コラム

相続譲渡の手続きに決まった形式はない!やり方と注意点を解説

2022.11.11

相続譲渡の手続きに決まった形式はない!やり方と注意点を解説

相続譲渡の手続きに決まった形式はない!やり方と注意点を解説

被相続人が死亡すると直ちに相続が開始され、相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。他方で「相続譲渡」という手続きがあります。

遺産分割協議の前に相続譲渡を行うことで、自分の相続分を譲渡できます。しかしながら、相続譲渡の具体的な方法について知っている人は少ないでしょう。

そこで今回は相続譲渡について、手続きの仕方や注意すべき点を交えて、詳しく解説していきます。

相続譲渡とは

相続譲渡とは

相続分の譲渡とは何か

「相続譲渡」とは、相続財産における自分の持分の全部ないし一部を、他人に有償・無償で譲渡することです。他の相続人に譲渡することも、全く関係ない第三者に譲渡することも可能です。

相続分を譲渡すると、相続人という法的地位が移ります。その結果譲渡人(譲渡した側)は遺産分割協議などの手続きから解放されます。他方で譲受人(譲渡された側は)遺産分割協議への参加が可能です。

似たような法律手続きに「相続放棄」があります。相続放棄は相続譲渡と同様、放棄者は相続人という法的地位を失います。しかしながら相続譲渡が自らの相続分の譲受人を自由に選べるのに対し、相続放棄は相続分を放棄するだけで他の相続人の相続分を増やす事はできません。

また、父親が被相続人で死亡し、唯一の相続人である子供が相続放棄をした場合、仮に生存していたら父親の両親(相続人からみて祖父母にあたる)が相続人になります。このように意図しない親族が相続人になる可能性があるので注意が必要です。

また相続放棄をすると債務の支払義務がなくなる点も相続譲渡と異なります。加えて相続譲渡が遺産分割協議の前ならいつでもできるのに対して、相続放棄は相続開始日から3か月以内に家庭裁判所にて相続放棄の申述をする必要があります。

相続譲渡を選択した方がいいケース

遺産分割に参加したくないと考えている人は、相続譲渡を検討してみてください。遺産分割協議は原則相続人全員が参加し、全員の合意が必要です。相続財産の話し合いですから場合によっては揉めたりもします。

相続譲渡をすれば、最初からそのような協議に参加せずに済むのがメリットです。また相続人が多数いる場合には、人数を減らして協議をスムーズに進行させるために相続譲渡を選択する人もいます。

相続譲渡は相続人を自由に選べるので、例えば被相続人の面倒を見た相続人に自分の持分を譲渡するという使い方もあります。

さらにすぐに金銭が欲しい人にも相続譲渡はおすすめです。遺産分割協議が終了しなければ、相続財産は自由に使えません。しかしながら有償で相続分を譲渡することで、その対価を自由に使えることができます。

相続譲渡の手続きについて

相続譲渡の手続きについて

相続譲渡に決まった形式はない

相続譲渡は遺産分割協議の前であれば、相続譲渡は口頭で成立すると解されています。すなわち譲渡人の申込みと譲渡人の承諾があれば成立します。

しかしながら他の相続人との揉め事回避や、訴訟に持ち込まれた際の証拠として、「相続分譲渡証書」などの書面を作成することを推奨します。

相続分譲渡証書に記載すべき事柄

まず譲渡人・譲受人の氏名・住所・捺印を記載して下さい。被相続人の氏名・生年月日・死亡日の記載も必要です。次にどれくらいの相続分(全部・一部)を、どのような条件で(有償・無償)譲渡するのかを記載して下さい。

「譲渡人の相続分全部を無償で譲渡し、譲渡人はこれを譲り受けた」が文章の一例となります。また債務の取り扱いについても、あらかじめ記載することでトラブルが回避できます。

相続譲渡の手続きにおける注意点

相続譲渡の手続きにおける注意点

譲渡後も債務は残る

相続財産は預貯金や株などのプラスの財産もあれば、債務などのマイナスの財産もあります。したがって相続譲渡もプラスの財産だけでなく、債務も譲渡が可能です。

しかしながら債権者にとって、勝手に債務が譲渡されると取引の自由を害されます。よって相続譲渡されても、債権者は譲渡人に債務の支払い請求ができると解されています。

こうした事態を防ぐために、債権者への告知や、譲受人と債務についてあらかじめ取り決めておくことが肝心です。

相続分の取り戻しが発生する可能性

相続譲渡は第三者に譲渡することもできますが、「取り戻し」に注意が必要です。

民法第905条には「相続分を第三者に譲渡したとき、他の相続人はその費用を償還することでその相続分を譲り受けることができる」という規定があります。これを取り戻しと言います。

法の趣旨として、第三者が遺産分割協議に加わることで生じる紛争や摩擦の予防のためです。なお、取り戻しは譲渡があってから1か月以内に行使する必要があります。

遺言がある場合はスムーズにいかないことも

遺言で相続分が指定されている場合には、その指定されている持分に限り譲渡が可能です。また遺言で遺産分割方法が指定されている場合には、相続譲渡はできません。

税金がかかる

通常相続には相続税が発生します。相続譲渡した場合でも条件によっては相続税を払う必要があります。

まず有償で他の相続人に相続譲渡した場合です。譲渡時に対価として受け取った金銭に対して相続税が課税されます。

次に第三者に譲渡した場合です。こちらは無償・有償問わず、譲渡人が相続税の負担をします。加えて有償で第三者に譲渡した場合は、譲渡対価について譲渡所得税を負担するケースもあります。

困ったら専門家に相談しましょう!

以上のように相続譲渡を上手く活用することで、遺産分割協議から離脱したり、スムーズに遺産分割が行なえます。

相続譲渡の手続き自体は簡単ではあるものの、相続の問題は法律用語が多く、法律に慣れていないと負担に感じることもあるでしょう。

分からないことがあれば一人で悩まずに、弁護士などの専門家に相談して問題解決にあたりましょう。

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