コラム
相続人の範囲が分からない場合の遺産分割協議
2023.12.25
相続人の範囲が分からない場合の遺産分割協議
船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。
相続の多くは両親のどちらが亡くなり、片方の親と子どもで遺産分割協議をするか、独身で子がいない被相続人が死亡した場合で兄弟姉妹同士で遺産分割協議をする場合、両親ともに亡くなり子ども同士で遺産分割協議をする場合です。
これらに該当しない場合、相続人の範囲が分かりづらいことがあります。子がいない夫婦のどちらか一方がなくなり、残された配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹の関係が乏しいと相続人の範囲が把握できないことが珍しくありません。
また、被相続人の前妻の子とその後に後妻も亡くなり後妻と、前夫との間の子が相続人同士となって、お互い素性が分からないといったことがあります。
こうした子なしの被相続人の相続で親も違う親族同士が相続の当事者となる場合の遺産分割協議の方法を説明します。
最初に戸籍の収集が必須
相続人の範囲が確定できない場合、まず、やることは戸籍の収集です。被相続人の両親の出生に遡ることで被相続人の全兄弟姉妹が判明します。
被相続人が概ね70歳以上で亡くなる場合、その両親の世代は戦前生まれなので、戦前の家督相続の制度のもと頻繁に戸主が替わり多くの戸籍が必要となります。
そして、全兄弟姉妹についても出生から死亡まで、戸籍をたどり、代襲相続が発生していないか、婚姻、離婚歴の有無を確認する必要があります。
そうすると、戸籍を20通ほど集める必要があることが珍しくなく、本籍地もバラバラで、郵送請求の負担も大きいです。そこで、弁護士に遺産分割協議を依頼すれば、依頼業務を根拠に弁護士が職務上の請求として関係する戸籍を全て収集できます。
必要な戸籍を収集して、全ての相続人が判明すれば、当然、ほとんどの人が知らない相続人です。なので、弁護士がそのまま遺産分割の交渉に着手することができます。
したがって、子がいない相続においては、戸籍収集から交渉代理まで弁護士が活躍する場面が多いでしょう。
各相続人の住所の特定
必要な戸籍を全て収集したとしても戸籍謄本には相続人の住所が記載されていません。住所を特定するためには、戸籍の附票を取り寄せる必要があります。
戸籍の附票は、文字どおり戸籍に付随して登録される住民票上の住所の一覧表です。ですので、各相続人の現在の戸籍謄本の附票を取り寄せることで最新の住所を特定できます。
戸籍の附票も、弁護士が遺産分割協議の交渉という職務上の必要性を根拠に取り寄せる
ことができます。つまり、弁護士へ遺産分割協議の交渉を依頼することで、何も分からない状況から、相続人の範囲、住所を特定して、交渉のスタートラインに立つことができます。
多数の相続人がいる場合の交渉の方法
多数の相続人がいるケースでの交渉は、まずは、書面で一斉にこちらの意向を伝えることしかできません。
電話などの連絡先を知らないことが多いし、相続人は全国各地に居住していることが多いので、個別に訪問することもできず、現実的に書面を一斉に発送することしかできません。
ステップを踏んで交渉に繋げることが大切
その際に最も重要なことは、いきなり、当方の意向に沿った遺産分割協議書を送りつけたり署名押印を求めたりしないことです。
これまで全く会ったことのない相続人たちに対して、いきなり、こちらが求める最後のゴールを突きつけても、上手くいくことはありません。
仮に法律上、正当といえるような内容の遺産分割協議書であっても最初から印鑑を求めることで、受け取った方が感情的になり、交渉が難航する要因となります。
時間を与えて準備をしてもらう
ですので、最初の書面はこちらの意向を抽象的に伝えて、各相続人に考える時間を与えることです。
そうすれば、受け取った方は家族、友人、弁護士など専門職と相談して自分で法定相続分に沿った遺産分割が妥当であることを理解します。
このような自主的な理解を促すことが、早期の遺産分割の成立につながります。交流のない相続人がたくさんいれば、どちらにしろ時間がかかるので、焦らないことが重要です。
複雑な相続関係の事例では、弁護士の関与の必要性が高い
子がいない相続、離婚がからみ前妻の子、後妻の前夫の子、がからんだり、数回に渡る相続で複雑かする事案では、戸籍の収集自体に難儀します。早い段階で弁護士へ依頼すれば、確実に前へ進んでいきます。
無理して自分でやろうとしても時間ばかりが過ぎていくので、早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。
船橋・習志野法律事務所では、相続問題や相続放棄に関するご相談を多く承っております。ぜひお気軽にご相談ください。