コラム

【遺言書を書く前に知ってほしい】遺言書で「できること」と「できないこと」

2022.07.22

【遺言書を書く前に知ってほしい】遺言書で「できること」と「できないこと」

【遺言書を書く前に知ってほしい】遺言書で「できること」と「できないこと」

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。

遺言書というと、遺産の分配方法を決めることが典型で相続人の遺産に対する権利を設定するのが典型的です。

もっとも、内容によっては、相続人に財産(権利)を与えるだけでなく、義務を課すこともできます。財産を与えるだけでなく義務を課すことで、遺言者の意向を実現しやすくなります。ただ、遺言書で定めても効力を有しない場合もあります。

このコラムでは、遺言書でできること、及び、できないことについて解説します。 

遺言書でできること

遺言書でできること

祭祀財産(墓地、墓石、遺骨、仏壇など)の管理者の指定

まず、祭祀財産とは、墓地、墓石、遺骨、仏壇に代表されるように被相続人を祭る財産のことです。これは、遺産分割の対象とは区別されて、相続人の誰かが管理をすることになります。祭祀財産をどの相続人に任せるかを、あらかじめ、遺言書で指定することができます。

よくあるパターンが、相続人の誰か一人に多くの遺産を相続させる変わりに、その相続人に祭祀財産の管理を任せるものです。祭祀財産の管理者に指定されると、一切の祭祀財産の管理義務が発生して、墓地の利用料を負担し、墓石の清掃、納骨を行い、法事も主催することになります。 

遺産分割の禁止

遺言書で、特定の遺産の分割を禁止することができます。遺産分割の禁止とは、遺産に属するある特定の財産を相続人に分配させないことを意味します。民法で、遺言者の死後から最大5年間、遺産分割を禁止できる事が規定されています。

この遺産分割の禁止が記載されることが多いのは、遺言者の自宅その他思い入れのある不動産や貴重品です。

安易に第三者の手に渡って欲しくない場合に遺産分割の禁止は一つの手となります。もっとも、後で述べるにように、遺産の売却を禁止することはできないので、いずれは、売却されて第三者の手に渡るのを防ぐことはできません。

また、まとまった預金のある銀行口座を遺産分割の禁止の対象とすることがあります。これは、遺言者生存中に既に相続人同士(主に兄弟姉妹同士)の仲が悪いことが分かっている場合に、預金の遺産分割を禁止することがあります。

兄弟姉妹の不仲に対するペナルティーとして遺言書の死後、すぐに遺産を使えないようにする意味合いがあったり、あるいは、相続開始後に相続人同士で紛争が顕在化されることに対して冷却期間を設けるという意味合いがあったりします。

負担付き遺贈

負担付き遺贈とは、遺産を特定の相続人(必ずしも相続人に限定されない)に取得させる条件として、遺産を受け取る相続人に何等かの義務を負わせることをいいます。遺産を取得させる交換条件として受け取る相続人に何かをやってもらうことになります。

比較的よくあるのが、配偶者を残して遺言者が先に死亡する場合を想定し、ただ、配偶者も高齢ゆえに、子に自宅の不動産を取得させその条件として配偶者の世話を義務付ける負担付き遺贈です。

この場合、「世話をする」だけだと抽象的なので、

  1. 配偶者と同居する
  2. 配偶者の必要な生活費を負担する

と具体的に記載する必要があります。

その他、遺言者の事業用資産を後継者となる相続人に取得させたうえ、後継の相続人に事業の継続を義務付ける負担付き遺贈もあります。

そして、遺産を取得した相続人が条件となる義務を履行しない場合、他の相続人が家庭裁判所に申し立てて遺贈を取り消すことができます。遺贈が取り消されると、対象となった遺産は相続財産に戻されます。なので、共同相続人間の遺産分割協議でその帰属が決定することになります。

遺言書でできないこと

遺言書でできないこと

遺産の所有権の成約

遺言書で、相続により取得した所有権を制約することはできません。

遺言の相談でよくあるのが、自宅の不動産などの売却禁止を遺言書に書きたいというものです。しかし、遺産が自分の物といっても、いざ、亡くなってしまい、相続人に所有権が移転してしまえば、これを使い続けるか売却処分するかはその所有者となった相続人の自由です。

葬儀実施の可否や葬儀方法の指定

遺言者自身が亡くなった際の葬儀実施の可否や葬儀の方法について遺言書で記載しても、これには法的拘束力はありません。葬儀をどうするかは、残された相続人が決めることであって、遺産の分配とは無関係だからです。

二次相続の遺産分配の指定

遺産を特定の相続人に取得させた後、その相続人が亡くなった後に更に別の人を取得者に指定することはできません。

よくある相談事例だと、自宅の不動産を最初は遺言者の配偶者に取得させ、その後配偶者が死亡したら長男に取得させたい、というものです。

長男の取得は二次相続人になり本来は配偶者が分配方法を決めるので、遺言書であらかじめ二度目の相続(二次相続)における遺産の分配方法までも指定することはできません。

【まとめ】遺言書を書く前にできること・できないことを確認しておこう

遺言書の活用で、お墓や祭祀行事を管理運営する人を指定したり、残された配偶者の世話を子どもに求めたり、遺言書の残された相続人に託すことができます。もっとも、長く相続人を拘束するような遺言書は法的効力が認められません。

また、法律上、有効な遺言であっても、相続人全員が合意すると、遺言書は差し置いて相続人全員の合意が優先されることになります。

そうすると、遺言書は相続人全員での自主的な話し合いができないことが想定される状況下で効力を発揮するといえます。

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