コラム

【平成31年1月施行】改正民法化の自筆証書遺言

2024.02.27

【平成31年1月施行】改正民法化の自筆証書遺言

【平成31年1月施行】改正民法化の自筆証書遺言

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。この10年ほどで、終活という言葉が定着し、それに伴い遺言書作成についての法律相談も多くなっています。

遺言といえば、最もよく使われるのが公正証書遺言です。なんといっても法律専門家である公証人(多くが裁判官や検察官のOB)が記載内容が不明確にならないように、また、遺言内容の執行で支障がないように確認してくれるのが最大のメリットです。

加えて、公証役場で保管してくれるので、紛失の恐れがなく、確実に遺言が執行できます。もっとも、遺言書の作成を希望する人が増えるとともに決して数が多くない公証役場での公正証書遺言の作成申込件数が増えて、申し込んでから実際に作成するまで1か月以上を要することが珍しくありません。

これに対して自筆証書遺言であれば、自ら作成できるので公証役場での予約待ちの必要がありません。

従来は、全てを手書きで記載する必要があり使い勝手が悪かったのですが、5年前の民法改正で、自筆証書遺言が有効となるための条件が緩和されるなど、使いやすくなっています。本コラムでは自筆証書遺言の活用について解説します。

遺産の財産目録は活字での作成でも有効となった

遺産の財産目録は活字での作成でも有効となった

改正前の民法では、自筆証書遺言は遺言者が全て手書きで記載する必要がありました。その趣旨は、自筆の遺言は立会人や証人がいないため、遺言書本人が自らの意思で作成したことを担保するため、自筆での作成が徹底されていました。

しかし、遺言書の作成者は高齢者であることが多く健康上や体力的な問題でそもそも遺言書に残したいことを全て手書きで記載するのが難しいのです。

特に遺産が多くある場合、それを全て手書きで記載するのはとても大変で、しかも、不動産について登記事項を細かく記載する必要があるし、預金も口座番号を全て記載するので、間違いがあった時の書き直しの負担がとても大きかったのです。

そこで、改正後の民法では、遺言の対象となる遺産の一覧表(財産目録)は活字での作成でもよくなり、ワードやエクセル等を駆使して記載できるようになりました。

これにより、多岐にわたる遺産の財産目録作成を機械に頼ることができ、また、遺言者本人が作成できなくても信頼できる第三者に作成を任せることができるようになりました。

遺言書は本人の意思に基づいて作成されたことを担保するため、財産目録の各ページごとに遺言者の署名・押印を必要としています。

自筆証書遺言の保管制度

自筆証書遺言の保管制度

民法改正前の自筆証書遺言には公的な保管制度がなく、紛失や偽造の恐れがありました。そのため、公証役場で保管ができ全国各地の公証役場のネットワークでの遺言検索システムが使える公正証書に比べて、自筆証書遺言の利用頻度はとても少ないものでした。

改正メリット①自筆証書遺言の保管を申請できる

そこで、改正民法では、法務局に対して自筆証書遺言の保管を申請できることになりました。保管が可能な管轄法務局は、遺言者の住所地か本籍地、あるいは、遺言の対象となっている不動産の所在地となります。

この保管の制度では、法務局は遺言書の記載内容を画像データでも保存するため、遺言書は封をしない状態で法務局へ提出する必要があります。

画像データを保存することで、保管時の遺言書の記載内容を確定できるため、遺言者死亡後の開示の際に偽造・変造の恐れがないため、家庭裁判所での検認の手続きも不要となりました。

改正メリット②検認手続きの無駄を省ける

検認の手続きは、家庭裁判所に相続人全員が集まる機会を与えて遺言内容を確認するため、検認の申し出から実際の検認の日まで1か月以上かかることが珍しくありません。

一部の相続人が欠席しても検認手続きは実施できるとはいえ、そもそも、遺言書を発見した相続人が検認の知識がなければ、検認を経ずに開封をして他の相続人が遺言書の無効を主張することも懸念されます。

遺言書保管の制度は、単に遺言書の紛失が回避できるだけでなく、検認の手間を省き検認の懈怠による遺言書の効力への影響も回避でき、改正法のもう一つの目玉といっていいでしょう。

自筆証書遺言を作成する際の注意点

自筆証書遺言を作成する際の注意点

自筆証書遺言は、公証役場の予約待ちが必要な公正証書遺言との比較で迅速に作成できるのがメリットです。

そのため、医師から余命告知を受けている場合、相続人から妨害を受ける前に作成する必要がある場合など、迅速性が求められる場面での需要が大きいです。

そして、改正後の民法では、①財産目録をPCなどの機械で作成できる、②作成した遺言書を法務局で保管でき検認の手続きを省ける、という自筆証書遺言の難点を解消してくれています。

最も、①については各ページごとの遺言者の署名押印が必要だったり、頁の通し番号の記載が必要だったりと細かい要件も必要となっています。

書類作成の知識がある人に監修が必要

また、不動産を財産目録で特定するためには登記事項の脱落があってはいけません。なので、普段から書類の作成に関わっていない普通の人が誰のチェックも経ないで自筆証書遺言を作成すると、法律上の条件を満たさずに無効となってしまう恐れがあります。

そこで、書類作成が得意な人がそばにいて確認できたり、あるいは、弁護士へ相談すると言った方法など、第三者による確認方法が確立されていることが、自筆証書遺言の作成に必要でしょう。

法務局に提出する必要がある

次に法務局での保管制度については、自ら法務局へ行く必要があります。ただ、遺言書を作成しようと思っているときには医師から余命告知を受けるなど健康上の問題が大きいことが珍しくありません。

当然、自ら法務局へ出向くことも容易ではありません。そのため、信頼できる相続人や第三者に預けられる状況でなければ、自筆証書遺言の作成には適していないかもしれません。

まとめ

平成31年の法改正により、「自筆証書遺言」の作成のハードルが下がり、使いやすくなったことがお分かりいただけたでしょうか。

公正証書遺言の方が確実性が高いですが、作成に時間がかかるため緊急性が高い事例などでは今まで以上にこの「自筆証書遺言」を選択する可能性が広がりました。

しかし、全て自分で行うと不備があった場合に無効となってしまう可能性もあります。

そのため弁護士へ作成補助を依頼して、要件に間違いのない形で「自筆証書遺言」を作り、そのまま保管も弁護士へ依頼することをおすすめします。

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