コラム

遺産の一部を分割することが法改正で可能に!どのように変わったか解説

2023.08.03

遺産の一部を分割することが法改正で可能に!どのように変わったか解説

遺産の一部を分割することが法改正で可能に!どのように変わったか解説

 

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。

近時の相続法改正で、遺産の一部にだけ分割の調停、審判が認められるようになりました。従来は、遺産全体を相続人全員の具体的な相続分を踏まえて、一切の事情を考慮して、全ての遺産についてそれぞれどの相続人に取得させるのかを決める必要がありました。

しかし、特別受益や寄与分の主張がある場合、遺産の中に不動産が多く含まれ分割方法が難しい場合に、遺産分割の調停、審判が数年以上にわたり長期化することが珍しくありません。

その間、預貯金ですら全く手が付けられないのが経済的に不合理ということから、相続法の改正で、遺産の一部についての分割が認められるようになりました。

遺産の一部分割は相続人からの申立でできる

遺産の一部分割は相続人からの申立でできる

相続法改正前は、家庭裁判所の裁量により家庭裁判所が必要だと判断した場合のみ中間審判を言い渡して、実質的に遺産の一部分割を実施することがありました。

ただ、裁判所主導であり、中間審判に対して不服申立がされるとかえって紛争が長期化することから、それほど、運用事例はありませんでした。

これに対して、改正相続法による遺産の一部分割は、相続人からの申立でできます。そのため、遺産分割調停の申立前から、紛争が長期化することが予測されれば、調停申立て時点に一部分割を申立をして預貯金だけ分割することができるようになりました。

あるいは、相続人の一人だけが被相続人である親と親名義の自宅に同居している場合に、その自宅だけの一部分割の調停を申立をして代償金を提供して、早期に自宅の所有権を同居の相続人が確保することもできるようになりました。

また、通常の遺産の全部分割の調停を申立をして、想定外に長期化した段階で、各相続人が合意できる遺産の範囲だけで一部分割の調停を追加的に申立をして、事実上の中間合意の調停をすることもできるでしょう。

遺産の一部分割に制限はあるか

遺産の一部分割に制限はあるか

遺産の一部分割については細かい要件はなく、民法907条2項に「他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合」と規定され、その場合には一部分割は認められないことになります。

より分かりやすくいうと、一部分割の結果、一部の相続人が本来確保すべき具体的相続分を確保できなくなってしまう場合のことを指します。

特に多くの生前贈与を受けている相続人が一部分割で他の相続人に先んじて特定の遺産を取得することは、他の相続人の相続分を侵害することになります。

一部分割によって他の相続人の相続分を侵害することになる例

例えば、相続人3名で遺産が預金2000万円で自宅の土地建物が1500万円である場合、相続人Aは生前贈与1000万円を受領していると、具体的な相続分は相続人B、C1500万円ずつ、相続人Aは500万円になります。

それにもかかわらず、相続人Aに1500万円相当の自宅を単独取得させる一部分割を認めると、相続人B、Cは預貯金を等分して1000万円ずつしか確保できず1500万円の相続分が侵害されます。このような遺産分割は認められます。

この事例では、Aが1000万円の代償金を支払う条件であれば自宅を単独取得する一部分割が認められます。

このように一部分割には細かい制約はありませんが、相続人の一人だけが得をして他の相続人が具体的相続分を下回る結果となる遺産の一部の分割は認められません。

遺産の一部分割をするなら早めに行動しよう

遺産の一部分割をするなら早めに行動しよう

遺産の一部分割は、遺産全ての分割が決まるまで時間がかかる場合に、一部の分割なら調停や審判で早期に遺産の帰属が決められる場合を想定した制度です。

ですので、全体の遺産分割の調停を申立ててから、2、3年経過したあとで一部分割の調停を申立てても、かえって合意の妨げになる可能性が高いでしょう。

早期に遺産の一部だけ帰属を決める必要性が高い事例として、各相続人が子どもの学費や住宅ローンの繰り上げ返済などで遺産に頼らざるを得ない場合に、預貯金全体についての分配を遺産の一部分割の調停でまとめて決めて、他の不動産についてゆっくり時間をかけて決めるという場合があります。

他には、農家を継いだ相続人の一人が農地の単独取得を早期に決めたい場合など、事業承継の必要性に対応することもできます。

遺産の一部分割は長期化する分割調停の切り札

遺産分割の協議に時間がかかり、遺産を充てたいと思っていたところに費用を使えず困った経験のある人も多いのではないでしょうか。

ここまでで見てきたように法改正により遺産の一部分割は、相続人の申し立てでできるようになりました。

遺産の一部分割の制度は、まだ広く使われていないようですが、幣事務所で過去に長期化した遺産分割の調停の事例を振り返ると、早期の一部分割の申立は積極的な運用が期待されるところです。

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