コラム

自宅以外の不動産の相続について様々なケースを解説!

2023.07.04

自宅以外の不動産の相続について様々なケースを解説!

自宅以外の不動産の相続について様々なケースを解説!

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。不動産に関するご相談をいただく中で一番多いのは、両親が所有していた自宅(実家)の相続です。

自宅の相続は下記の2つのケースが多いです。

  • ①現在居住している相続人が他の相続人に代償金を支払って、居住している相続人が単独で取得する
  • ②自宅を売却してその代金を各相続人に分配する

もっとも、自宅以外の不動産の場合には、様々な特性があり、単純に上記①②の方法だけでは解決しないことがあります。

本記事では、自宅以外の不動産相続について様々な例を用いて解説していきます。

自宅以外で収益可能な物件の例

自宅以外で収益可能な物件の例

相続する不動産が、アパートや貸しビルなどの収益物件である場合、収益として賃料が発生します。そのため、相続人の中には売らないで副収入として家賃を確保したいという人もいれば、売却してきれいに分配したいと思う人もいます。

このように相続人同士で意見が分かれた場合にどのように解決すればよいでしょうか?

所有したい相続人が代償金を支払う

一つには、家賃を確保したい相続人が他の相続人に代償金を支払うという自宅の分配における①の方法が考えられます。もっとも、収益物件の場合はその価値が高いでの代償金を支払うためには銀行でローンを組む必要があることも想定されます。

しかし、登記名義人が亡くなった被相続人のままでは融資が承認されない可能性が高いです。そこで、相続登記を実施する前に遺産分割協議書を作成して、家賃収入を得たい相続人が当該収益物件を単独で取得する旨を当該合意書に明記します。

そうすると、銀行も融資審査だけは実施してくれる可能性が出てきます。融資審査が通った段階で融資の実行と相続登記を同時に行うこととします。

遺産分割協議書には、仮に融資審査が通らなかったから合意を白紙にする旨の条項を付けておけば、融資が通らないのに単独所有されてしまうことは回避できます。

相続人同士で意見がまとまらなかった場合

では、家賃を得たい相続人と売却したい相続人で意見がまとまらず、遺産分割の調停にまで進んだ場合はどうなるでしょうか?遺産分割の調停でも合意できなければ、最終的には家庭裁判所の裁判官が審判言い渡しによって決定します。

審判の場合の判断基準としては、当該収益物件を取得したい相続人になるべく優先的に取得させ他の相続人に代償金を支払う命令を言い渡すことが多いです。

もっとも、代償金はローンで確保することは許されず、審判言い渡し前の時点で代償金を支払う資力があることを預金通帳写しを提出するなどして証明する必要があります。

遺産分割の調停で売却という結果になることは少ない

それでは、誰も代償金を支払うだけのお金を持っていない場合にはどの相続人が収益物件を取得することになるでしょうか? 

遺産分割の審判では法定相続分による遺産の取得が大原則ですから代償金を支払えないからといって、裁判官が勝手に任意の相続人に収益物件を取得させる審判を言い渡すことはできません。

そうすると、法定相続分に応じて各相続人が持分を持つ形で共有するという形で遺産の帰属を決定します。つまり家賃も法定相続分に応じて各相続人へ分配されることになります。結果的に家賃を確保したい相続人と売却したい相続人で意見が割れて審判にまで行くと前者の家賃を確保したい相続人の意向が実現されやすくなります。

競売の命令が出る可能性もある

ただ、各相続人で共有することになった場合に家賃を誰が管理するのかが問題となります。裁判所が家賃の管理についてきちんと決まっておらず、一部の相続人が横領してしまう恐れがあるなど懸念があると判断すれば、競売の命令が出る可能性もあります。

競売になると誰も収益物件を取得することなく、第三者へ売却されることになります。しかし、競売にも難点があります。まず、競売の命令が出たからと言って、自動的に誰かが買ってくれるわけではありません。

相続人の誰かが地方裁判所に競売の申立をして、予納金(100万円以上かかることもある)を裁判所に納めて初めて手続が開始します。また、競売になると、市場での価格より安くなることが多いです。

兄弟姉妹間で意見が対立した状態のまま、調停を経て審判まで進んでしまうと、余計な費用がかかってしまうことが多いです。収益物件の場合は、売却は難しくないし、家賃の分配についても不動産管理会社に割り増しで管理料を支払うことで対応できる場合もあるので、なるべく、審判になる前に解決することを目指すべきでしょう。

所有していた土地が農地の例

所有していた土地が農地の例

農業を受け継ぐ相続人がいる場合

遺産が農地である場合、家業である農業を受け継いだ相続人が単独で全ての農地を取得するのが一般的な遺産分割の方法です。しかし、農地の中で価値が高い土地(㎡単価が低くても広いために評価額が高くなることも)があるとこれを単独で相続することで法定相続分を超えてしまう場合があります。

後継者が代償金を負担できれば問題ありませんが、被相続人が預貯金をあまり残していない場合など負担が重く代償金の支払いが難しいことがあります。

その場合は、被相続人の存命中から事実上の後継者として農業に従事していた相続人であれば、家業に対する貢献があったということで、法定相続分より多くの遺産を取得できることがあります。

法定相続分から上方修正して遺産を取得することを寄与分といいます。しかし、寄与分は特定の遺産を取得する際に優遇されるのではなく、被相続人の遺産形成に対する貢献度を数値化して相続分を上方修正させるものです。

ですので、計算の仕方が難しく、また、事案による個別性も強いため、弁護士へ依頼しないと数値化すること自体ができないでしょう。

誰も農地を継がない場合

また、誰も農家を継がない場合には、売却してその代金を分配することになります。もっとも、農地は相続による取得であれば許可はいりませんが、相続で取得したのち、別の第三者に売却する場合には農業委員会の許可を得るか、農地以外に使用できる転用の許可を得なければ、売却することはできません。

売却の候補の第三者が農家であれば前者の農業委員会の許可を得やすくなります。しかし、農業を営むことを前提とした売買になるので、それほど高い価値にはならないでしょう。

農地がすでに耕作放棄地になっている場合には転用が許可されることがあります。その場合には、宅地開発業者等が買い取ることが多いでしょう。問題なのは、土地の状況から転用ができず、かつ、農業を引き継いでくれる第三者もみつからない場合、なかなか、買い手が見つからず相続人らが管理を継続せざるを得ないこともあり得ます。

こうなると、各共同相続人が雑草などの処理や固定資産税などを分担し続けなければなりません。自治体によって就農支援をしている部署があるのでそこに問い合わせて買い取ってくれる、あるいは、無償に近い価額で引き受けてくれる農家を見つけるというやり方もあるかもしれません。

山や原野などの価値の低い土地の例

山や原野など価値の低い土地の例

かつて、原野商法という将来の開発で価値があがると述べて山や原野を買わせる詐欺、ないしはそれに近い不動産取引が流行った時代があります。その時代に被相続人が買ってしまった山、原野がそのまま相続開始の時点まで残ってしまっていることがあります。

こうした土地は、現実的に買い取ってくれる人がいないし、各相続人の住まいからも遠方の田舎にあることが多く誰も欲しがらない土地です。これまでは、このような土地は事実上、放置して、安価の固定資産税だけ支払い続けている相続人も多いかと推測できます。

しかし、今後、改正不動産登記法が施行されると、相続登記が義務化されます。そうすると、価値がないと分かっている土地であっても、司法書士にそれなりの報酬を支払って相続登記をしなければならなくなります。相続人としては誰も引き受けたくないので、誰の名義にするかで話し合いがまとまらないことが十分に想定されます。

このような土地については、逆にお金を支払うことで引き取ってくれる業者もいます。信用できる業者を見極めるのが困難ですが、最終手段としてはこのようなやり方もあり得るかもしれません。

分けられない土地の相続は困難を極めることも

不動産は現金、預金と違って分けて分配をすることが困難な遺産です。自宅や収益物件のように流動性の高い不動産であれば、最終的には売却で解決する道筋があり、相続人間で意見が割れて話し合いが進まなければ、遺産分割の調停・審判を家庭裁判所へ申し立てるのが解決策となります。

しかし、後継者のいない農地であったり、用途のない原野、山などは、誰も欲しくない土地であるため、遺産分割の調停・審判をしたところで解決の道筋が立たないことが多いです。このような土地の場合は、相続人間で維持管理費の分担について話し合うことが重要でしょう。

いずれにしても、複雑な手続きを踏むことになる場合が多いため、自宅以外の不動産の相続があることがわかった時点でぜひ弁護士にご相談ください。

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