コラム

【リスク多数】遺産相続を何もしなかったら?面倒でもやってほしい理由

2021.02.01

【リスク多数】遺産相続を何もしなかったら?面倒でもやってほしい理由

こんにちは。船橋・習志野台法律事務所、弁護士の中村亮です。

例えば、あなたの父親や母親が亡くなった時、遺産の相続をする必要があります。しかし、もし何もしなかったらどうなると思いますか?

最初は問題なく過ごせていたとしていても、そのあとに潜んでいるリスクはたくさんあります。今回は具体的な例とともに、遺産相続を何もしなかった時のリスクを一緒に考えていきましょう。

【遺産相続事例】10年前に父親が死亡したが遺産相続を何もしなかった

【遺産相続事例】10年前に父親が死亡したが遺産相続を何もしなかった

10年前に父親が亡くなりましたが、この時は母が父名義の自宅にそのまま住み続けての銀行預金も母が管理していた事例を考えてみましょう。

母は特に何の手続もしませんでした。その後、母が要介護認定を受けて、長女が転居して、父名義の自宅に住むようになり、父と母の預金も長女が管理するようになりました。そして、最近になって母も亡くなり、兄弟は他に兄と妹がいます。

このまま、長女が何もしないまま、父名義の自宅に住み続け預金も自由に使えることになるでしょうか?

遺産分割協議をしないことで何が起こるか

遺産分割協議をしないことで何が起こるか

通常であれば、父親が亡くなった時に遺産分割協議を行い誰がどれだけ遺産を相続するか話し合いを行う必要があります。しかし、今回のように何もしなかった場合どういうことが起こりえるのでしょうか。

(1)遺産をめぐる紛争に発展するリスク

このまま、長女が兄や妹話し合いをしないまま、父の自宅に住み続き、預金からの払い戻しを続けていたとしましょう。すると、ある日、突然、預金からの払い戻しができなくなり、兄か妹のどちらかから、自宅の売却を迫られることがあります。

預金については、相続人である兄か妹のどちらか一人でも銀行に父親の死亡届を提出すればその時点で口座は凍結されて払い戻しができなくなります。そして、父親が亡くなった日以降に払い戻した金額について兄や妹の相続分を主張され返還を求められる可能性もあります。

自宅についても、法律上は父も母も亡くなった時点で、3人兄弟で等分の権利があることになります。そのため、長女が一人で無償で住み続けることに対する不満を兄や妹が主張してくる可能性があります。実際に家賃の請求のような金銭請求が認められることはそれほどありませんが、一人だけ実家に無償で住み続けたことへ他の相続人(兄弟姉妹)が不満を述べるケースは珍しくありません。

預金や自宅不動産、いずれにしても、話し合いをしないまま亡くなった親の名義のまま放置してしまうと紛争の種を大きくしてしまいます。預金の場合は、管理をしていなかった他の兄弟姉妹から不正な原戻しを主張され多額の返還請求を求められると、相続人間で折り合いをつけるのが難しくなります。自宅も住んでいる長女と住んでいない兄、妹の対立が生じやすく、紛争が長期化すると古くなった自宅をいつまでも売却できないまま資産価値の下落で損してしまうこともあります。

また、母が亡くなった後、2年くらい兄や妹に文句を言われず平穏に暮らしていたとしても、突如として弁護士から相続分を求める内容証明郵便が来たりすることもあります。相続に関する紛争は親が亡くなってすぐに顕在化することはそれほど多くありません。何故なら、親が亡くなる相続のケースでは子はまだ現役世代で仕事が忙しいこともあるし、親の相続は初めての経験であることが多く、亡くなってからすぐに相続の話し合いに向けて動ける人が少ないからです。

また、親の遺産の内容を生前に正確に把握するのは難しいことで、亡くなってからどのような遺産があるか調べることが多いです。そして、遺産をある程度、調べ終わったあとに、いろいろな場所(金融機関、司法書士、税理士、弁護士など)に相談に回り、相続分についての権利主張を決意するに時間がかかるのです。なので、四十九日を過ぎて何も言ってこないから大丈夫だと、安易に考えることは禁物です。

この長女のように遺産の自宅や預金を管理している側の相続人から積極的に話し合い(遺産分割協議)を他の兄や妹(他の相続人)に持ち掛け、兄や妹に不信感を抱かせる前に、遺産分割協議を成立させることが重要です。

(2)二次相続が発生し話し合いが難しくなることも

遺産分割協議をしないままでいると、当事者である相続人もまた亡くなり、更に相続が発生して(これを二次相続といいます)、子や孫の世代に、相続問題が持ち越されることもあります。

上記の例でいえば、兄と妹が亡くなり、それぞれ子どもが2人いると新たに4人の相続人が増えることになります。自宅に残っている長女からすると、世代が一つ下の甥、姪となると普段の交流も乏しいため、ますます、遺産分割協議が難しくなってしまいます。二次相続を受けた甥や姪からしても、その後、自宅に住んでいた長女も亡くなりさらに二次相続で相続人が増えてしまうと、疎遠なもの同士で空き家になった不動産の話し合いをせざるを得なくなります。

親の相続の話をしているうちに兄弟や自分も亡くなっているというのは極端かもしれません。ただ、預金だけは生前にほとんど払い戻して使い切ってしまっていると、不動産だけの相続の話し合いは敬遠されがちです。そのため、気が付いたら二次相続が発生し、下の世代に迷惑をかけてしまうことがあります。

(3)相続税の追徴課税を受けるおそれ

遺産の総額が一定額以上(相続人が3人なら4800万円以上)あると、相続税の支払いが必要になります。そして、被相続人(主に親)が亡くなってから10ヶ月以内に相続税の申告をしていない場合には、追徴課税をされてしまい、納税額が増えてしまいます。なので、遺産の額が多い場合には相続税にも注意しなければなりません。

どうしても、10ヶ月で話し合いがまとまらなければ、税理士に相談して、暫定的な遺産分割協議を成立させてこれに基づいて税務署へ申告することができます。その後、正式な遺産分割協議が成立した後に、納税額について精算したうえで遺産の分配額を決定します。

【まとめ】相続争いの長期化を避けるためにも、話し合いの場を積極的に設けましょう

このように、遺産分割協議を放置していると、

  • 紛争の長期化を招く
  • 二次相続の発生で当事者が増え話し合いがむずかしくなる
  • 相続税の負担が増える

おそれがあります。

そのため、四十九日を過ぎたあたりから相続人同士で積極的に話し合いの機会を設けましょう。話し合いのポイントは、遺産(銀行預金や不動産)を管理している相続人が通帳などの開示に応じることです。

よくある失敗の例は、話し合いもしないで遺産分割協議書の案を他の相続人に送り付けて署名と押印(+印鑑登録証明書の提出)を求めることです。このやり方だと遺産分割協議書の案を送り付けられた他の相続人からすると、自分たちの言い分を主張する機会なく一方的に決められたとの印象をもち、その後の話し合いが難しくなります。

話し合いの機会を設けようと思っても、中にはどうしても連絡が取れなかったりして話に応じない相続人が一人や二人出てくることもあります。そのような場合は、弁護士に相談して、交渉を依頼することが重要です。弁護士が介入すれば、話し合いに応じない相続人がいても最終的には、遺産分割の調停、審判を家庭裁判所に申し立てて、家庭裁判所で決めてもらうというゴールに向かうことができるからです。

遺産相続の手続きは後回しにせず、早めの対応を心掛けましょう。

関連記事

初回相談1時間無料/オンライン相談可能
  1. 相続問題
  2. 相続放棄
  3. 遺言書作成
  4. 遺産整理
相続に関するお問い合わせ・相談予約は
24時間受け付けております
お問い合わせフォームはこちら
船橋習志野台法律事務所|初回60分無料 土日祝日・夜間20:30まで ご相談のお問い合わせはこちら