コラム

相続放棄した土地はどうなる?考えておきたい可能性と相続放棄後の責任

2021.03.08

相続放棄した土地はどうなる?考えておきたい可能性と相続放棄後の責任

相続放棄した土地はどうなる?考えておきたい可能性と相続放棄後の責任

こんにちは。船橋・習志野台法律事務所、弁護士の中村亮です。

親の所有する不動産を相続したくない人も中にはいますよね。遺産となる不動産の相続放棄でよくあるのは、田舎にある広い土地で管理が大変であるが、かといって、容易に売却ができない場合です。また、自宅の建物が築50年以上と古く住むのは難しそうなためかえって解体費用が掛かってしまう場合などです。こうした場合、相続放棄をすれば、遺産である不動産の所有権を取得しないですみます。

そのため、所有者としての責任を負わなくなる点はありますが、すべての責任から一切解放されるとも限りません相続放棄後の不動産がどうなるか、これから詳しく説明します。

不動産を相続放棄するとどうなるか

不動産を相続放棄するとどうなるか

まず考えられることは他の親族が相続する可能性や所有者不在となる可能性です。

例えば、親からの相続を放棄すると、相続の権利が次の順位の相続人となる兄弟姉妹(最初に相続放棄をした子から見ると叔父叔母)に相続の権利が移ります。兄弟姉妹が既に亡くなっている場合にはその子(いとこ)らに権利が移ります。そのため、これらの親族が知らないうちに土地の所有者となってしまい、固定資産税の支払いやその他の管理責任を負う可能性が出てきます。そのため、各親族に対しても相続放棄をするようきちんと連絡をしておく必要があります。

また、叔父叔母が既に亡くなり、いとこの世代に相続権が移ると、相続人になる人が10人前後の多人数になる可能性も出てきます。そうすると、疎遠な親族に対して遺産の土地の相続放棄の件を知らせることができず、相続放棄をしないままの相続人が残ってしまう懸念もあります。親の兄弟姉妹が多い場合には、親族関係に十分確認しましょう。

そして、相続可能性のある親族が全員、相続を放棄すれば、遺産の不動産は所有者不在となります。ただ、それで自動的に国が所有者となるわけでなく、あくまで所有者不在の状態が維持されます。

仮に隣地の土地所有者などが相続放棄がされた不動産と一体的に利用するなど、一定の利害関係があれば、家庭裁判所に対して相続財産管理人選任を申立て、選任された相続財産管理人から土地を買い受けるという方法もあります。また、平成31年に所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法ができ、福祉事業など公益のために所有者がいなくなった土地の使用権を設定できる制度ができました。さらに、所有者のいなくなった土地が荒れて管理が必要になったり所有者がいなくなった建物が崩壊しそうな場合などに、市町村長や知事が相続財産管理人の選任を申し立てられるようになりました。

相続放棄した後の責任の行方

相続放棄した後の責任の行方

冒頭でお伝えした通り、相続放棄したからといってすべての責任から一切解放されるとも限りません。場合によっては免れられない責任もありので十分注意しましょう。

固定資産税等の支払い責任は免れます

不要な不動産の相続を放棄することで免れる責任としてまず、あげられるのは固定資産税の支払い義務です。また、親が固定資産税を滞納していてもその支払い義務を免れます。また、放棄した遺産が区分所有マンションのであれば、その管理費や修繕積立金の支払い義務を免れます。

さらに、所有者固有の不法行為の責任である土地の工作物の責任も免れることになります。これは、建物の屋根瓦が落下したり塀が崩れたりして人が怪我をすると、所有者は自身に過失がなくても賠償責任を負うというものです。相続放棄をして所有者でなくなれば、こうした責任も負わなくなります。

免れない可能性のある責任

逆に相続放棄をしても免れない責任があります。例えば、親名義の建物の相続放棄をして誰も所有者がいなくなったが、その建物を定期的に訪問して、時々利用していると占有者とみなされ、占有者としての管理責任を負うことになります。そのため、さきほどの建物の破損等で人が怪我をした場合に、破損を予見して修理すべきだったのにそれを怠っていた場合は過失を根拠とする賠償責任を負う可能性があります。特に火災による損害には注意が必要です。

【まとめ】不動産の相続放棄で全てが解決するとは限らないこと

このように、不動産の相続を放棄すれば、固定資産税やマンションの管理費・積立金といった所有者であることで金銭負担を求められる責任からは解放されます。しかし、相続放棄をした不動産を管理しているといえる場合には、管理責任を問われる可能性があります。

そして、不動産に住んでいたり利用したりしていなくても、「建物の鍵を持っている」「土地の親名義の権利証を持っている」といった間接的な関わりでも「管理している」=「占有者」とみなされて、管理責任を負ってしまう可能性があります。

なので、相続放棄ですべての責任から解放されると安易に考えることなく、相続放棄が適切かどうか、これまでの当該不動産との関わりや他の親族との関係などを考慮して、慎重な判断が必要です。

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