コラム

住んでいる親名義の実家は遺産相続の時どうなる?問題点を弁護士が解説

2021.03.09

住んでいる親名義の実家は遺産相続の時どうなる?問題点を弁護士が解説

住んでいる家は遺産相続の時どうなる?考えられる問題点を弁護士が解説

こんにちは。船橋・習志野台法律事務所、弁護士の中村亮です。

親が高齢になってくると通院や介護などのサポートが必要となってくる場合がありますよね。そのため、親名義の実家に親子で住んでいるという人や、これから一緒に住もうと考えている人もいるのではないでしょうか?

しかし、親が亡くなった後もその家に住み続けられるかは注意が必要です。兄弟姉妹がいる場合、遺産相続時は注意が必要です。

今回は親名義の持ち家は遺産相続の際どのように扱われるか、遺産相続協議で考えられる問題点について例を交えて解説いたします。

親名義の実家を相続する場合の問題点

親名義の自宅の相続の問題点

例えば父名義の実家に親子二人で住んでいた場合、名義人である父が亡くなり相続が発生するとどのような問題が生じるでしょうか?

母の死後、父だけでの一人暮らしが困難となって同居した場合

母が先に亡くなり、父だけでの一人暮らしが困難となり兄弟姉妹のうちの一人が転居し、父と二人暮らしをしていた例を元に見ていきましょう。

生前より同居をしていた子は、このまま実家へ居住を続けていきたいし、父の世話をするために元の家を引き払っているため居住を継続するのは当然の権利と考えている場合が多いでしょう。

しかし、その他の兄弟姉妹からすると預金だけでなく残された家屋に対しても等分の権利が存在します。不動産としての価値があり、高い価格で売却できそうであれば、居住していない兄弟姉妹からすれば実家を売却した代金を分配したいと考えるでしょう。

住み続けたい子の意向と実家を離れた他の子の売却したいとの意向をすり合わせて、遺産分割の協議を成立させることは難しく、紛争に発展しやすくなります。

以下、両者の対立から生じる法律上の問題点を解説します。

親名義の実家をめぐる子の対立について

親の自宅をめぐる子の対立について

この段落では各事例別でご説明をさせていただきます。

1.親名義の実家に居住し続ける場合、家賃を支払わなければならないのか

実家に住んでいない子からすると、自分にも相続分があるのに、親が亡くなったあとの実家を使用できないことに不公平と感じることがあります。そこで、遺産分割協議が成立するまでの間の家賃相当額を実家に住んでいる子(兄弟姉妹)に請求したいとの相談を受けることがあります。

子供3人のうち、1人が父と暮らしていた場合

例えば、子3人で長女だけが父と暮らしていた場合、相続対象の家周辺の家賃相場の長女の相続分3分の1を除いた金額を2人から請求される場合が考えられます。

ただ、親が生存中は無償で住めていた実家に、親の死後、他の兄弟姉妹から突然家賃を請求されるのは酷というものです。そもそも、家賃というのは毎月ごとの賃料の金額で賃貸人と賃借人が合意することで発生するものであり、相続をきっかけにして家賃が発生するというのは不自然です。

最高裁判所の判例で、親子で同居して親が亡くなってその実家の相続が開始した場合、親の死亡から相続開始までの期間は同居していた子は無償でその家に住み続けられるという判断を示しています。そのため、この判例を根拠に実家に住んでいる子は他の兄弟姉妹からの家賃請求を拒絶できます。

2.同居していた子は単独で実家の所有権を取得できるか

次は亡くなった親と同居していた子の視点から解説いたします。

親の世話をするために元々住んでいた家を引き払って親の実家で同居するようになった以上、親が亡くなったあともこのまま住み続けたいと思う場合が多いです。そのためには、そのままこの実家の所有権を相続により単独取得したいと思うのです。

ただ、法律上の相続分は子は等分となるので、3人の子がいれば相続分は3分の1となります。子が3人いれば、同居している子の相続分は3分の1なので、残り2人が権利を放棄しなければ、単独で取得できません。

亡くなった親の預金が豊富にある場合

亡くなった親の預金が豊富にあり、例えば実家の価値が1,000万円で預金が2,000万円なら遺産全体のうち実家の価値が3分の1にとどまるので、同居していた子は預金の相続を諦めれば3分の1の相続分で実家を単独取得できます。

もっとも、預金が豊富にあればそもそも兄弟姉妹間(相続人同士)の話し合いがもめることはほとんどありません。

相続できる預金が少なく、相対的に実家の資産価値が高い場合

預金が少なく相対的に実家の資産価値が高い場合に、現金のように分割ができないからこそ、遺産をめぐる紛争になるのです。

実家の価値が1,000万円で預金が200万円しかなければ、同居していた子が預金の相続を諦めても、3分の1の相続分は400万円しかないため、実家の価値1,000万円には遠く及びません。それでも実家を単独で取得したければ、自分の財産から相続分から超過する実家の価値の部分(600万円)を代償金として他の相続人へ支払う必要があります。

しかし、親から相続する家は築年数が経ち、維持費や修繕費等の負担もかかるため、代償金を支払ってまで単独取得すべきかは慎重な判断を要します。

3.同居している子を押し切って実家を売却できるか

財産である実家は共有財産なので、親と同居していた子以外の2人の子が売却を希望するなら、過半数の2人の賛成で売却できるのでしょうか?

実際は、遺産分割の話し合いがまとまらず一人でも反対しているうちは実家の売却はできません。

その場合、実家に住んでいない2人は家賃を請求できないため、同居している子が反対する限り遺産分割の協議が不調のまま同居している子がずっと住み続けることになってしまうのでしょうか?これも、また不正確であり、同居している子も相続分は3分の1しかない以上、実家の権利を確保することはできません。

同居している子は代償金を支払わない限りは、実家を取得できません。

そのため、同居している子が実家に居座っても、残りの2人が遺産分割の調停を家庭裁判所に申し立て、裁判所が判断する段階になれば「実家を売却せよ」という命令(これを「審判」といいます)が言い渡される可能性があります。

そうすると実家は競売にかけられ、同居していた子は最終的に実家を追い出されることになります。

しかし、競売になるとその売却代金は、市場の実勢価格の8割から5割程度と大幅に下落してしまいます。よって、売却の命令の審判を得るということは、兄弟姉妹全員が損をする結果となるため最終手段と考えるべきでしょう。

【まとめ】実家の相続は建設的な話し合いが重要

親名義の実家の相続については、同居していた子と離れて暮らす子がそれぞれの立場を先鋭に主張すると紛争が長期化し、最悪の場合裁判所の審判により競売にかけられてしまいます。

住み続けるにしても売却するにしても、話し合いであれば様々な解決策があり得ます。

相続は法定相続分という法律で決まった遺産に対する取り分が決まっている以上、自分一人の利益の最大化を図ろうとしても解決にはほど遠くなります。相続自体がプラスの財産を引き継ぐものなので、「自分が得する」ことより「相続人全員が損をしない」という視点で進めることが重要です。

遺産相続で悩むことがあるならまずは弁護士に相談することをおすすめします。

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