コラム

成年後見人は医療同意できる?医療同意の範囲と限界について解説

2023.06.20

成年後見人は医療同意できる?医療同意の範囲と限界について解説

成年後見人は医療同意できる?医療同意の範囲と限界について解説

成年後見人は、認知症等により意思決定が困難な人の代わりに法律行為を行う役割を担います。

本人の意思を尊重した上で財産管理や必要な介護・福祉サービスの契約を行うといったサポートをしますが、医療機関で求められる医療同意を行うことはできるのか、疑問に思っている人もいるでしょう。

このコラムでは家族や親族であれば基本的に問題なく行える医療同意について、その重要性と成人後見人の権限について紹介します。

医療同意の概要と重要性

医療同意の概要と重要性

医療同意とは

高齢者になると病気などで医療機関にお世話になることも増えるでしょう。

突然の事故で緊急手術が必要になるケースもあるかもしれません。

こうした手術などをはじめとする医療行為を行う場合、必ず患者本人から同意を得る必要があります。医療行為を受ける前に医療行為の必要性や副作用、起こりうるリスクなどの説明を受け、その上で同意の意思を示すため同意書にサインをします。

しかし認知症等で判断能力が不十分な人は、同意の意思決定ができないケースも少なくありません。

医療同意の重要性

手術などの医療行為は治療のために行うものですが、必ず元の体のようになるとは限らず、リスクが伴います。

医療行為には切開や切除といった身体を傷つける行為も含まれ、行為だけを見れば刑法の傷害罪に該当するでしょう。

しかし、患者本人の同意があれば、刑法35条における正当業務となり、違法性がないとされます。そのため、医療行為に関する説明やリスクについて理解したことを示し、刑法における正当業務を適用するために、医療同意が求められるのです。

意思決定が難しい、意識がないなど本人から医療同意を得られない場合は、家族や親族から同意を得て治療を行います。

医療同意が必要となるケース

  • 侵襲的な行為と呼ばれる切開や穿刺
  • 放射線照射
  • 薬物投与
  • 麻酔
  • 輸血

成年後見人は医療行為の同意を行う権限は付与されていない

成年後見人は医療行為の同意を行う権限は付与されていない

全ての成年後見人が医療同意を行えないわけではありません。

家族や親族が成年後見人となっている場合は、家族・親族の立場として医療同意は有効です。

しかし、家族や親族以外の人が成年後見人となっている場合、医療同意の権限は付与されていません。

医療行為の同委は本人の意思決定が大前提

成年後見人は医療・介護・福祉サービス等の契約の締結や手続きは本人に代わって行えますが、医療行為の同意は本人の意思決定が大前提となります。

制度上では成年後見人の役割として医療同意は含まれていないものの、実際の医療現場では、患者本人に家族や親族がいない場合等において、成年後見人に医療行為の判断を求めるケースは少なくありません。

もっとも、家族・親族以外の成年後見人には、医療行為への同意見は法的な根拠はありませんので、被後見人と周囲の親族関係に注意しながら、同意をするか慎重な判断を要します。

 医療に関する情報の収集・提供

高齢化や認知症患者の増加に伴い、成年後見人に期待される具体的な役割は年々変化しています。

厚生労働省が2018年に発出した「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)では、医療機関に対して成年後見人に期待される具体的な役割として、次の三つが挙げられています。

医療機関に対して成年後見人に期待される具体的な役割

  • 既往歴や服薬歴等の本人の医療情報の整理
  • 医療を受けるに当たっての本人意思を推定するための情報提供
  • 退院後利用可能なサービスについての情報提供

いずれにおいても本人の意思を尊重しつつ、円滑に必要な医療を受けられるようにするため、成年後見人だからこそ担える役割と言えるでしょう。

医療判断の実施

成年後見人には、成年被後見人に対する身上配慮義務があります。これは、民法858条において、本人の意思を尊重し、かつ心身の状態や生活の状況に配慮すること、と定められているものです。

また、「ガイドライン」では本人の権利擁護の観点から、成年後見人は本人に提供される医療の内容が適切かどうか医療機関に対して説明を求めることができると記載があります。

医療同意における法的問題と弁護士への相談

医療同意における法的問題と弁護士への相談

医療同意における法的問題

医療同意は基本的に本人のみが行える一身専属権です。本人の意思が何より尊重される必要があるものの、本人が意思決定に困難を抱えている場合、どれだけ本人の意思を尊重できるかという問題が発生します。

2016年に施行された「成年後見制度利用促進法」において、本人が必要な医療や介護を受けられるよう、成年後見人の権限についての検討を基本方針の一つとして定めています。

現行法や制度としてはまだ整備されていないものの、医療同意に関する議論は今後も続けられるでしょう。

弁護士に相談するメリット

医療同意において法的に問題がないか、法律の専門家である弁護士に相談することでトラブルを防ぐことができます。

後見開始の申立手続きは、弁護士もしくは司法書士に依頼しますが、その際に今後も相談に乗ってもらえそうな弁護士を探しておくと安心でしょう。

認知症等により本人から医療同意が得られない場合、誰から同意を得れば良いのか明確に定めた法律は現行では存在しません。たとえ医療機関からの求めに応じて同意した場合でも、法律の裏付けがある同意とはならないのです。

そのため、成年後見人が本人に代わって医療に関する決定ができないか、議論されています。

医療同意を含む医療に関する決定は、本人の身体、さらには生命に影響を及ぼす可能性がある、大きな決断です。

一人で判断できないこともあるでしょう。法律に基づいた公平で中立な視点から判断できる弁護士に相談することで、法的な立場からも支えてもらえ安心です。

医療同意に関する弁護士の専門領域

弁護士は法律行為に関するやりとりを専門に行うため、医療機関とのやりとりに関して法的に問題がないか判断できます。

成年後見人制度について詳しい弁護士であれば、医療同意に関する知識や経験も豊富であることも多く、対応について相談に乗ってもらえるでしょう。

成年後見人の役割が見直され、サポートの幅が広がる可能性も

成年後見人には医療同意の権限はないとはいえ、実際の医療現場では、成年後見人に医療同意を求めることもあるのが現状です。

成年後見人による医療同意は、今後さらに議論されていくでしょう。成年後見人の役割やサポートの範囲も広がっていくかもしれません。

成年後見人の医療同意に関して不安なことや分からないことがあれば、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

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