コラム

【子供の死亡】損害賠償債務と相続放棄の関係

2022.07.25

【子供の死亡】損害賠償債務と相続放棄の関係

【子供の死亡】損害賠償債務と相続放棄の関係

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。

このコラムでは損害賠償債務と相続放棄の関係を解説します。自分の子が赤信号を見過ごして交差点に侵入して衝突事故を引き起こして死亡してしまった場合、その子は衝突された被害者に対して損害賠償債務を負います。

任意保険が使えればよいですが、そもそも加入していないとか、運転者が異なり適用されないなどの事態で、賠償義務が残る場合に相続放棄によって親やその他の親族は損害賠償義務を免れるのでしょうか?

この問題は、

  • 子が未成年であるかどうか
  • 自動車の所有者が子本人であるか否か

などで結論が左右されます。一つずつ説明していきます。

未成年の子が交通事故を引き起こした場合

未成年の子が交通事故を引き起こした場合

相続放棄をすれば損害賠償義務は回避できる

未成年の子が交通事故を引き起こす場合、原付の免許が取れる16歳以上であることが通常です。16歳ともなれば自身での判断能力が認められるため、交通事故で被害者に損害を与えれば、その未成年者自身が損害賠償義務を負います。

そうすると、交通事故でその未成年者が死亡すると両親が賠償義務を相続することになります。なので、相続放棄をすれば未成年者自身の損害賠償義務は回避できます。

両親の場合、監督責任による損害賠償義務が残ることがある

もっとも、両親には未成年者の不法行為について監督責任を負う場合があります。そうすると、相続放棄をして未成年者自身の損害賠償義務を免れても、両親自身の監督責任による損害賠償義務が残ってしまうことがあり得ます。

特に未成年の子と同居しており、親が自ら原付を買い与えていた場合には、監督責任を負う可能性が高いです。

また、四輪の普通乗用車を未成年の子が無免許運転をして事故を起こした場合も監督責任を負う可能性があります。両親としては、自分の子が無免許運転をしていたのを知らなかったとしても、同居している以上は気づくべきだった、あるいは、無免許運転をしていた事実自体から親による日常的な教育、指導の不足と評価されやすいからです。

これに対して、高校の寮などで親元を離れて暮らしていた未成年者が交通事故を起こした場合には、両親はその子を日常的に指導・教育する機会がなかったので監督責任が認められにくいでしょう。

親が所有する車(原付含む)で子が交通事故を惹き起こした場合

親が所有する車(原付含む)で子が交通事故を惹き起こした場合

子が未成年者の場合は、さきほどの解説のとおり、同居していた場合には親の監督責任を問われやすいです。では、子が成人している場合はどうでしょうか?

子が成人している場合でも、親は自動車の所有者として損害賠償責任を負うことがあります。

自動車所有者が責任を負うケース

親は自動車の所有者として損害賠償責任を負うことを運行供用者の責任といいます。

被害者保護の観点から、人身事故に伴う損害については、運転者だけでなく自動車所有者も責任を負うことがあります。所有者である親に頼まれて、子が買い物や送迎などの運転中に交通事故を起こした場合がその典型です。

その際に子が死亡して両親が相続放棄をした場合、自動車の所有者でない方の親は損害賠償責任を回避できますが、所有者となっている親の方は運行供用者の責任を負うことになります。

また、子が所有者である親のためでなく、自身の通勤などのために運転し交通事故を起こした場合でも、所有者である親がそのことを承諾していれば、運行供用者の責任を負う可能性があります。そもそも、親は自動車の所有者でありながら普段から運転するのが子である場合は子が運転者でも適用される保険に加入すべきでしょう。

自動車所有者が責任を負わないケース

子と親が別居しており、親名義の自動車を子に使わせていたものの、自賠責保険や車検などの維持費は全て子が負担している場合には、親は運行供用者の責任を負わない可能性が高いでしょう。

子の相続放棄時の注意点

子の相続放棄時の注意点

子の相続放棄は次順位の相続人がいることが多いので親族関係に注意

子の相続人に親がなる場合とは、亡くなった子に子どもがいないことが前提です。そうすると、親は相続放棄により子の損害賠償義務を免れたとしても、その子の祖父母が次の相続人になります。

そのため、親の相続放棄後に祖父母も相続放棄をする必要があります。

当然、父方の祖父母、母方の祖父母、それぞれが次順位の相続人となるので、損害賠償債務を回避するためには全員の相続放棄が必要です。さらに子に兄弟姉妹がいれば、祖父母の相続放棄後にその兄弟姉妹による相続放棄が必要になります。

このように、子に先立たれた場合の相続放棄は、次々に次順位の相続人が発生するので、両親だけ相続放棄をして、一安心ではありません。親族関係には十分に注意しましょう。

相続放棄の起算点にも注意が必要

子どもが交通事故を起こして死亡した場合、その精神的ショックが大きいうえに、現役の学生、労働者世代の死亡ゆえに関係各所への連絡等も多岐にわたり、事後処理に忙殺されやすいといえます。

ですから交通事故直後は、被害者から損害賠償を請求されることが頭に入らなくても不思議ではありません。

そうこうしているうちに相続放棄の受付の期間となる3カ月はあっという間に過ぎてしまいます。もちろん、実際に被害者から損害賠償の請求を受けた時点から起算して3カ月以内という解釈を取れる余地はあります。

しかし、子どもが交通事故で死亡している以上、死亡時点で交通事故の被害者の存在を知っていた、つまり、子が損害賠償債務を負うことを子の死亡時点から認識していたと裁判所に判断されることも十分にあり得るのです。

亡くなって最初の1カ月ほどはさすがに被害者からの賠償請求について考える余裕はないと思います。

ただ、1カ月か2カ月経過すれば、少しは落ち着いて交通事故の対応に着手できるでしょうから、子が任意保険に入っていないのであれば、相続放棄は最優先の選択肢として頭に入れておくべきでしょう。

【まとめ】損害賠償債務の相続放棄は自身の法的責任にも留意する

本コラムでは、相続放棄しても①未成年の子の監督責任、②自動車所有者の運行供用者の責任を根拠に、親自身の法的責任を回避できない場合を解説しました。

損害賠償債務を回避するための相続放棄は、相続人自身の責任にも留意する必要があります。

相続人自身が損害賠償責任を負うなら、相続財産が損害賠償の原資となるので、相続放棄はかえって不利益となってしまいます(被相続人自身の責任と、相続人の監督責任が重複しても賠償額は同じであるため)。損害賠償債務の相続放棄は、3カ月の期間内に十分に熟慮する必要があります。

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