとめ】遺留分を減らす遺言書に特定の子の取り分を減らすべき確固たる事情があるべき

最初に述べたように、遺留分の権利は、親の気まぐれによって複数の子のうち一部の子だけ取り分が0になって他の人がたくさん遺産を取得するといった極端な不公平を回避するためです。

なので、最近数年間の子との関係だけで遺産の分配方法を判断すべきでなく、長い親子関係の中で起きてきた様々な事情を十分に考慮して適切な遺産分割を実現できる遺言書の作成を目指すべきでしょう。そうした考慮の中で遺留分を残すことすら許容できない事情があるというならこれまで述べてきた3つの手段を検討すればよいかと思います。

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