コラム
離婚した両親がいると大変なことも!親子間での相続放棄
2022.10.26
離婚した両親がいると大変なことも!親子間での相続放棄
船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。相続放棄のご相談で多いのが両親が離婚しており、幼少期以来接点のなかった親が亡くなった知らせが、突然やってきたというものです。
縁が切れていても、親子の血縁は自動的に切れるものではなく相続人になります。
親が借金をしていた場合は相続放棄が必要で、親子間を証明する戸籍謄本を取り寄せなければなりません。
一般的にはそこまで時間はかかりませんが、同居親が離婚と結婚を繰り返している場合、相続人の現在の戸籍から亡くなった親の死亡時の戸籍謄本にたどり着くまでかなりの労力と時間を要します。本記事では離婚した両親がいる場合の相続放棄の注意点を紹介します。
目次
親の本籍地が分からないと時間がかかる
幼少期に離婚して別れた親の相続放棄をする場合、その親の本籍地が分からないことも多く考えられます。なぜなら、離婚時に幼少であれば別れた親の個人情報を知らなくてもおかしくありません。
離婚後、同居してきた親から聞こうにも何十年も前に離婚した元配偶者の本籍地など覚えていないのが普通です。そんな時、親の本籍地を特定するためには2通りの方法があります。
死亡時の住所地での住民票除票を取得する
亡くなった親の本籍地を特定するには、死亡した時点での住所地で住民票除票を取得するのが一番早い方法です。交流のなかった親の死亡の知らせが来るのは、大抵は債権回収会社からの借金の催促の書類や市役所から、滞納している税金の支払いの催促の書面が届くパターンでしょう。
このパターンであれば、催促の書類に亡くなった親の住所が記載されている場合が多いため現住所を確認しやすいでしょう。もっとも、生年月日までは分からないことが多いですが、通常は、住所と氏名が一致していれば、住民票の除票を取得できる場合が多くあります。
しかし、自治体によっては生年月日まで求められる場合があり、その場合は住民票の除票を取得することができません。
婚姻時の戸籍まで遡る
住民標の除票が取得できなかった場合、相続人や同居していた親の戸籍から亡くなった親との婚姻時の戸籍まで遡る必要があります。
亡くなった親(被相続人)の除籍謄本は相続放棄をするために必須な書類のため、親の本籍地が分からないうちは相続放棄の申述ができず、死亡を知ってから3か月の相続放棄の申述の期間に注意する必要があります。
婚姻時の戸籍まで遡る際は期間に注意
生年月日まで求められ、住民票除票が取得できなかった場合婚姻時の戸籍まで遡る必要があります。その場合、次のような注意点があります。
同居親が結婚、離婚を繰り返していると時間がかかる
父母が幼少期に離婚して別れた親が亡くなった場合、本籍地が分からず、戸籍の取得に時間がかかります。その時間がさらに伸びてしまう要因となるのが、離婚後に同居していた親が複数回にわたり結婚、離婚を繰り返していた場合です。
離婚後に別れた方の親の本籍地を知るのは、もう一人の残った親の戸籍から亡くなった親との離婚前の戸籍をたどるのが一番早い方法です。
ところが、亡くなった親との離婚後に同居親がその後も結婚、離婚を繰り返していると、その度に、新しい戸籍を作ったり新しい配偶者の戸籍に転籍したりするので、取り寄せる戸籍の数が多くなります。
郵送での戸籍請求にも時間がかかる
結婚、離婚をするたびに異なる自治体の本籍地へ転籍していれば、それぞれの市役所へ個々に戸籍の請求をする必要があります。
これに、土曜日の普通郵便の配達をやめた最近の郵便事情も踏まえると、戸籍の請求書や手数料の郵便為替の郵送のやり取りだけで、1か月以上かかってしまうことも珍しくありません。
普通郵便だけのやり取りであれば、請求書の発送と戸籍の返送の1往復で1週間から10日かかることがあり、1通の取得でそれだけかかるなら、5通、6通と必要になると2か月近くかかってしまいます。
両親が離婚している場合は早めの準備、ご依頼を
このように両親が離婚後、さらに同居親が結婚、離婚を繰り返している場合には、亡くなった親(被相続人)の戸籍にたどりつくまでに時間がかかります。相続放棄の3か月の申述期間を目いっぱい使う必要も想定しなければなりません。そのため、相続放棄をするかどうか迷っている時間はあまりないでしょう。
また、これだけ戸籍の取り寄せが必要なケースであれば、弁護士へ依頼するのがより早く進められる可能性が高くなります。
迷っている時間はもったいないため、プラスの遺産がないと判断したら、いち早く相続放棄の準備をし、自分で行うのが難しいと思ったら、迷わず弁護士へ依頼しましょう。