コラム

遺留分侵害額の請求方法とは?不利な遺言書が見つかった時の対処法

2022.06.03

遺留分侵害額の請求方法とは?不利な遺言書が見つかった時の対処法

遺留分侵害額の請求方法とは?不利な遺言書が見つかった時の対処法

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。

相続の相談では、遺言書が見つかり、自分以外の相続人が全ての財産を取得する旨が記載されていることがあります。これが、公正証書遺言であると、これは法的に有効となることが多く、この遺言書1枚で当該相続人は実際に遺言を全部受け取ることができます。

もっとも、その他の相続人にも民法で定められた遺留分に相当する金額を遺産を全部もらった相続人に対して請求できます。遺言の無効を主張するよりは、大分楽であるので、全財産を1人の相続人に取得させる遺言に対しては遺留分の請求をするのが有効です。

このコラムでは不利益な遺言書が見つかった時の対処法として、遺留分侵害請求について解説します。

遺留分とは

遺留分とは

遺留分は、被相続人の直系卑属(子や孫)や直系尊属(両親や祖父母)に認められた遺産に対する最低限の権利です。後者の直系尊属は、親より先に死亡するケースが少ないので、本コラムでは割愛します。

冒頭に述べたように、1人の相続人だけに全ての遺産を取得する遺言書を作成したとしても、それは原則として有効となります。被相続人には遺産をどのように振り分けるか自由に決める権利があるからです。もっとも、遺言書を作成することで特定の相続人だけが全ての遺産を取得してしまうのは相続人間の公平を害することになります。

特に、死期が遠くない高齢の被相続人は身近にいる相続人の影響を強く受けるのため、遺言書の内容が必ずしても被相続人だけの意思ではなく同居するなど身近で影響力を持つ相続人の意思が反映されることは否定できません。

そうすると、遺言書で1人の相続人だけが全ての遺産を取得することになったとしても、他の相続人にも最低限確保すべき遺産に対する権利を認めるべきです。

そこで、民法では遺留分の制度を規定して、被相続人の子や孫などの直系卑属に法定相続人に対して半分の割合の遺留分を請求する権利を認めました。

遺留分を請求できる範囲

遺留分を請求できる範囲

遺留分の請求をする典型的な場面は冒頭のように、遺言書で1人の相続人だけに全ての遺産を取得させる内容の公正証書遺言が出てきたときです。その他に、被相続人が亡くなる前の10年間に、特定の相続人に対して生計の資本のための贈与をした金額も対象となります。

生計の資本とは、相続人の自宅の購入資金を援助したり、自営業の相続人の事業資金を援助した場合等に援助された金銭のことをいいます。

そのため、遺言書だけでなく、特定の相続人が生前に遺産から利益を受けた場合にも、過去10年に遡って遺留分の請求ができる余地があります。ただ、生計の資本に該当する金銭援助であることを立証するのは難しく、相続開始前の財産の処分について遺留分の請求をする例は珍しいです。

遺留分を請求する方法

遺留分を請求する方法

遺留分の請求は、請求できることを知ってから1年で消滅時効にかかってしまい、1年が過ぎて何もしていないと、遺留分の権利が消滅してしまいます。

そこで、遺留分の請求をするために最初にやることは、遺産の全てまたは多くを取得した相続人に対して、遺留分相当額の請求をする内容証明郵便を送付することです。これで、請求した事実を証拠として残せ、1年の消滅時効を止めることができます。

内容証明郵便を送っても、遺留分相当額を返還してくれなければ、遺留分の調停を家庭裁判所に申立てます。調停になってもなお、遺留分の返還に応じないのなら、遺留分返還請求の訴訟を提起することができます。最終的には訴訟で遺留分の権利を実現することになります。

遺留分の実現方法

遺留分を請求する方法

民法の平成30年改正前は、金銭だけでなく、不動産や株式など現物の取り戻しの請求もできました。しかし、現物に対して遺留分の請求ができると、遺留分請求の権利行使後に、遺産に対する、共有関係など複雑な権利関係が生じてしまいます。

そのため、全て金銭で解決するのが最も簡明であることから、遺留分の請求は遺留分の割合の4分の1を基礎にして、遺留分が侵害された部分を金銭に換算して請求することになります。 

まとめ

遺留分は本来の法定相続分からすると、その半分の4分の1にとどまるので、弱い権利のような印象を受けます。

しかし、冒頭の事例紹介にように1人の相続人に全財産を取得させる公正証書遺言が作成されると、他の相続人は遺産に対する権利がないこととなってしまいます。

これを回避して、最低限の遺産を確保できるがの遺留分制度です。通常は内容証明郵便を発送すれば、何等かの提案をして、調停に至る前に解決するこは珍しくありません。

なので、自分に不利な内容の遺言書が見つかった場合、まずは、遺留分の請求を頭に入れましょう。

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