コラム

遺言執行者の重要性とは?指定しておくべき理由

2022.10.21

遺言執行者の重要性とは?指定しておくべき理由

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。
遺言書の重要性は昨今様々な場所で言われていますが、それは遺産分割の際に遺言書があれば、それを基準に遺産の分配が決められるからです。

しかし、遺言書を作るだけでは分配は実現されません。様々な手続きが必要であり、各相続人が細かく動く必要もあります。そこで、重要なのが遺言執行者の指定です。本記事では遺言執行者を指定する重要性と、注意点について紹介いたします。

遺言執行者の指定が必要な場合とは

遺言執行者の指定が必要な場合とは

例えば、遺言書の内容が子ども2人に平等に分配するという単純な内容であれば、自分の子の年齢は通常、遺言者が死亡する段階でも50歳代から70歳代であることが多く、相続人が各自、自分で銀行預金などの払い戻しができると思います。

このような場合、遺言執行者の指定は必須とまではいえません。

高齢や遠方居住のため手続きが困難な場合

子どもがいない遺言者が兄弟姉妹や甥や姪に遺産を分配する場合、特に高齢となっている兄弟姉妹は自分で銀行の払い戻しや不動産の名義変更などの手続きができない恐れがあります。

また、親子と異なり、兄弟姉妹やその甥姪は、遺言者の住所から遠方に居住していることがあります。

遺言者の預金の多くが地方銀行や信用金庫などに預けられている場合、遠方にあるその銀行窓口まで行かないと払い戻しができないことが大半です(大手銀行は全国に支店があり、相続人の自宅の最寄りの支店で払い戻しの手続ができることが多いです)。

手続きを複数の場所で行うのが困難な場合

また、相続に伴う払い戻しや名義変更には、遺言書だけでなく身分関係を証明するための戸籍謄本を一式で揃える必要があります。これらの戸籍を一か所だけでなく、いくつかの市役所で収集しなければならないことがあります。

このように、遺言書の内容を実現するためには多くの手続きが必要であり、特に預金の払い戻しは実際に窓口に行く必要があったり、書類を揃える手間が決して楽ではありません。そこでこのような手続きに慣れている専門職を遺言執行者に指定することが望ましいでしょう。

遺言執行者の指定が必要な場合とは

遺言執行者の指定が必要な場合とは

では、どのような人が遺言執行者になるべきでしょうか?

不動産が多い場合は司法書士へ

まず、遺産のメインが不動産で相続人同士が険悪でなければ、司法書士がよいと思います。不動産が多い場合には、所有権移転登記の申請の専門職である司法書士を遺言執行者に選任することが考えられます。登記手続きに慣れているためです。

しかし、揉め事に発展した場合は結局弁護士に依頼する必要があります。

相続人が多い、相続人が不仲な場合は弁護士へ

相続人同士の仲が悪い場合、弁護士が遺言執行者になれば、遺産分割に対する窓口のような役割を果たし、遺言内容に不服がある相続人に対しても説得力をもって遺言内容の執行に服するよう説明することができます。

相続人の人数が多く面識がない人同士が多ければ、弁護士を遺言執行者にしてまとめ役にするのもよいでしょう。また、遺産問題は人数が多いと時間もかかりますし、最初は不仲でなくとも進めていくうちに揉め事に発展する可能性が高いからです。

余命が長い場合は信託銀行へ

専門職の場合は、寿命に関係なく、廃業や事務所移転等で事実上、遺言執行ができなくなる恐れがあります。それが心配であれば、信託銀行に遺言執行者をお願いすることができます。

法人なので事業の継続性があり遺言書作成から数十年先であっても、遺言執行が可能となります。もっとも、弁護士や司法書士などの個人の専門家よりも信託銀行の方が遺言書作成補助から遺言執行までの報酬は高い傾向があります。

専門職に依頼する場合は年齢にも気をつけましょう

専門職に依頼する場合は年齢にも気をつけましょう

司法書士や弁護士はあくまで個人であり人間です。当然、遺言者より高齢であれば、遺言者より先に死亡して、遺言執行者指定が無効となってしまう懸念があります。

なので、これらの専門職を遺言執行者に指定する場合には、遺言者により最低でも10歳以上は若い人を選ぶべきであり、できれば、20歳年前後若い方がより確実でしょう。

また遺言者が癌などである程度、先の余命が予測できる場合には、あえて信託銀行に依頼することなく、弁護士や司法書士へ依頼するのがよいでしょう。

遺言執行者の指定は相続人の負担を減らす

このように、遺言執行者を指定すれば、預金払い戻しのために銀行窓口へ行ったり、所有権移転登記のための手続きを司法書士なら自ら実践し、弁護士なら相続人に代わって知り合いの司法書士へ依頼することができます。

これで、相続人の負担なく、遺産の内容を実現できます。残された相続人が何をすればよいか分からず遺産が放置される状態を避けるためにも、遺言執行者の指定は重要です。

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