コラム
空き家を相続放棄しても管理責任は免れない|罰則や対処法を解説
2022.01.21
空き家を相続放棄しても管理責任は免れない|罰則や対処法を解説
親が亡くなったにもかかわらず、実家を空き家のまま放置して問題になるケースが増えています。
建物はきちんとメンテナンスを行わないと、あっという間に廃墟となってしまうのですが、中にはそうなったら相続放棄をすればよいと軽い気持ちでいる人も少なくないようです。しかしながら、相続放棄を行ったとしても必ずしも全ての責任から解放されるわけではありません。
本記事では相続放棄後の空き家の管理責任について説明していきます。
目次
相続放棄をしても空き家の管理責任が残ることがある
まずはじめに相続放棄の意味を説明したうえで、それを行った場合の空き家の管理責任について説明していきます。
相続放棄とは
相続放棄というのは、亡くなった親や兄弟が残した全ての財産を相続する権利を放棄することを言います。
これは、民法に定められている法的な手続きであり、正式に相続権を放棄するためには、
- 相続人になったという事実を知ってから3カ月以内に手続きを済ます
- 家庭裁判所に相続放棄申述書と戸籍謄本や住民票といった必要書類を提出
- 相続放棄申述受理通知を受領する
をおこなう必要があります。
単に相続放棄の意思を表明するだけでは法的には有効とされないので、まずは決められた手続きが必要であるという点を頭に入れておくようにしましょう。
なお、権利を放棄すると、その後は相続手続きに一切関与できなくなります。後になってやはり相続した方がよかったと思い直しても手遅れですので、手続きするかどうかは慎重に判断するようにしましょう。
相続放棄をした場合の空き家の管理責任
相続放棄をしたとしても、すぐに空き家の管理責任から解放されるわけではないという点に注意しなければなりません。
民法第940条には、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」という規定が設けられており、例え相続を放棄しても、相続人が空き家の管理を開始するまでは管理責任から免れないとされているからです。
そのため、他の相続人がきちんと管理し始めたことを確認するまでは、自分で管理を行うか、それが難しい場合には、専門の業者に管理を依頼するといった対応をしなければなりません。
空き家の管理義務を放棄した時の罰則
前述の通り、空き家を相続放棄しても一定期間は管理義務を負い続けるわけですが、その義務を果たさなかった場合にはどのようなことが起きるのでしょうか。
管理義務はあくまでも民法上の義務なので、違反しても刑事罰を受けるわけではありませんが、だからと言って油断しているとひどい目に遭うケースがあります。
民事上の損害賠償責任
管理義務を怠った場合にまず考えられるのが、他人に対して民事上の損害賠償責任を負うというケースです。
例えば、空き家が朽ち果てて倒壊し、家の前を通りかかった人が怪我をしたような場合には、管理義務を負う者としてその人が被った損害を賠償しなければなりません。
万が一、命に関わるような大きな事故になってしまうと、数千万円もの賠償金を請求される可能性もゼロではありませんので、そういったリスクを軽減するためにも、管理義務から明確に免責されるまではしっかりと管理を継続した方がよいでしょう。
近隣被害の賠償
空き家を放置していると、ブロック塀が倒壊して隣家に迷惑をかけるといったケースが起こり得ます。
近隣に被害を及ぼしたような場合には、例え相続放棄をしていたとしても、他の相続人が管理を始めるまでは責任を問われる恐れがあります。比較的新しい家であればすぐに近隣に迷惑をかけるといった事態は起きにくいのは確かですが、築数十年を超えるような家の場合にはダメージが蓄積している可能性がありますので、相続放棄をしたからといってそのまま放置すべきではありません。
空き家の管理責任を放棄したい場合
空き家の管理責任を放棄したい場合には、相続財産管理人を選任する必要があります。相続財産管理人というのは、相続財産を適切に管理するとともに、換価して債権者などに必要な弁済を行ったうえで、最終的にその所有権を国に帰属させる役割を担う人です。
相続人が存在する場合は、その人が相続財産管理人を選任すればよいのですが、もしも相続権者全員が権利を放棄してしまったような場合には、法人化したうえで相続財産管理人を選ぶようにしなければなりません。
なお、相続放棄をすればすぐに相続財産管理人を選任できるわけではありません。選任が可能になるのは、最後に相続放棄をした人が、空き家の倒壊リスクが高いといった理由で自治体から管理を求められるといった事由がある場合に限られているため、そういった事由が発生するまでの間は自らの責任で管理を継続する必要があるのです。
また、選任を行うためには、家庭裁判所で所定の手続きを行わなければならないため、個人が勝手に管理人を選べるわけではないという点にも注意が必要です。
【まとめ】相続放棄と管理義務の関係を理解しておこう
以上で見てきたように、相続放棄を行ったとしても、空き家の管理義務をすぐに免れるわけではないという点をしっかりと理解しておく必要があります。
義務を負っているにもかかわらず、管理を怠っていると、多額の賠償請求を受けることになりかねません。そのような事態に陥らないようにするためにも、相続財産管理人が選任されるまでの間は、自らの責任において管理を継続するようにしましょう。
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